「すごもり蕎麦」という料理をご存知でしょうか。日本蕎麦版の餡掛け固焼きそばとも例えられるこの料理は、池の端藪蕎麦(2016年閉店)の名物として全国的に広まりました。池の端藪蕎麦が閉店した後も、老舗で修行を積んだ方々が営む店を中心に「すごもり」が受け継がれています。本稿では、「すごもり」について、『増田屋』で提供される料理を軸にしてご紹介します。日本酒が進む「蕎麦前」なので、お酒好きの方は必見です。
すごもりそばの由来
冒頭にも書いたように、巣ごもり蕎麦は池の端の藪蕎麦の名物でした。揚げた蕎麦に五目餡や、野菜かき揚げととろみのある蕎麦つゆをかけてつくる料理で、まるで中華料理の餡掛け固焼きそばのような見た目です。鳥の巣のように見えることが「すごもり」の由来。
ザクザクと揚げ蕎麦を餡に浸して頬張れば、蕎麦屋の出汁でつくる餡のコクもあって冷酒やビールが進むこと間違いなしの逸品です。
蕎麦を食べる前にお酒を楽しむ「蕎麦前」の風習の中でも、「かつ煮」や「天ぷら盛り合わせ」と並ぶくらい華やかな料理ですが、それほど広まっていないのが残念に思えます。
住宅街の「成瀬 増田屋」で発見!
町の蕎麦屋で、とくに重厚感のある店舗を見つけると立ち寄らずにはいられない気持ちになる筆者。この日は、JR横浜線の成瀬駅近く「成瀬 増田屋」(町田市成瀬が丘)に吸い寄せられていました。
暖簾は清潔でパリッとしていますし、ショーウインドウや駐車場も手入れが行き届いています。こういうお店は、入って後悔することはまずありません。
高い天井に広く、ピカピカに磨かれた厨房機器が並ぶ調理場。整然と並ぶテーブル席と懐かしい小上がり席が壁側に配置されています。この居酒屋はご夫婦で切り盛りされており、職人気質の大将と和やかな女将さんの息のあった接客が非常に素晴らしいです。
どの席からも見える位置には、「増田屋のれん会」という看板が誇らしげに掲げられています。
蕎麦屋でよく見かける『増田屋』という名前ですが、原点は1768年(江戸時代後期)に鶴瓶蕎麦を継承した「増田屋次郎介」にまで遡る由緒ある蕎麦屋の系譜です。明治期以降暖簾分けが行われ、全国に約200店舗の暖簾会を結成しています。
「増田屋」は町のお蕎麦屋さんの代表格とも言える屋号です。昨今減少が止まらない町のお蕎麦屋さんを応援するべく、ぜひ訪ね歩いてほしいと思います。
品書き
- ビール:650円
- 瓶ビール キリンラガー中瓶:650円
- 日本酒 菊正宗:650円
- 浦霞:700円
- すごもり:950円
- 天皿:950円
- そばがき:1,450円
- 鴨焼き:850円
- 柳川風牛皿:800円
しみじみ美味しい、すごもりと日本酒
菊正宗(650円)
まずは菊正宗をひやでもらって、お猪口へトトトと注ぎ、乾杯!
すごもり(950円)
自家製生蕎麦を、天ぷらなどを揚げる油できつね色になるまで揚げて大皿へ。かえしと出汁をつかった甘めの餡をそっとかけます。『成瀬 増田屋』では野菜かき揚げを具材として、大根おろしと大葉をのせて完成。
蕎麦つゆを餡にするために調整したもので、あんかけそばとは恐らく味付けを変えているように思います。パリパリとシナシナの中間くらいの揚げ蕎麦の具合が絶妙。だしの風味が香るとろとろの餡との調和が美しいです。
久しぶりの「すごもり」ですが、蕎麦前好きとしてはたまらない一品だと改めて実感しました。涼しい店内で、冷酒とあわせてちびちびと摘むのにぴったりです。
天抜きならこちら
店名 | 成瀬 増田屋 |
住所 | 東京都町田市成瀬が丘2-22-11 |
営業時間 | 営業時間/ 11:00~21:00 定休日/ 木曜日 |