田無の『一国』は、沿線のもつ焼き好きが途中下車してまで飲みに集まる人気店。2023年、再開発に伴い、創業10年目にして移転リニューアルしました。以前の横丁感とは異なる完成直後のビル二階にありますが、酒場好きなら思わず唸る雰囲気。今回は新しくなった『一国』の魅力をお伝えします。
目次
酒場好きの大将がノウハウを詰め込んで作った新店舗
中野区の野方駅前の人気やきとん酒場『秋元屋』は多数のお弟子さんを輩出する、東京西部を代表するやきとん店です。そちらで修行を積んだ原田一国さんが、2013年に田無駅南口で開いた酒場『一国』は、西武新宿線ユーザーを中心に話題となり、連日満席になる田無の名物店となりました。
それから10年。年月が経過し、田無駅南口も開発再開発が本格化。その波に飲まれる形で、『一国』も一度は閉店せざるを得ませんでした。多くのファンに見送られた『一国』ですが、2023年の春、常連さんたちの期待を背負って、新たな店舗が田無駅南口2分の真新しいビルにて再始動しました。
外観
以前の店舗はノスタルジックな長屋風裏路地に位置しており、そのロケーションは2013年に開業した『一国』にとって、まるで昔ながらの老舗酒場のような雰囲気を醸し出していました。しかし、移転してしまうとあの雰囲気が失われるのではないかと不安があります。
ですが、この通り!掲げられた大きな暖簾と赤ちょうちんをみて、心配は一気に払拭されました。
内観
新築のビルですが、店内はまるで長年続いてきた酒場のような佇まいです。大将は熱心な酒場ファンで、ご自身でも店に立たない日は飲み歩るくそう。自分の店を10年続けてきた経験や、飲み歩く中で経験したことを新店づくりに強く反映させたと聞きます。
カウンターの幅、立ち上がりの高さ、照明から内装のトーンまでも大将のこだわり。カウンターの中央、鍋の前に座ってみました。酒場の開放感が感じられ、実にイイものです。席配置などつくりに余裕があり、空調もしっかり効きますので、以前の店舗より環境は大幅に改善しています。
店内のどの席からも見える1段高い場所に、もつ焼き店の主役「焼き台」があります。次々と入る注文に合わせてずらっと並べられる串は圧巻です。
大鍋では煮込みがグツグツと煮えています。豆腐もいい色に染まっていますね!
開店は16時と一足早く開店しますが、次々とお客さんがやってきて、あっという間に席の半分近くが埋まりました。さすがは人気店です。
品書き
お酒
- 樽生ビール サッポロ黒ラベル:600円
- 瓶ビール サッポロラガー大瓶:700円
- 特製ハイボール:400円
- ホイスハイボール:400円
- 酎ハイ:450円
- レモンサワー:450円
- バイスサワー:450円
- 豆乳割り:450円
- コーヒー焼酎:450円
- キンミヤ梅割り:380円
- 日本酒 菊正宗:400円
料理
- かしら・たんした・はらみ・しろ・あぶら・チキンボールなど:130円
- かしらあぶら・ちれ・てっぽう・はつもと:150円
- なんこつ・ばら:180円
- とまと肉巻き:250円
- 栃尾揚げ:350円
- 炙りハラミユッケ:480円
- チレユッケ:450円
- もつ煮込み:450円
- なんこつ煮込み:430円
丁寧な仕事が味の決め手
サッポロラガー大瓶(700円)
『一国』は創業時からずっとサッポロビール。新しくなっても、変わることなくキンキンに冷えた赤星(サッポロラガービール)が出番を待っています。「おつかれさま」と心の中でつぶやきながらビヤタンを満たして、乾杯!
ポテトサラダ(380円)
女将さんや焼台のお兄さんにご挨拶をしつつ、まずはすぐでるポテトサラダをお願いしました。マヨネーズをしっかりと効かせた酒場の味。スパイシーな黒胡椒がいいアクセント。
粗めにつぶしたポテト、ゆで卵、ハムのコントラストを楽しみます。
なんこつ煮込み(430円)
さて、そんな煮込みですが、『一国』では通常のシロモツの煮込みのほかに、豆腐と玉子、そして「なんこつ」があります。なんこつは鍋には入っておらず、オーダーを受けるとその都度、鍋横にかけられた網で湯がくようにして、煮込みのモツや汁と一緒によそいます。
なんこつを都度つくるのは、煮込みすぎると溶けてしまうからでしょう。豚のフエの部位、軟骨周辺に残るトロトロの肉がシンプルな味付けの煮込みの汁を吸って実に美味。
ポテトサラダと煮込みを並べれば、焼きものができるまでに延々と飲んでいられます。※お酒は適量で。
特製ハイボール(400円)
居心地の良いカウンター席というのは、大瓶のビールをスイスイと進ませるので、あっという間に空になってしまいます。※お酒は自分のペースで。
二杯目は、下町エリアなどで見かけることが多い色付き・エキス入りの焼酎ハイボールをヒントにした「特製ハイボール」をいただきます。甘さはほとんどなく、キレのいい味。それでいてプレーンの酎ハイよりも圧倒的な飲み心地の良さがあります。ベースは三重県の酒蔵・宮崎本店がつくるキンミヤ焼酎です。
やきとん
カウンター席の醍醐味は、ライブ感たっぷりの焼きの光景を眺めることでしょう。火の面倒も肉をひっくり返すのもお店の人がやってくれる。こんな気軽にバーベキュー気分が味わえるのに、串1本130円なのだから素晴らしい。
味付けは、タレと塩のほかに、秋元屋出身の方のお店に多い、ニンニクなどを効かせた甘い味噌ダレがあります(手前)。
焼いている様子を見ていてわかるのは、『一国』のスタッフの方々の仕事ぶりの丁寧さです。特にシロや他の手間のかかるモツの下ごしらえは完璧であり、タン、カシラなどの串も短冊状・棒状に美しく串打ちされています。焼き方も丁寧。豚モツの串焼きは手仕事の重要性を再確認させられます。
まずはこれから食べてみてくだい!と、1本目に焼いてもらったのはレバーの塩。しっかり火を通していてもぷりっぷり。塩と炭火の香りがレバーの旨味を引き立てます。
次にいただくのは、タレで味付けされたシロです。そのクサミのなさから、ゆでこぼしなど、下準備が丁寧に行われていることが想像できます。脂がきちんと落とされているため、厚みのある鳥皮のような部分が形成され、それがパリッとした食感を生み出しています。
三本目はカシラを味噌ダレで。ガツンとくる、甘辛い味付け。焦げた部分の香ばしさも味のポイントです。口の中で肉汁とあわさり、濃厚な美味しさが広がります。
コーヒー焼酎ソーダ割り(450円)
さっぱりとしたものが飲みたくなったらコレ。甲類焼酎とコーヒーをあわせ、ソーダを加えたお酒をいただきます。すっきり、さわやか!
ごちそうさま
駅からやや離れたとはいえ、徒歩2分。広い店内があっという間に埋まりました。移転前から感じていましたが、『一国』の特長は、味の良さは当然ながら、お店の皆さんや常連さんの人柄の良さが大きいと思います。新店舗でも大満足でした。
旧店舗の記事
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 一国 |
住所 | 東京都西東京市南町5-8-21 新正第一ビル2F |
営業時間 | 【営業時間】 平日 16:00~23:00(焼き物17:00~) 土曜 16:00~23:00 日曜 16:00~22:00 ※月曜定休日(月曜祝日の場合、翌日定休日) |
開業時期 | 2013年2月(新店舗は2023年4月22日開店) |