午後4時半、開店まで30分はあるのにすでに行列ができ始めている――。ここは大船で大人気の大衆酒場、創業から約半世紀の「鳥恵」。隣り合う鶏肉専門店の直営で看板料理はもちろん焼鳥なのですが、人気の理由は実は活魚にあり。
相模湾の活アジなどの鮮魚が揃う
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おもに相模湾などで朝に水揚げされた活魚が、その日のうちに運ばれ店の大きな生簀に移されます。定番のアジをはじめ、真鯛にシマアジ、地ダコなど、品揃えはその日の漁次第。とびきり美味しい魚介類に出会えれば、それは誰だって並びたくなるものです。
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はいるとすぐに水槽があり、元気に鯵が泳ぎ回っています。
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間口はコンパクトですが、お店は奥に長く、厨房(板場とドリ場)に向いたカウンターがずっと奥まで10m近く伸びています。
さらにその先は折れ曲がっていて、落ち着けるボックス席と二階には畳敷きの入れ込み座敷まで完備。それでも、世界が落ち着いていた頃はあっという間に満席になるほどの人気店でした。
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飛び込んでくる注文を手際よくこなしていくお店の皆さん。ビールや酎ハイも次々と注がれていきます。ビールサーバーはキリンで、酎ハイマルチサーバーはアサヒという取り合わせ。
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ささっと登場、樽生ビール。とにもかくにも、仕事終わりはやっぱりビールです。では乾杯。
鶏肉専門店なのに魚もある、品書きはバラエティ豊か
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以前とビールの銘柄が代わり、現在は樽生(490円以下税別)・瓶ともにキリンラガー(大びん620円)です。樽生ラガーは酒場ならではの美味しさ!
酎ハイ類は430円均一。日本酒はそのまま「日本酒(小380円)」とお燗酒のみの記載ですが、別メニューなどで出羽桜、立山、開運など(グラス500円~1,000円)があるので、和酒メインの方にもおすすめできます。
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さーて、気になる本日の品書き。水槽を泳ぐ鯵は当然「活造り」(690円)。大ぶりの地ダコを使ったお刺身は、透き通るほどに新鮮。常連さんは鯵よりタコか、やっぱり両方かという引き合い。
活と記載があるものがやはり気になります。アワビも1,000円未満と破格。足の早いキスやハゼ、メゴチを天ぷらで置いているのも、魚介全体の回転の良さを感じられます。
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定番メニューが主に焼鳥の部。鶏だけでなく豚モツもあり、1本単位で注文可能です。入ってすぐの調理場は板場ですが、店の奥に別スペースで焼鳥台があり、鶏料理専任の料理人さんが腕をふるっています。
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お通しは日によって刺身や煮魚、鶏など様々。この日は鶏手羽元の甘煮です。これが突き出しと侮るなかれ。見た目の想像の通りの味ですが、だからこそビールとの相性は抜群に良いです。
おすすめは鯵の活造り
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あっという間に生簀からすくって、あれよあれよと活造りになった鯵。青魚は新鮮さが大切ですから、活造りもよいですよね。
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比較的大きな鯵。もしもフライにするなら開きではなく三枚におろすようなサイズです。身は厚く脂もよく乗っています。こうなると、醤油はほんの風味づけ程度がいいですね。
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常連さんの注文に誘われるかたちで、こちらも梅干し酎ハイ(430円)を。
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ナンコツ(やげん)と若鶏が焼き上がりました。もともと鶏肉専門店ですし、店頭で販売される焼鳥などのお惣菜も人気ですから、こちらもちゃんと主役級。鶏料理の焼鳥だけでなく特製手羽餃子(530円)も大人気、飛ぶように売れていきます
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鯵活造りは、骨センベエで再登場。しっかり骨まで美味しくいただきます。
冬は鴨鍋も美味しい
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手作りメンチ、唐揚げ、鶏出汁でつくるスープ豆腐の「鳥恵豆腐」など、鶏料理もあれこれ食べてみたくなるものばかり。
ごちそうさま
若いカップルも、スーツ姿の一人飲みのベテランさんも、家族連れも、みんな思い思いに個々の時間を楽しみ、空間を共有することを楽しんでいるようにみえます。店員さんも元気な方ばかりで、飲んでいてパワーを貰えます。もちろん、みんな静かにしているのですけどね。
「また来たい!」
そう思わせる料理が二度目、三度目でも食べきれなさそうな店は、いい店です。
近くの酒場
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 鳥恵 |
住所 | 神奈川県鎌倉市大船1丁目19-13 |
営業時間 | 営業時間 17:00~22:30 定休日 日祝 (8月盆休み等 連休時は店へ確認) |