別府「生一本」 地元に愛され半世紀。観光地の中にある日常の酒場。

別府「生一本」 地元に愛され半世紀。観光地の中にある日常の酒場。

「山は富士、海は瀬戸内海、湯は別府」

別府観光の生みの親、油屋熊八氏が考案したキャッチフレーズです。日本一の湧水量を誇る温泉街・別府は、九州や中四国だけでなく、日本中から名湯を求めて人々が集まる観光地です。

そんな別府にもあります、地元密着の大衆酒場。

今日ご紹介する酒場は、創業約60年になる「生一本」。観光客向けというよりは、大分・別府に暮らす人々の憩いの場です。温泉街で働く人が仕事終わりの一杯に集えるように深夜(平時は午前3時)まで営業しています。

JR日豊本線別府駅から、別府湾に向けてなだらかな扇状地を下ること5分。潮の音が聞こえてくるような場所に店はあります。

 

近くには昭和13年築、登録有形文化財指定、立派な唐破風造(からはふづくり)の市営公衆浴場「竹瓦温泉」があります。高い天井のロビー、源泉かけ流しの湯、昭和レトロに浸る空間は、全国の銭湯・温泉好きの憧れの場所です。

 

周辺には温泉街らしい歓楽街や横丁があり、非日常の光景が広がっています。

 

ディープスポットもよいですが、やはり王道の大衆酒場を訪ねておかなくてはなりません。(安全のため飲酒は入浴のあとに。)

 

生一本はここ本店のほかに、新宮通り店にも店があり、現在のご主人は新宮通りのほうにいらっしゃるそうです。もちろん、本店を任されているスタッフの皆さんもベテランさん揃い。

 

カウンター席、テーブル席、そして座敷席という配置。広々とした空間でのんびりと湯上がりの休憩がてらビールが楽しめます。

 

大分には、東九州唯一の大手ビールメーカーの工場となる、サッポロビール九州日田工場(新九州工場)があります。2020年で竣工20周年となります。そこで作られた、日田の伏流水でつくられたサッポロ黒ラベルが生一本の樽生です。

冷凍ジョッキに注がれた生ビール(中550円・以下税込)で乾杯!

 

樽生のほかに、瓶ビールで日田のヱビス(大ビン630円)、キリンクラシックラガー(大ビン630円)、アサヒスーパードライ(大ビン630円)、サッポロ黒ラベル(中ビン630円)が用意されています。

酎ハイ類は大分特産 かぼすはちみつサワー(420円)をはじめ、レモンサワーや男梅サワー(370円)など各種。

 

とはいえ、大分も酒処の地域。麦、米、芋焼酎や、西の関(大分県国東/萱島酒造)、千羽鶴(大分県竹田/佐藤酒造)といった地酒が並んでいます。1合420円と、手頃な価格が嬉しいです。

 

大分といえば、鯵、サバ、ブリ、鯛など、豊後水道の海の幸。生一本にも市場に並ぶ地場の魚が豊富に揃っています。

 

こちらは定番料理。不動の人気メニュー、とり天をはじめ、大分の粉食文化を代表する団子汁なども勢揃い。養鶏が盛んなエリアということもあってか、鶏モツ(460円)や地鶏皮酢(460円)など、鳥料理が多いですね。

 

観光向けの名物、というだけでなく地元の方にも世代をこえて愛されている「とり天」(580円)。起源は諸説あるようですが、そのひとつに別府市浜町の洋食レストランが考案したものとあります。

 

しっかりと下味がついているのに、軽くてさくっと食べられる「とり天」。よくある「ジューシー」という感想ではなく、歯ごたえがあるもっちりとした食感です。

辛子とタレをつけて味を変えるもよし、そのまま食べても旨味、甘味がきいていてビールを強く誘う味になっています。

 

かも吸い(900円)も別府ではちょっとした人気料理。老舗の居酒屋が発祥と言われていますが、生一本をはじめ、近隣の居酒屋でも定番の一品として用意されています。

 

出汁がきいた汁に、ぶつぎりの鴨が入り、大分の特産品・柚子胡椒で味を引き締めていただきます。煮込み的なポジションとしてのかも吸い。いいじゃないですか。これは絶対に麦焼酎が進む味です。

 

国東、南酒造の「とっぱい」(380円)のお湯割りを。名産のかぼす搾ればいっきに大分らしい焼酎の飲み方になります。

丁度いい距離感で接してくれる接客上手の店長さんに、常連の皆さんのお人柄もよく、カウンターの一人飲みはたいへん楽しい時間になりました。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

生一本 本店
0977-24-2881
大分県別府市北浜1-14-1
16:00~0:00(火定休)
予算2,400円