有楽町『日の基』ガード下にある奇跡の酒場。その原点は終戦直後にあり

有楽町『日の基』ガード下にある奇跡の酒場。その原点は終戦直後にあり

2022年10月26日

有楽町のガード下には、ふたつの『日の基』があります。共にディープなムードがありますが、半地下にある『日の基』は戦後復興期で時が止まったような空間です。隙間風吹き込む店内でもなんだか暖かく、肉豆腐を肴にサッポロラガービールを飲めば、「こんな都心の夜もいいものだ」と感じられるかもしれません。

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終戦直後の簡易宿泊所からはじまる

有楽町駅周辺の鉄道高架橋は、1910年(明治43年)から使われ続けてきた日本最古のもので、いまも重厚感ある赤レンガ造りのアーチが一日1,000本を越える列車輸送を支えています。この高架橋の下には、歴史の分だけ様々なストーリーがあり、近年作られた高架下の商業施設とは一線を画す混沌とした世界が広がっています。

今回は、そんな有楽町の鉄道高架下から知る人ぞ知る酒場『日の基』をご紹介します。日の基は「日本基金属鉱業」の略称「日基(にっき)」から来ており、やがて「日の基(ひのもと)」となりました。戦後の混乱期は、国鉄から借りた有楽町の高架下で簡易宿泊施設を開設し、引揚者を受け入れた歴史があります。

その後、高架下で飲食店『日の基』を共同運営するようになり、『日の基』の名が残る居酒屋が現在も営業を続けています。戦後復興、高度経済成長、バブルのはじまりと崩壊、そして2020年からのパンデミックと変わりゆく東京を見続け、幾度の困難をくぐり抜けてきた酒場です。直近でも外出制限、酒類提供規制で大変厳しい状況となりましたが、クラウドファンディングなどにより乗り切ることができ、現在も有楽町に謎めいた魅力を漂わせています。

品書き

お酒

生ビール(サッポロ生ビール黒ラベル):500円、サッポロラガービール大瓶:630円。ホッピー、サワー類:540円、冷酒樽酒:500円など。

料理

まぐろ刺し:680円、肉豆腐:680円、湯豆腐:630円、ニラ卵とじ:630円、メカジキバター焼き:680円、じゃこと青とう:500円、もつ煮:580円、ポテサラ:580円、アジフライ:580円など。

日比谷と銀座に挟まれた一等地に残る、酒場好き集う店

サッポロラガービール大瓶(630円)

一杯目は、店の雰囲気にぴったりの銘柄、赤星こと「サッポロラガービール」で乾杯!

サッポロを扱い続けて半世紀以上。都心の老舗には、酒場ブーム以前からこういう老舗に赤星が根付いてきました。

たこ刺(580円)

かつて魚河岸があった築地に近いこともあり、有楽町のガード下から新橋にかけての店は、どんなにディープな雰囲気でも刺身は美味しかったです。マグロやタコ、しめ鯖、アジなど基本的な刺身は一通り揃っています。盛り付けはこの通り、食用菊や穂紫蘇で飾り付けた丁寧なもの。

肉豆腐(680円)

筆者のイチオシは肉豆腐です。二人でシェアしてちょうどいい量で、居酒屋の小鉢というよりは鍋に近いです。ほどよく出汁が染みたしっかりした味の豆腐と、甘く仕上げた具材がどれもお酒と好相性。提供は意外と早いので、一人ならば、まずは肉豆腐と赤星を頼んではじめたいところ。

レモンサワー(540円)

コの字カウンターとテーブルが並ぶ店内は、天井は低く、至る所がガムテープで補修されている、なんとも年季のはいった空間。飴色一色の空間で、時折、頭上を走る列車の振動が伝わってきます。こういう場所が不思議と心地よく感じるものです。

赤星のあとは、のんびりレモンサワーを。

ここのレモンサワーはハイサワーの瓶なので、半分残しておけばナカ焼酎追加で二杯楽しめます。

遅い時間になるほど混んでくる印象。接待を終えて一息つきにくる営業さんや、飲食店関係者、近隣の会社のベテランさんたちが部下に内緒の場所として利用しているような、そんな慣れたなお客さんたちでいっぱいになってきました。

こういう場所もまた、東京らしいスポットだと思います。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名日の基
住所東京都千代田区有楽町2-4-4
営業時間17:00~24:00(日祝定休)
開業年1937年(ガード下での事業は1946年から)