別府『チョロ松』創業から半世紀。二代目が受け継ぐ暖簾で郷土料理と国際交流

別府『チョロ松』創業から半世紀。二代目が受け継ぐ暖簾で郷土料理と国際交流

2020年9月9日

大分はおんせん県。源泉数日本一の別府は温泉を楽しむ観光地です。でも、温泉旅館で完結しちゃうのは実はもったいない。この街は、他に類を見ない巨大な温泉地併設飲み屋街を抱えています。

温泉とセットで、別府の夜は酒場巡りを一度は楽しんでほしいです。この街で代表的な老舗酒場の一軒が「チョロ松」。創業は1955年(昭和30年)。

個性的な店名に、有名漫画の登場人物を連想させますが、チョロ松が漫画に登場したのは、1960年代です。

さて、そんな老舗チョロ松は、名物が鴨吸い(蕎麦)なのですが、それだけでなく普通の酒場としても魅力十分。別府に来たならば訪ねて頂きたい一軒です。

別府は、北九州・小倉からJR日豊本線の特急ソニックで約70分。温泉街に向かう列車ながら、奇抜な未来的デザインをした電車が走っています。

電車を降りれば、すぐ温泉地。駅前広場にも「別府駅前手湯」があり、改札から徒歩30秒で温泉を体感できます。10分ほど歩けば海。有名な別府タワーも徒歩圏内です。タワーを眺めるとスーパードライが飲みたくなりますが、さてさて、一軒目はどうしましょう。

とにかく広い商店街と飲み屋街。ザ・温泉街といった感じの町並み。レトロな商店街には豊後水道の海産物や名物の鳥天を扱うお店が元気に営業中です。

北浜通りにある「チョロ松」。駅から徒歩5分ほど。宿に荷物をおいたら、口開けを目指して向かいましょう。

人気店で、18時を過ぎると続々と地元の人や評判を聞いた観光客で満卓になるお店。旅先の一人飲みを、ゆっくりと過ごしたいならば早い時間がベストです。

暖簾を守る二代目の女将さんを中心に、お手伝いの方が数名。アルバイトではいっている店員さんは、皆さん外国からの留学生です。別府には教員・学生の約半数が外国籍という大学があり、そこの学生さんがお店を手伝っています。

カウンターで応対してくれたお兄さんは、ネパールからいらした方。日本の居酒屋さんのアルバイトがどうかいい思い出になりますように。そんな思いを持ちつつ、まずは生ビールを。

銅製のビアマグが使われており、ビールの冷え具合をキンキンの取っ手を伝い手で感じます。ビールは大分県日田市にあるサッポロビール九州日田工場(H)でつくられたサッポロ黒ラベル。

それでは乾杯!

料理は種類控えめ。ですが、どれも特色あるものばかりで、あれもこれも食べたくなってしまいます。地ダコ酢味噌(720円)、自家製茹舌(900円)、地鶏たたき(670円)など。名物は鴨吸い蕎麦入り(1,450円)。

琉球(820円)。

ご当地料理は「りゅうきゅう」。漁師料理として誕生した琉球は、沖縄の漁師から伝わったことから「りゅうきゅう」になったと言われています。大分以外ではあまり食べられていないりゅうきゅう、いまはすっかり大分の郷土料理です。

サバやアジを使う場合もありますが、チョロ松ではかんぱちが使われています。

鮮度バツグンで調味料の味が浸透しないほどにコリコリとした歯ごたえ。だからこそ、濃いめの九州醤油、酒、みりんに浸け置くことでバランスを整えているのでしょうね。芳ばしい胡麻とたっぷりのネギもアクセント。これは焼酎が欲しくなります。

日本酒は国東半島で造られる銘酒「西の関」。焼酎はご当地の大手銘柄「二階堂」や「いいちこ」、そしていいちこと同じ三和酒類がつくる新銘柄「西の星」など。

なみなみに注いでくれるのが嬉しい西の星(500円ほど)。やわらかい喉越しと大麦のほんのり漂う香ばしさ。スタッフの方や、カウンターで居合わせた常連さんと温泉街のお話を聞かせてもらいつつ、のんびり良い時間が流れます。

常連さんのおすすめはポテトサラダ。軽く一人で飲むときには、軽くて丁度いいんだよと。コクがある味、潰しのこりがある芋と後のせの玉子の食感が良いバランスです。焼酎を誘う味です。お次はメルシャンの白水を。

予約をしていたお客さんが次々とやってきて、店内は人が集まりほんのりにぎやか(声が大きいのではなく)に。お店はこれからが本番ですね。

カウンターで土地の味をつまみに小一時間の癒やしタイムでした。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

チョロ松
0977-21-1090
大分県別府市北浜1-4
17:30~23:30(月定休)
予算2,700円