森下『はやふね食堂』60年続く老舗食堂で、サバ味噌煮とキリンラガー

森下『はやふね食堂』60年続く老舗食堂で、サバ味噌煮とキリンラガー

2022年10月19日

森下で約60年“めし処”を続けてきた『はやふね食堂』を訪ねます。品書きを一通り眺めつつ、まずはキリンラガーでホッと一息。さば味噌煮を肴にちびりと飲めば、食堂飲みならではの静かな幸せが感じられます。名物女将の下町的な接客も美味しさのポイント。老舗食堂で飲むのは楽しいです。

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ベテラン夫婦が守る老舗の暖簾に誘われて

戦後、多くの食堂や蕎麦屋、中華屋が誕生しました。復興に携わる人々の胃袋を支えてきたこれらの店は、外食ニーズの変化や後継ぎ問題などで、いま急激に店数を減らしつつあります。マニュアルだけの接客にはない人情あふれる食事処は、ある意味その街の個性。どうか長く続いてほしいです。

さて、今回は江東区森下にある早船(はやふね)食堂にやってきました。この界隈では貴重な、昔ながらの食堂の雰囲気を残す店です。

外観

建物は比較的新しく見えますが、入り口の引き戸や明り取りには木枠にすりガラスをはめこんだものが使われています。

内観

フロアの女将さんと厨房の大将が「いらっしゃい」と声をかけてくれます。個人の食堂としては広く、立派な熊手が角に掲げられています。席数はあっても、夜は満卓になるほど賑わいます。使い込んでいても清潔感は十分。

品書き

お酒

ビール(キリンラガー)大瓶:590円、小瓶:390円。日本酒(菊正宗)1合瓶:430円。

料理

まぐろブツ切:450円、ホタテ刺身:440円、塩さけ焼:320円、ぶり照やき:380円、さば味噌煮:290円、さば塩焼:290円、赤かれい煮:380円、天ぷら 小アジ野菜付合せ:300円、アジの干物:290円、たら子焼:250円~300円、豚の焼肉ロース:350円、マカロニサラダ:150円、肉じゃが芋煮:200円、里芋煮付:250円、牛モツ煮込:250円など。

老舗の食堂飲みには「癒やし」がある

キリンラガービール大瓶(590円)

「ビールをいただきます」と女将さんに伝えつつ冷蔵庫へ。ここでは瓶ビールと日本酒はセルフサービスなのです。「栓抜きはあった?ありがとね」と女将さん。

銘柄はキリンラガーのみ。渋い店に似合うビールです。それでは乾杯!

野菜入おから煮付(150円)

食堂で飲むときに、必ず頼みたくなる料理がいくつかあります。そのうちのひとつ、小鉢ならば「おから(卯の花)」です。野菜入りとわざわざ表記されている通り、ごぼうや人参、ネギがはいった具だくさんのおからです。これで150円は、小売店のお惣菜よりも安いですね。

さば味噌煮(290円)

主菜ならば、さば味噌煮を選びがちです。さば塩焼きもよいですが、味噌煮ですと味噌の種類などで味が異なり、店ごとの個性も楽しめます。

脂がのったサバを味醂と赤味噌で甘辛く煮込んだもの。染み具合が絶妙で、適度なトロトロ感がたまりません。味付けは働く人の食堂らしくしっかり濃い目。だからこそビールが進みます。

日本酒 菊正宗(430円)

案外、食堂のお酒は大手銘柄であることが多いです。今ではあまり見かけなくなった瓶詰めのお酒がでてくると嬉しくなります。180ml入るビアタンにすりきりで注いで、これをきゅっとひとくち。おかずをもう一品くらい欲しくなります。

いんげん胡麻和え(150円)

定食用の小皿をちょいちょいと頼めることが、食堂飲みならではの楽しみ。といっても、ここ『はやふね食堂』はそもそも定食がなく、各々自由に主菜や小鉢、味噌汁にごはんを組み合わせて注文しています。

女将さんと顔なじみの常連さん方がやってきて、店はあったかい雰囲気に包まれています。つぎに来たのは家族連れ。さらに若い夫婦。仕事帰りのスーツ姿の人もいます。気がつけばすべてのテーブルが埋まりました。

きゅっとコップのお酒を飲み干して、テーブルを空けたいと思います。

ごちそうさま。

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(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名はやふね食堂
住所東京都江東区森下3-3-3
営業時間11:00~14:00・17:30~21:00(日定休)
開業年1950年頃(食堂としては1960年代)