別府『ふくや』温泉街の名酒場。湯上がりの一杯、深夜のおでんと五つ玉。

別府『ふくや』温泉街の名酒場。湯上がりの一杯、深夜のおでんと五つ玉。

2020年11月24日

九州を代表する温泉街のひとつ「別府」。日本一の温泉湧出量を誇る街ですが、温泉だけで済ませるにはもったいないほど夜の街が魅力的です。

大分名物の「とり天」や「りゅうきゅう」などおなじみの肴を楽しんだあとは、地元の人がそっと深夜に訪れる小さな大衆酒場を覗いてみてはいかがでしょう。

今日ご紹介するお店は、戦後、引揚者などによって開かれた「中央市場」に起源を持つ元町界隈にある、70年以上続く「ふくや」です。1948年(昭和23年)の創業。

深夜まで営業しているおでんのお店です。

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別府温泉の飲み屋街は規模が大きい

別府の湯量の豊富さを象徴するように、深夜も吹き上げる駅前の「手湯」。

そこには、別府を温泉地として世界に広めたキャッチフレーズが書かれています。

駅前のあるビジネスホテルですら温泉が引かれている別府は、どこにいっても温泉ばかり。そして、その合間には小さな酒場やスナックが密集し、暖かくてちょっぴり怪しい光で街を照らしています。

温泉と潮の香りの風がふく路地に「ふくや」はあります。

観光産業の人も飲みに来る店

三代目の女将さんとお手伝いのお姉さんで切り盛りする、カウンターだけの小さなお店。

常連さんが多く、みな地元の方。観光業で成り立っている街らしく、お客さんもそういった商売をされている方が多いです。ホテルや旅館で働いた人が通いやすいよう、営業時間は深夜まで。

温泉旅館で夕食を済ませたあと、ふらっと夜の街を歩くのが楽しいもの。旅館を抜け出してきた宿泊者も混ざり、みんな思い思いに焼酎やビールを傾けています。瓶ビール(キリンラガー・大びん620円)で乾杯。

ビールはアサヒもあり、サイズは大中小と揃っています。日本酒は浜嶋酒造(大分県豊後大野市)の「鷹来屋」(450円)など、焼酎は珍しい甲類「三楽長期熟成」。本格焼酎は赤霧島などもあります。

献立は通年で主役をつとめるおでんに加え、塩サバ目玉焼きなど。

店の奥の鉄板で昔ながらの作り方で焼き上げる焼きそば(470円~)やお好み焼き(420円~)、〆のごぼ天うどん(580円)やにゅうめん(550円)もあります。

名物のおでんは創業当初から変わらぬ味

脂の多い具材も多いのに、透き通った琥珀色のおでんつゆ。ヒタヒタにつかった種はどれもいい色合い。三種類の色がついた串(130円~)は、会計の目印にもなっています。

20種類以上というおでん。地元でとれた食材を中心に、げそやかまぼこ、じゃこ天など海産物の種が豊富です。

甘さを感じるつゆは絶妙な塩梅。二軒目でほろ酔いで訪ねたときには、こういう味がそっと心に染み込むようで心地よいものです。

地元のお酒を飲みながら、お店の話を伺います。

屋台をひいて商売をしはじめたのが最初だったのだそう。長く続く店だけに、二世代、三世代で来てくれる常連さんもいるそう。住み込みで働くことも多い観光業だけに、きっと「別府のお母さん」と親しんでいる人もいらっしゃるのでしょう。

〆はお好み焼きで

お好み焼きそば入り(550円)、ソースは自分の好みでどうぞ。キャベツともやしがたっぷり、ほっとする味です。

おでん鍋から立ち上るだしの香りと心地よい湿度、女将さんの包み込むような接客、常連さんたちの大分言葉のなかにいて、ゆっくり過ぎていく時間。長く続いてきたお店はあったかいです。旅先の緊張が溶けていきます。

5つ玉のそろばんで勘定をしてもらって、ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名ふくや
住所大分県別府市元町3-8
営業時間営業時間
[火~土]
18:00~23:00
定休日
日曜日・月曜日(火曜日不定休)
開業年1948年