国分『おでんの掌』昭和47年創業、南国で食べる鶏ガラ出汁おでんの魅力は?

国分『おでんの掌』昭和47年創業、南国で食べる鶏ガラ出汁おでんの魅力は?

鹿児島や宮崎は南国でありながらおでんが盛んな地域。霧島市国分にもおでんの名店があります。店名は『おでんの掌(つかさ)』。1972年創業、先代女将の後を継いだ2代目大将がつくるおでんは、なんと鶏ガラベースです。

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半導体の街のおでん酒場で、アナログの素晴らしさを感じる

国分駅

(JR日豊本線 国分駅)

鹿児島県東部に位置し、県下第二位の人口規模を有する12万人都市、霧島市。鹿児島や都城・宮崎、えびのや大隅半島方面の交通が集まる結束点として発展しました。空の玄関口である鹿児島空港も霧島市にあります。

(霧島神宮)

霧島市といえば国宝指定の霧島神宮や、霧島温泉郷をはじめとした温泉街が多数ある観光地ですが、この街を代表する産業は「半導体」でしょう。

1980年、ソニーは世界初のCCDカラーカメラを発売しましたが、世界で初めてイメージセンサー「CCD」の量産を行った事業所がここ国分市(現 霧島市)に建設されたソニー国分です。今や日常生活になくてはならないエポックメイキングとなった「デジタルの眼」は、ここから世界へ広まりました。ソニーと並び、京セラの製造事業所も規模が大きく、最先端の半導体が製造されています。ちなみに、京セラ創業者の稲盛和夫氏は鹿児島の出身です。

産業がある街には飲み屋街がある。国分の飲み屋街は「国分中央」というエリア。ここで人気の酒場が今回ご紹介する『おでんの掌』です。

約50年続く酒場で、初代の女将のあとを継いだ上品な店主が中心となって切り盛りしています。

外観

地方の飲み屋だからと侮るなかれ。霧島市では大変な有名店で、口開けの17時に合わせて大勢の常連さんが訪れ、カウンターが奥から順に埋まっていきます。小上がりもありますが、こちらも予約していた会社員グループが次々訪れ、取材時は満席となりました。

内観

店の歴史を感じるレトロな雰囲気。おでん店特有の出汁の香りが漂うしっとりとした空気と、暖簾越しに差し込む南国の日差しに、まるで物語の中に迷い込んだような気分になってきます。

おでん出汁は、寸胴で数回にわけて出汁を取るそうです。九州らしく鶏ガラ出汁に昆布をあわせています。具は地元食材にこだわりあり。九州南部に多い豆もやし、春菊、さつま揚げや巨大な牛すじが評判。おでん鍋とは別に仕込む「とんこつ」などが人気だそう。

品書き

  • 生ビール
  • 瓶ビール
  • 焼酎
  • 樽酒(秋~春)
  • から揚げ
  • とんこつ
  • おでん(トーフ、厚揚げ、たまご、ごぼう天、サツマ揚げ、がんも、こんにゃく、大根、じゃが芋、もやし、もちキンチャク、里芋、竹の子、春菊、スジ):100~250円
  • らっきょう
  • おにぎり
  • お茶漬け

尋ねる価値ある一軒。店主の人柄が包む名酒場の味と情緒

瓶ビール中瓶

樽生ビール、瓶ビールともビールはキリン一番搾りです。地域性もあり焼酎を飲むお客さんが多いですが、まずはやはりビールではじめたい。春の取材とはいえ、すでに半袖がちょうどいい気候ですから、キンキンに冷えたビールが嬉しいです。

キリン一番搾りで乾杯

とんこつ

鹿児島で「とんこつ」といえば、骨付きの豚肉を甘く煮たもの。塊肉をがぶっと頬張れば、なんこつのプリッとした食感と、こってりとした豚の旨味が口いっぱいに広がり、ほっぺが落ちそうになります。これはたまらないとビールを一口。

サツマ揚げ、里芋、春菊、大根

定番のおでんは、鹿児島らしくサツマ揚げをはじめ、別でさっと湯通しするようにつくる春菊、味が染みた里芋や大根も絶品です。

昆布とカツオの合わせ出汁でつくる関東のおでんと比べ、鶏ガラ出汁は濃厚のように思われるかもしれませんが、これが実に心地よいのです。上品すぎるわけでもなく、しつこさもありません。ご近所さんが鍋持参で山ほどテイクアウトしていく理由がよくわかります。

竹の子

「いまが一番美味しい時期」、と店主さんに教わり竹の子を。鶏だしのコクと竹の子特有の旨味が秀逸です。

焼酎水割り

口の中が旨味でいっぱいになったら、焼酎を。芋焼酎の水割りでほっと一息ついて店内を見渡せば、満席の店内は笑顔で溢れていました。酒場の雰囲気は店主の人柄できまるとよく言いますが、ここもその通り。温厚でまじめな店主がつくる温かい酒場です。

から揚げ

から揚げは、ほとんどのお客さんがおでんに続いて注文する『おでんの掌』もうひとつの名物料理です。醤油とニンニクで漬け込んだチューリップ型の手羽をカウンター前に小さな鍋で揚げていきます。食べやすくするため骨に手際よくアルミを巻いて完成。

できたてでまだ少しチリチリとしています。表面はザクザク、中は絶妙な熱のとおり具合でしっとりとしていて肉汁たっぷりです。

ごちそうさま

南国で一年を通じておでんを看板料理に商売を続ける。よっぽど記憶に残る味でなければ半世紀続けることは厳しいに違いありません。産業があるとはいえ地方都市ですから、大都市のおでん店よりも何倍も難しいはずです。その理由は、ここのカウンターに座っておでんを頬張らなければわかりません。

百聞は一見にしかず。

鹿児島空港と国分は路線バス(いわさきバス)が結んでいるため、鹿児島市からリムジンバスで空港へ向かわず、JR日豊本線で国分駅まで移動し、『おでんの掌』で飲んでから路線バスで鹿児島空港へ行くような旅程も可能です。

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(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名おでんの掌
住所鹿児島県霧島市国分中央3-35-3
営業時間営業時間
17:00~22:00
定休日
月曜、日曜
開業時期1972年