所沢『百味』コロナ禍で閉業からの大復活劇。新オーナーの元、昔からの百味が始まる

所沢『百味』コロナ禍で閉業からの大復活劇。新オーナーの元、昔からの百味が始まる

2020年12月15日

所沢のオアシス「百味(プロペ店)」は、昭和40年の創業から55年、地域の人々だけでなく、地元球団のファンにも親しまれてきた大衆酒場です。お昼から営業、酎ハイとビールは立ち飲み価格、80席ある超大箱で一人からグループの宴会まで応えてくれる、みんなの居場所でした。

それが、2020年5月、コロナ禍による緊急事態宣言による休業から再開しないまま、なんと閉業してしまいました。地域ナンバーワンの人気の老舗だけに、誰もが再開するものと思っていたため、百味好きの人々の間には衝撃が走りました。

看板は残っているけれど、もう半年以上閉まったまま。本当にダメかもしれない…

喪失感が芽生えた頃に、驚きの大復活。7ヶ月の沈黙を破って、2020年12月9日、装いはそのままに”新”「百味」として営業を再開しました。

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昔の雰囲気そのままに復活

今回はそんな”新”「百味」をご紹介します。

クリスマスツリーが輝く所沢駅西口。駅前広場から伸びる全長300mのプロペ商店街が街の賑わいの中心軸です。日本の航空発祥の地から、「プロぺル」(推進)が由来となりました。

ドラッグストアの隙間を潜っていく

商店街の名前をつけた「百味プロペ店」。もとは埼玉で複数の居酒屋を展開していた「百味」のプロペ商店街店ということでその名前になっていました。後年はプロペ店のみの存在となりました。

店構えも独特で、大手ドラッグストアの隙間から地階へ潜っていく構造となっています。もとは路面店だったものが移転してこの形になったそうです。

いまどきのチェーン店と比べると薄暗く、そして少しやれた雰囲気。酒場に興味がない人には視界に入らないのでしょう。みんなが素通りしていく中、時折、いかにもお酒好きという雰囲気の背広姿のベテランさんが、秘密基地へと吸い込まれていきます。

これは新しくなっても同じ。変わっていないことが嬉しいのです。

降りると体温測定とアルコール消毒があり、席へと案内されます。

なんだか全体的に明るくなったような…。見上げれば、なんと蛍光灯がコンビニなどにあるような最新の高輝度LED照明に。その他、POSが導入され、お会計は自動精算機によるスタッフのタッチレスシステムが採用されています。

建物の雰囲気はそのままに、システムはこの7ヶ月で大幅アップデートされています。

みんなが集うこの雰囲気、往時の百味が戻ってきました。お客さんも百味ファンが多く、酒場慣れした人たちが静かに笑顔で飲んでいるのが印象的です。

実は、5月までの「百味プロペ店」と、12月からの「百味」は経営が変わっています。

これまでの経営者は5月で撤退。店をなくしたくないという想いのある新経営者が登場し、往時の従業員とともに、そのままに残っていた内装を活用した復活劇だったのです。救世主と戻られたお店のみなさんに感謝です。

会計システムなど効率化できることは新しく、古くからの雰囲気はそのままに。料理も内装も極力同じにしたいということから、大きなリニューアルはあえてしなかったそうです。

飲み物も食べ物も種類は非常に多い

ビールも変わらず、アサヒとキリン。樽生も2社あります。瓶はアサヒがスーパードライ、キリンがクラシックラガー一番搾りです。

昔ながらの飴色の空間には飴色の瓶ビールが似合います。トクトクと注いで乾杯。

百味はビールと酎ハイが立ち飲み価格なのです。大瓶は今どきなんと460円。酎ハイも10円ほど値上げがありましたが、一杯230円と驚き価格。

料理は黒板メニューをまずチェック。豊洲から仕入れた魚介類がずらり。刺身だけでなく、メバル煮など煮魚、焼き魚もしっかり揃います。昔からの板前さんや、旧百味時代の店長が厨房に入り、ベテランの技を光らせます。

品書き

料理の内容は刺身、天ぷら、揚げ物、寿司と、昔ながらの大衆割烹のよう。

名物はボリュームたっぷりの肉じゃが(470円)。

魚の店ですが、鶏料理も豊富。焼き鳥は1本単位で注文可能です。

大衆割烹って、お寿司を出すお店がありますよね。巻きずしは〆であってお酒の肴です。

名物の肉じゃが

新じゃがいもが入ると店の黒板の筆頭にもなる、人気の肉じゃが。たいへん大きなじゃがいもを一個まるごとよそっています。巨大なのに中までしっとりやわらかく出汁を吸っているのがプロの技。ベテランお姉さんが「味、昔とかわっていない?よっかたー」と笑顔で話してくれました。

酎ハイ(230円)。濃いめの甲類に炭酸を注いだだけのキレッキレ。

常連さんに人気のナンコツ

一人飲みのおすすめはから揚げよりも「なんこつ揚げ」(330円)。店の豊富な品書きの一部に溶け込んでいますが、業務用ではなく、店で用意した身がたっぷりついた大ぶりの一品。

古くからの従業員さんもそのままに、古き良き百味が戻ってきました。

近年、老舗で経営母体が変わることがありますが、百味は特にうまく移れた印象です。

今後、鍋料理など昔からの料理は順次戻していく予定とのこと。楽しみですね!

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名百味(新体制)※旧店名は百味プロペ店
住所埼玉県所沢市日吉町4-3
営業時間営業時間
11:00~22:30
日曜営業
定休日
無休
開業年1965年(2020年、新オーナーで再開)