拝島「おおしば本店」 人柄伝わる大衆酒場、焼鳥を肴に黄昏の乾杯

拝島「おおしば本店」 人柄伝わる大衆酒場、焼鳥を肴に黄昏の乾杯

2018年8月5日

遠出をしても飲みに行きたくなるお店というのはあるもので、観光はさておき、目的のお店の暖簾をくぐる方が旅の醍醐味だったりします。拝島の「焼鳥おおしば拝島本店」も、そんな一軒です。

都心からJR中央線や西武線で一時間ほどの東京都・拝島。東京暮らしの人にはおなじみの日帰り旅行先である、奥多摩、青梅、五日市への経路上にあります。普段と変わらない通勤電車が走りますが、ここまで来るとはるばる来たような気分になるものです。

近くには米軍横田基地があることから、お隣の福生はアメリカテイストの街並みでも知られています。異国情緒を感じるパブレストランでハンバーガー片手にバドワイザーを飲むもよし、駅前には意外と老舗の酒場が多く、しっぽり大衆飲み屋のカウンターに向き合うことも楽しめます。

橋上駅舎のモダンな駅舎に生まれ変わった拝島。幼少の頃、青梅線沿線に用事がありよく使っていた駅ですが、あの頃と今ではまるで雰囲気が違いました。

商店街も歩道も周辺の再整備のおかげで歩道が広がり、歩いて楽しい駅前になりました。地元・拝島の酒「多満自慢」の文字も街に色を添えています。

そんな拝島駅前の老舗焼鳥「おおしば」は、このあたりでは知らない人はいない大定番の酒場です。店前に目隠し壁がある独特なつくり。明るいうちから飲む背徳感を和らげる?

木材で江戸・東京の発展を支えてきた多摩地域らしさを感じる巨大な一枚板のカウンターがかっこいい。厨房に向いて長く奥へ伸びています。そこにはベテランの皆さんが渋く素敵に酒と肴に向き合う姿が似合います。

小上がりでは、数人で宴会も楽しめそう。どこか峠の茶屋の雰囲気を感じるのは、大きく飾り気のない時計の存在からでしょう。こういう畳で仕事帰りに数人でわいわいやるの、大好きです。

フレッシュな鶏は短冊形になるよう丁寧に串打ちされネタケースで順番を待つ。焼き台に立つのは社長さんです。

時刻は17時。口開け直後にも関わらず、すでにカウンターには常連さんの姿も。さすが皆さん、お早い。私も追いつくべく生ビールで始めます。では乾杯!

一番搾り(476円・以下税別)と一番搾りプレミアム、二種類の一番搾りを揃えていて、これは珍しいです。さらにドラフトギネスにハイネケンと海外銘柄が加わり、キリンの酒場向けビールの顔とも言えるラガー(大びん552円)、クラシックラガー(大びん552円)と、ビールだけで色々飲みたくなる内容です。

酎ハイ類は333円とリーズナブルで、大ジョッキ(619円)のサイズアップも可能です。

若鶏、かしら、しろ、砂肝、アブラと全12種類の焼鳥・焼きとん。加えて142円で鮮度自慢の炙りレバも美味しいと人気です。さらに牛大串、手羽先、ピーマン巻き、ソーセージ、うずらの卵など、その他の串ものも充実しています。いずれも、1種類で2本ずつ以上からのオーダーとなります。

小皿は285円均一。焼鳥屋のすぐ出る定番である煮込みを頼もうかと見てみると、なにやら鶏しゅうまいや豚の味噌角煮、馬刺しの文字も見え、献立づくりに苦労します。

お通しの小鉢はひがわりで、今日はマカロニの和え物がやってきました。

箸休め、ならぬ串休め。やきとりの間につまむ一品で一番好きなのは冷やしトマト。多摩で元気に育ったみずみずしいトマトでした。

一人で色々食べたいならば、おまかせ5本(570円)で決まりでしょう。味付けはタレ、塩のほかに、塩ダレという選択肢もあります。おおしば特性の辛みそは店の自慢で、お客さんにもファンが多いそう。

それではいただきます。辛みそをたっぷり塗って…

コクと旨味のあとに辛さがじんわりくる味噌、そして注文を受けてから火を通したパリっとした表面とジューシーな肉に頬が幸せです。

フレッシュでブリブリな食感のレバー、もちもちジューシーな若鶏。タレは甘めですが、鶏の脂とよくマッチしています。

お酒はもちろん多満自慢です。キリっとした味と、食に寄り添い引き立ててくれるマイルドな味が、食事系の酒場にぴったりです。

夏場に嬉しい0度以下まで専用什器で冷やしたハイネケンのボトル、そして酒場の定番・キリンクラシックラガー。案外この並びに、違和感がないものです。

気になっていた鶏しゅうまい(380円)を頼んでみました。ちりちりな生地に包まれて、甘めでコクある下味がついた鶏ミンチが口いっぱいに広がります。どうして、酒場にいくとしゅうまいが食べたくなるんでしょうね、不思議。苦味あるクラシックラガーと好相性です。

渋くきりっとした酒場ですが、じっくり過ごせば椅子に根がはえそうなくらい居心地の良い酒場です。

強面でも、お話を聞けばにっこり笑顔の社長さん。お店の方の人柄って酒場に現れますよね。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

焼き鳥おおしば 拝島本店
042-545-6922
東京都昭島市松原町4-12-5
17:00~23:00(土日は16:30~・金土祝前日は24:00まで)
予算2,500円