溝の口駅前には、奇跡とも言えるバラック建築の路地が残っています。『かとりや』は、この地で約60年続く老舗。つくられたレトロではない、本物の昭和酒場がそこにはあります。定番のやきとりは1本100円~。辛味噌・辛子をグイッと塗りつけて頬張れば、サッポロラガーが進むこと間違いなし。
目次
飲兵衛の笑い声と南武線をBGMに
神奈川県川崎市・溝の口。JR南武線と東急田園都市線が交差し、いくつものバス路線が集結する交通の要衝です。都心や川崎、町田へアクセスの良さから宅地化が急速に進行しました。駅前広場は東京圏のターミナルらしい立派なつくりですが、一本路地を入れば、そこには昭和の飲み屋街が残っています。
南武線の線路際にある「溝の口西口商店街」はとくに濃厚な雰囲気です。まるで映画のセットのようなトタン屋根のアーケードには、いくつもの商店や飲食店が軒を連ねています。レールをきしませながら電車がギリギリの場所を行き交うような立地です。
ここで昭和38年から営業している焼鳥『かとりや』を今回はご紹介します。遠方から電車で飲みに来る人もいる地域の人気店です。
品書き
お酒
樽生ビールはサッポロ生ビール黒ラベル:中550円、大760円。瓶ビールはサッポロラガービール:大瓶710円。
サワー類は、ハイサワーハイッピーセット:530円、バイスサワーセット;500円、レモンサワー:450円など。甲類焼酎はキンミヤ焼酎:400円。日本酒は井田酒造(群馬県佐波郡玉村町)の湖月:340円。
差し込みで、ビタミンC+レモンサワー:470円、日本酒で宮崎本店(三重県四日市市)の宮の雪 純米にごり酒:560円。
料理
串焼きは、串5本セット:500円で、単品ならば120円。部位は、かしら、たん、はつ、しろ、ねぎまなど定番が一通り。加えて特製串焼きで、つくね:170円、牛大串:450円、ガツ醤油焼き3本:450円など。一品料理はかとりや漬け(ガツ酢漬け):400円、豆腐屋さんの厚揚げ:400円など。加えて、寒くなると煮込みが登場します。
差し込みで、しろねぎ:450円がオススメされています。
カウンターで煙を浴びて焼鳥を頬張る幸せ
サッポロラガービール大瓶(710円)
以前は店頭での立ち飲みも行っていましたが、現在は焼台を前にしたL字カウンターのみの着席型で営業しています。それでも値段は大きく変わっていません。ベテランの飲兵衛さんに混ざって、若いお客さんの姿が増えました。
そんな店内の雰囲気を軽く見渡したあとは、一杯目のビールをいただきます。店の看板にあるように、ビールは昔からサッポロビール。老舗に似合う赤星ことサッポロラガーがでてきます。それでは乾杯!
ささみ炙り3本(500円)
かとりやは定番の焼鳥が1本100円とリーズナブルで、それでいて食べごたえがある大きさです。品書きは串焼きをメインにしたシンプルなものですが、特製串という変わり種系はどれも試してほしいものばかり。例えば「ささみ炙り」は、鳥たたき好きにはたまらない逸品です。
醤油をたらしたネギとカラシを塗って頬張れば、鮮度抜群の鶏の旨さに思わず大きくうなずくはず。
しろねぎ(450円)
特製串の中でも、とくにお店かオススメしているのは、「しろねぎ」。常連さんが考案したメニューで、カリカリに焼いた豚のシロにねぎと生姜をたっぷり載せ、醤油をかけたもの。くどく感じがちなモツが、びっくりするほど爽快に楽しめます。
サッポロ生ビール黒ラベル(550円)
「瓶ビールもよいけれど、生ビールがきになる」という方へ。グラスはビールメーカーの公式ではありませんが、洗浄状態が完璧のグラスによく冷えた黒ラベルが注がれます。ガス圧はちょっぴり高め。
5本セット塩(500円)
定番の串もご紹介します。ハツ、カシラ、ナンコツ、レバー、シロ。辛味噌とカラシを気持ち多めにグリッとつけていただきます。結構量があるので、一人ならば5本一皿で十分なくらい。
5本セットタレ(500円)
鮮度のよいモツそのものの美味しさが楽しめる塩に対し、タレは店の歴史がつまったような濃厚でコク深い味わい。一般的な焼鳥のタレよりもさらに濃いめで、この通り串全体を飴色にコーティングしています。
電氣ブラン(400円)
ビールテイストのハイッピーや電氣ブラン、清酒は群馬の湖月など、ビール以外のお酒は個性的です。
南武線の振動を丸椅子から感じつつ、煙を浴びて大ぶりのもつ焼きを頬張るこの時間。なんともいえない非日常感が楽しめます。
ごちそうさま。
系列店
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | かとりや溝口店 |
住所 | 神奈川県川崎市高津区溝口2-7-13 |
営業時間 | 16:00~22:00(日祝定休) |
開業年 | 1963年 |
公式サイト | Instagramかとりや公式アカウント |