阪急線の高架下、中津駅の改札から徒歩10秒の場所にある『いこい(憩い食堂)』は、ココだけ時間が止まっています。大箱でみんな楽しく飲んでいますが騒がしくなく、古き良き大衆酒場の佇まい。名物のだし巻玉子をアテにキリンラガーで乾杯を!
「憩い食堂」は、大阪酒場遺産に認定したい
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梅田から阪急電車で1駅。日本一狭いと言われる島式ホームに降り立ち、ターミナルか1駅とは思えない煤けた階段を降りると天井が低く薄暗い空間に僅かな自動改札機がみえてきます。駅員さんが常駐していることがむしろ不思議なくらい。
そこを抜けると通路と一体化した広いコンコースに抜けますが、ここで昭和の風情をたっぷり残した酒場が見えてきます。
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店名は『大衆酒場いこい』または『憩い食堂』。入り口が複数あり、カウンターやテーブル席が並ぶホールをあわせるとなんと100席にもなる大箱です。それでも満席になるのは、『いこい』が愛されている証拠。
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看板からは駅の改札まで見渡せます。改札から徒歩10秒。これならば、阪急梅田駅から大阪駅前ビルへ飲みに行くより、中津まで電車移動をしたほうが早く飲めそうです。
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入り口によっては、よりディープな雰囲気に。頭上に通る阪急3路線を走る列車のジョイント音がより一層ディープさを演出しています。寒気のために開いたアルミサッサからはベテランさんたちの笑い声が聞こえ漏れてきます。
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極めて重要な都市鉄道の高架下。いつかやってくる再開発の心配。
でも、そんな心配を微塵も感じさせない濃厚な店内は、ここだけ別世界のようです。鉄道会社系のカレンダーと、系列の野球チームのポスターがその立地を表しています。
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お客さん用のテーブルを埋め尽くす”ドリバ”(ドリンクサーブ用の業務スペース)。なにせ、毎夜100人入る店が数回転もまわるため、お酒は飛ぶように売れ、その準備も大忙しです。
若い店員さんも、聖徳太子のように飛び交うオーダーをすべて受け止めてしまいそうなベテラン店員さんも、皆さん、素晴らしく手際が良い!そんな働く姿も老舗・大箱酒場を訪ねる楽しみの一つです。
大将は先代から受け継ぐために21歳から『いこい』で働く大ベテラン。温厚な表情の奥にみえるプロの姿勢が素晴らしい!
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ずらりと並ぶ一升瓶。本格焼酎に混ざって、東京・下町でお馴染みの甲類焼酎が見え隠れしています。
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店内はとにかくいろんな掲示物でいっぱい。野球、サッカー、有名人のサインにキリンのポスター。66年目を迎えた本当の老舗酒場にしかつくれない雰囲気です。
品書き
お酒
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- 大樽キリンラガービール:生小400円・生中550円・生大780円
- 瓶ビール キリンラガー大瓶:600円
- 酎ハイ(レモン・ライムなど):450円
- ジョニ黒ハイボール:600円
- ハイボール:600円
- 清酒 白雪:グラス450円
- 清酒 剣菱:グラス500円
- 富誉咲 純米大吟醸:550円
- 二階堂 一升瓶:5,000円
料理
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- いこい名物どて焼き 3本:450円
- 肉じゃが:500円
- すじ焼き 2本:500円
- だし巻:500円
- 春巻 2本:400円
- シューマイ 4つ:500円
- お造り(まぐろ・かんぱち・しまあじ・平目など)
- 串カツ 3本:450円
- スルメの天ぷら:500円
- エビフライ2本:400円
- 湯豆腐:400円
- 焼鳥(鳥・キモ・砂ずり・皮):120円
- もんごイカ下足焼 2本:350円
- 牛ミニステーキ:600円
- じゃこ天焼:300円
- お好み焼き:750円
- ポテトサラダ:300円
- きずし:400円
店の雰囲気そのものが酒のアテ
キリンラガービール中生(550円)
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さあ、はじめましょう。ビールはキリンが用意する最大サイズの大樽に入った樽詰キリンラガー。もちろん近所の神戸工場づくりです。昔からある、ずんぐりとしてたっぷり入るジョッキで出てくるのが本物の証拠。それでは乾杯!
どて焼(450円)
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ここの名物はほかにもありますが、ドテ焼は特筆した美味しさ。
長くやっている関西の酒場に多いコク深い甘さ強めの味噌味。もっちりしているようで歯切れがよく、実に美味。長年受け継がれてきた、店を代表する味です。
串カツ(450円)
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均等な衣に包まれて平均よりもサクサクに仕上がった串カツも印象に残る味です。串カツ専門店ではないのでソースはドブ漬けではなく自分でかけるタイプですが、衣の食感がその分強め。豚バラの下味もいい具合です。
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飴色の空間で酒場らしい料理を食べると、自然と進むのがラガービールです。同じ神戸工場のキリンラガーですが、つぎは瓶ビールのダイビンに。また印象がかわって、心地よく喉を冷やしてくれます。
だし巻(500円)
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待っていました!焼けるまで時間がかかるのも納得できる、巨大なだし巻が運ばれてきました。
嬉しいのはボリュームだけではありません。出汁の使い方がよく、茶碗蒸しのような濃厚な旨味に包まれています。揺らせば”ぷるん”と動く独特なだし巻なのです。
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下に敷かれたキャベツには出汁がしみてシナシナに。紅生姜といっしょに箸で大きくつかんで頬張れば、みんな大満足間違いなし!
一人ならば大将の前のカウンター席でしみじみと酒場時間が楽しめますし、グループならば広々と使える大きなテーブル席で楽しく語らえます。酒場が好きならば、どんな用途でもどーんと迎えてくれる懐が深い店です。
飲んだ後は、店の隣にあるディープな欧風居酒屋・洞窟バー『CAVE (ケーブ)』へハシゴすると、中津がもっと楽しくなるかも。実は隣の『CAVE』はいこいの兄弟店なんですって。
ごちそうさま。
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(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | いこい |
住所 | 大阪府大阪市北区中津3丁目1−30 |
営業日時 | 17:00~23:00 (LO.22:30) 定休日 日、祝日 |
創業 | 1957年 |