新庄『鳥舟』やきとりの街・最上の人気店で味わう、鶏たたきと千代寿

新庄『鳥舟』やきとりの街・最上の人気店で味わう、鶏たたきと千代寿

2022年6月12日

養鶏が盛んな新庄は古くから焼鳥店が多く、近年でも焼鳥屋の新店が誕生しています。今回は創業8年目になる『鳥舟』を訪ねます。まだ比較的新しいながらも地元では評判の一軒。パリっとした雰囲気の中で正統派の串焼きが楽しめます。地酒も豊富で、日本酒好きも必見です。

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山形新幹線の終点には、レトロな飲み屋街が広がる

超高層ビルの建設ラッシュが続く東京駅を出発した山形新幹線「つばさ」は、北関東の田園地帯を抜けて、福島から山間部の細い線路へと進路を変えます。入り組む板谷峠の線路をそろりそろりとよじ登り、やっとの思いで山形盆地へと出ると、再び快走し、県庁所在地・山形につきます。列車はさらに北へ進み、終着は新庄駅ここまで3時間30分。東海道新幹線なら、同じ時間で姫路くらいでしょうか。

牧歌的な雰囲気が漂う新庄駅を抜け、駅前を歩いてみます。

新庄市の人口は約3万3千人。新幹線の終点としては最も小さな街です。羽州街道の宿場町であり、新庄藩戸沢氏6万石が治めていました。駅周辺が街の中心で、駅前には小さいながら密度の濃い歓楽街が存在します。

駅から100メートルほど離れた場所には、戦後の引揚者らによってつくられたヤミ市のあけぼの町飲食店街があります。こちらにも老舗の店がいくつかありますが、今回は少し離れた若葉町の新店を目指します。

外観

店名は『鳥舟』。家族経営の焼き鳥屋で、2014年から営業しています。清潔感のあめ白い暖簾が静かにたなびいていました。

内観

豪雪地帯に指定された最上地方。酒場の入り口は厳重です。ですが店内は外の環境が嘘のように、暖かく居心地良く作られていることが多いです。鳥舟は入り口で靴を脱ぐ方式で、一度上がれば旅の疲れが癒やされるように感じます。

品書き

お酒

樽生ビールは山形ではかなり珍しいアサヒドライプレミアム豊穣:580円、瓶ビールはアサヒスーパードライ大瓶:650円。

ハイボール、サワー類は400円で、ブラックニッカハイボールトマトサワーセロリ&レモンなど。

一番飲まれているのは日本酒のようで、定番酒はお隣、秋田県の天寿酒造(由利本荘)がつくる天寿 1合:340円。そして天寿純米酒 1合:650円。

地酒

地酒の充実ぶりは、焼鳥酒場とは思えないほど。東北の銘柄を中心に、東北銘醸(酒田)初孫 生酛吟醸:350円、加藤嘉八郎酒造(鶴岡)大山 特別純米:380円など、手頃な価格で近隣のお酒が楽しめます。

料理

串物は、もつ焼き(レバー):160円、砂肝:160円、皮焼き:160円、はつ(心臓):170円、たたき(つくね):180円、ネック(せせり):170円、ぼん尻:170円、焼き鳥(ねぎま):200円、なんこつ:180円、手羽先:260円など。

逸品料理は、刺身タコ頭ぶつ切り:430円、とり塩から揚げ:550円、冷奴薬味南蛮みそ:400円など。

一品料理で店のおすすめは、鳥舟特製厚揚げ(辛味噌):430円。

最上の焼鳥は『鶏』

アサヒドライプレミアム豊穣(580円)

なにはともあれ、ビールで始めたい。お隣、福島県にビール工場を構えるアサヒがつくるプレミアムビール、豊穣がでてきました。山形県下でも取り扱う店は僅かな、とてもめずらしい銘柄です。それでは乾杯!

お通しは鶏皮煮込み

湯沢、横手と秋田県方面に北上すると、煮込みや焼鳥の肉は鶏ではなく豚モツということが多いです。近いエリアでも、新庄は鶏モツなのが興味深いですね。お通しは甘く煮込まれた鶏皮です。味付けがよく、これだけでもリピートしたくなるほど。

もつ焼き(160円)

看板料理はもつ焼き。といっても、新庄のもつ焼きは鶏レバーのこと。しっかり火が通っていても弾力があり、噛むほどに旨味が広がります。

手羽先(260円)

東北産の鶏を使っているそうで、身はきゅっと引き締まっています。その旨さを楽しむならば、骨まわりのジューシーさと歯ごたえを同時に味わえる手羽先はいかがでしょう。

千代寿虎屋 千代寿 大虎 大辛口純米

あわせるお酒は、山形県寒河江の地酒。飲み心地が軽く、焼鳥の脂を心地よく流してくれる一杯です。それでいて余韻は長く、次の串に手が伸びます。

たたき(180円)と砂肝(160円)

「たたき」はつくねのこと。自家製で棒状なるよう串に巻き付けたもの。食感が豊かで、味に奥行きがあります。炭火ではありませんが、鶏の美味しさが引き出されたいい焼き具合です。

創業時より継ぎ足し育ててきているというタレが美味しいですが、大ぶりの砂肝の塩味もお酒とよく合います。

飲んでいる間も、次々と地元の家族連れや仕事帰りの人々が訪れて、店内は満卓近い賑わいとなりました。けして人口は多くありませんが、新庄の夜、焼き鳥屋の賑わいはなかなかのものです。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名鳥舟
住所山形県新庄市若葉町14-4
営業時間17:15~22:30(日祝定休)
開業年2014年