新津「鳥久」鉄道の街で昭和51年創業、名物・鶏の半身からあげが絶品

新津「鳥久」鉄道の街で昭和51年創業、名物・鶏の半身からあげが絶品

2021年9月22日

鉄道の街・新津のソウルフードのひとつと名高い塩カレー味の「若鳥唐揚」。提供する酒場は昭和51年創業の「鳥久」です。店内に漂うカレーの香りに誘われて大樽キリンラガーの中生を飲み干した頃、巨大な鶏の半身が運ばれてきます。

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居酒屋は、鉄道のまち・新津を動かす動力源

鉄道で長岡から50分、新潟からは20分。会津若松や新発田からも線路が繋がる鉄道の要衝、新潟市・新津(2005年まで新津市)。

江戸時代は、会津街道、羽越街道が交わる街道の街。明治以降は、現在に至るまで鉄道のまちとして栄えてきました。最盛期には、国鉄直営の病院や学園、数多の官舎を擁する巨大な国鉄一家の街だったと言われています。現在も、横須賀線など主に首都圏向けの電車の製造工場や、複数の鉄道運行に携わる職場があり、JRグループの関係者が多いそうです。(新津観光協会・JR新津駅掲示物等より)

今回ご紹介する「鳥久」も、そんな新津の鉄道に関係する酒場といえます。北海道・炭鉱の町のやきとり、北九州・製鉄の町の角打ちなど、街の産業と酒の場は切っても切り離せない関係です。

新津駅の東口側「新津本町」が中心街。旧新津市域の秋葉区は、人口約8万人。繁華街の規模は人口と比較してかなり広く立派です。

銀行や一般商店に混ざって、居酒屋やスナック、歴史ある焼肉店や食堂が非常に目立つところに、労働者の街として栄えてきた名残が感じられます。この町並み、はしご酒が楽しめることは間違いなし。

2015年には中小企業庁が選ぶ「がんばる商店街30選」に、新津商店街協同組合連合会が取り組む「にいつ鉄道商店街」が選ばています。

駅から徒歩5分、鳥久

駅前通り、その名も「新津停車場線」を5分ほど歩くと、目的の店「鳥久」です。店先にはかすかにカレーの香り。今日も元気に営業中です。

入り口がふたつあり、右はおみやげの窓口、左側が居酒屋の入り口です。口開けから飲んでいる間も、ひっきりなしに予約の電話と持ち帰り客の出入りが続いていました。

笑顔が素敵な優しい二代目ご夫婦が二人で切り盛りされています。「いらっしゃい、お好きな席にどうぞ」

厨房に向いたカウンター席と、対面には4人テーブルが並ぶ畳敷きの小上がり。20席ほどのコンパクトなお店です。

ご主人は鉄道好きで、スワローズの大ファン。店内には写真やグッズが多数飾られています。鉄道会社の企業カレンダーの多さは、田端の鉄道マン御用達酒場にも負けていません。

揚げ物の香りに誘われて、キリンラガー

カレー風味の唐揚げの唐揚げの香りに包まれた店内、ビールを飲まないのはもはや修行になってしまいます。とにもかくにも、生ビール(大樽キリンラガー・550円)で乾杯です。

お通しは日替わりです。この日はきゅうりともずくの酢の物。

品書き

飲み物

大樽(生ビール)がキリンラガーだとテンション上がりませんか。瓶ビールはキリンラガー(RL大びん660円)とアサヒスーパードライ(大びん660円)。常連さんたちはやはり日本酒をメインにしている様子。金鵄盃酒造がつくる越後杜氏、大徳利(660円)。サワー類(トマトサワーなど)は430円均一。

メルシャンが推している、赤ハイ(450円)。

料理

これだけシンプルだと、「さすが名物ある老舗」と思いませんか。一番人気は、半身からあげ(770円)、ほかに手羽先からあげ(500円)。揚げ物はご主人の担当です。

焼鳥は女将さんの仕事で、(鶏正肉と鶏レバー・130円)、(鶏皮)、ハツ砂肝(各110円)、つくね(タレ・90円)、ナンコツ(130円)。

焼けるまでのおつまみには、つけもの盛合わせ(500円)、とうふサラダ(500円)、味付け玉子(180円)など。

ドドーンと登場、迫力ある半身揚げ

つけもの盛合わせ(500円)と半身からあげ(770円)

空腹ならば、一人で食べ切れる量。店を知る人のそんな話を信じて、半身からあげ(770円)を注文。

注文を受けるとご主人は、その都度、新鮮な鶏の半身に塩とカレー粉、コショウをまな板の上で馴染ませるのように擦り込んでいきます。それから15分ほど時間をかけてじっくりと揚げて出来上がり。

若鶏とはいえ、かなりのボリュームです。小さな低反発枕くらいあって、そのインパクトに思わず笑ってしまうほど。全国にある名物半身揚げの中でもトップクラスの大きさでしょう。

箸休めのお漬物をはさみつつ、いざ挑んでみましょう。

そうそう、”味変”も楽しみの一つ。お店オリジナルラベルのガーリックパウダー七味唐辛子、PSポッカレモンをお好みで。

それにしても、すごいフォルム。食べ方を女将さんが教えてくれました。

まずは脚をはがすようにアルミホイルの部分をもって手前にひきます。手羽元を外せば、あとは箸で摘んでいけるとのこと。

皮が最高。パリパリでジューシー。そして、身も芯まで味が染みていて、どこをかぶりついても、大きくうなずきたくなる美味しさです。

うめサワー(430円)

ベテランの常連さんに習って、私もうめサワー(430円)を。キリン系の割材ではなく、ご当地ものでしょうか。甘さ控えめの酸っぱい味が揚げ物の脂をすっと流してくれます。からあげとの相性抜群。

むね肉を揚げるとぱさぱさになることがありますが、鳥久の半身からあげは、どこまでもジューシー。時間をかけて揚げていても深部への熱の伝わり具合が絶妙なのです。

カレーの風味もあいまって、お酒が進んで仕方がりません。箸休め的に、カレー味を吸った千切りキャベツをつまみつつ、豪快な一皿に向き合います。

トマトサワー(430円)

最初は食べられるか心配だった半身揚げは、その味としっとりとした食感、お酒との相性の良さから完食できました。なるほど、一人でも食べ切れるという常連さんの話は本当でした。

トマトサワーを飲みつつ、店の雰囲気にもう少し浸りながらテレビに映る野球中継を眺めて、ほどよいところでお会計を。

長く愛されてきている店には理由があります。街に根付いたカレー風味の鶏半身からあげは、新津に立ち寄る目的になる逸品です。

新潟・下越は60年ほど前から鶏半身揚げが郷土料理として根付いています。新潟を訪れた際はぜひ!

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名鳥久
住所新潟県新潟市秋葉区新津本町2-6-6
営業時間営業時間
[月・火・木~日]
17:00~21:00 (テイクアウトはL.O.20:00;土・日・祝は材料なくなり次第終了)
日曜営業
定休日
水曜
開業年1976年