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田無に素晴らしいやきとんのお店がある。そんな情報を父の知り合いから聞いていました。さすがに田無ともなると通常のはしご酒のコースには入っていないので、飲みに降りた経験はなく、また飲み屋街の話も聞いたことがないので飲みに行く機会はだいぶ遅くなってしまいました。
いまはそれを反省しています。だって、ものすごく素敵なお店なのですから。どうして今まで飲みに行かなかったのかと後悔してしまう、やきとん好きならば西武線に乗って行く価値は十分にある酒場でした。ということで、今回は「一国」をご紹介。同じ西武線沿線の人気もつ焼き店で修行しつつも、独自のムードや商品構成をつくりだし、すっかり田無オリジナルという雰囲気になっています。
駅周辺に赤提灯は点在するものの飲み屋街というほどでもなく、情報がなければ地元の人でもない限りなかなか飲み歩かない街ではないでしょうか。
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駅の近くですが、初めての人はかなり迷うであろうビルの隙間の路地に入った先にある「一国」。日々横丁巡りをしていながらも、ここはなかなかの”敷居”を感じてしまいます。
そうして入った先には夕方5時にもかかわらず地元の人達が大いに盛り上がっています。もう衝撃的な光景です。町に愛されるというのはまさにこういうお店のためにあるような言葉。
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やきとん屋でフードメニューはだいぶ絞り込んでいます。このあたりは最近流行りのスタイルという感じ。串は1本100円からで、味付けは何も言わずにお任せででてくるのが他店との違い。
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こちらがドリンクメニュー。悩むことなく「サッポロ黒ラベルの中ジョッキを」とオーダーしましたが、よく見れば大瓶赤星もある。焼酎ハイボールやホイスなど個性派もあっておもしろい。店内にはシャリキンのPOPもあり、これからの季節はシャリキンホッピーを楽しむのもまた良さそう。
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とはいえ、酒場の一杯目のビールは誰がなんと言おうともビールに決まっています。状態のいい黒ラベルに思わずニッコリ。それではいただきます、乾杯!
うん、今日も変わらず美味しい。
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やきとんをいくつか頼んで、それまでの間おしんこで繋ぎます。スピードメニューではナンコツスライスやマカロニサラダも気になるところです。
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カウンターからは目の前で次々焼かれていくモツを眺めながら飲めます。そろそろ自分のかな、あれも美味しそう、とみている時間が大好き。炭火で大胆に、でもよく面倒を見ながら焼いていくスタイルはまさに職人技。カッコイイ。
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黒ラベルはあっという間に飲みきってしまい、次に大瓶の赤星を。やはりやきとん屋のカウンターには赤い星がしっくりきます。東京のもつ焼き文化には東京で長年愛され続けている赤星を。となりのご夫婦も「赤星ください」とオーダーしていましたし、この呼び方は一般化してきたのかな。
私が学生の頃は、「赤星」って言うとみんな「なにそれ!見たことないビール」なんて言われていたけれど、酒場ブームとともに認知も広まったみたいでなによりです。(私も昔から赤星赤星書き続けていますし・笑)
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ミートボール、ハツ、タン。味付けはとくに言わなくても大将のおすすめの味付けででてきます。串の大きさは標準的ですが、打ち方・焼き方が丁寧で肉汁がぎゅっと詰まったレベルの高いやきとんです。
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カシラはやはり味噌ですね、そしてシロはタレで。味噌味のカシラはいまでこそ広まっていますが、昔は川口の元祖となったやきとん店でしか食べられない憧れの味でした。色々なお店が味のバランスを工夫してそれぞれに違いはありますが、一国のカシラはちょいピリかつ深みのある味でビールとの愛称はとにかく抜群に良いです。
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ビールも良いけれどハイボールもいいね。それも定番のウィスキーハイボールではなく、最近ブームがきている変わり系のハイボールでいきたい。昭和30年代、ウィスキーっぽい味を目指して白金の後藤商店で誕生したウィスキーテイストのホイス。ホイスはウィスキーをもじってホイスキーとして、そこからついた名前です。こういうの、好きなんです。
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さて、さっきから目の前にあるおお鍋が気になって仕方がありません。煮込みとは別で、おでんのような具材がはいっていますが、でもモツも入っていて、なんとも独特な様子。これ、絶対美味しいですよ!ということで、女将さんに「これなーに?」と質問。
はんぺんや大根、ちくわぶ、がんもなどが入ったオリジナルのおでん。
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外観から感じるしつこさは食べてみると一切なく、もつの旨味が溶け込みつつも脂っぽくなく、すいすいと食べてしまうおでん。がんもの見た目にノックアウトされ、食べてみて改めて頷く。これはイイ。
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早い時間からいっぱいになる店内。L字カウンターは地元のお父さんたちを中心にあっという間に満席になる。とにかく愛されていることを感じさせる酒場です。幅広い客層が集い、みんなが幸せそうに串を加えている、こんな楽園が田無にあるとは思いもしませんでした。
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吉祥寺から20分間隔で西武バスが田無駅とをつないでいますので、吉祥寺とのはしご酒を繋ぐことも可能。酒場好きならば、電車やバスに乗ってでも遠征してみる価値のあるお店です。
素敵な酒場との出会いに感謝。地元のお父さん方、また飲みに行きます。ありがとうございました。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
一国
東京都西東京市南町4-1-1
17:00~23:00(月定休)
予算2,000円