新潟県村上市の温泉街、瀬波温泉。近くの漁港で水揚げされる日本海の魚介類を、手ごろな価格で楽しむことができる寿司店『寿し銭』を訪ねます。遠方からも寿司銭の味わいに魅了され、瀬波温泉を訪れるリピーターさんも多いそうです。
日本海を望む瀬波温泉へ
新潟駅から特急列車で約45分、新潟県北部の村上市にやってきました。この街はかつて村上藩の城下町として栄え、武家屋敷や町屋が今も残る中心街には、その歴史の名残が息づいています。
そして、村上と聞けば、酒と鮭というふたつの「サケ」が思い浮かびます。江戸時代より、鮭の本能・母川回帰を活かすために、城下を流れる三面川は鮭の産卵に適した環境に整備され、300年近く自然養殖が行われてきました。
塩引き鮭、鮭酒浸し、氷頭なます、いくら醤油漬けなど、村上の鮭料理には、地元の酒である大洋盛と〆張鶴を添えるのがぴったりです。
そんな村上の味を寿司で楽しむならば、日本海に面した温泉地「瀬波温泉」にある『寿し銭』がおすすめです。
明治時代、村上の瀬波海岸にて、石油を求めて試験採掘をしたところ、熱湯が噴出し、これを活かして温泉街「瀬波温泉」がつくられました。日本海に沈む夕日を眺める絶景を眺めて入る温泉は格別です。
伝統的な食事付きの温泉旅館が十数軒ありますが、いまは一人旅や出張利用者向けの素泊まりプランもあります。せっかく魚が美味しい村上に来たのですから、夕食は温泉旅館を飛び出し、老舗寿司店で晩酌というのはいかがでしょう。
外観
創業は昭和37年。60年続いてきた瀬波地域を代表する老舗寿司店です。堂々とした立派な店構えにハードルの高さを感じますが、ランチは握りや海鮮ちらしは1,000円ほど。夜も飲んで食べて5,000円と、寿司店としては良心価格です。
内観
大将と二代目が元気に迎えてくれました。
のどぐろ、カレイ、甘えび、まぐろ、ウニなど20品ほど寿司種が詰まったショーケースは、見ているだけでお酒が進みそうです。カウンター席のほか、奥には座敷もあります。
品書き
- 瓶ビール キリンラガー
- 生ビール キリン
- 日本酒 大洋盛・〆張鶴
- 生寿し:1,250円
- 上生寿し:3,130円
- 極み寿し:3,240円
- 天然車海老塩焼き
- ゲンゲ一夜干し
- のど黒一夜干し
しみじみ美味しい海の幸と大洋盛
温泉上がりの一杯は、やっぱりこれ!ジョッキもキンキンに冷やした生ビール。キリン生ビールで乾杯!
西バイ貝(お通し)
お通しは、これまで見たことがないほど大きな西バイ貝。新潟の特産品です。クサミは皆無、磯の甘さがふわっと広がり、複雑な旨味がビールを誘います。
大洋盛
米も酒も魚も、同じ山から注ぐ水で育っています。同じ水なのですから合わないはずがありません。
また、日頃から「地元の酒を飲む料理人がつくる料理は、自然とその土地の酒にあうような味になる」と考えている私としては、村上のように酒と魚と食がひとつの街にまとまり、ある程度独立している街は非常に魅力を感じます。
大洋盛は、1600年代創業の蔵など、市内の14の酒蔵が1945年に合併してできた酒蔵「大洋酒造」の看板銘柄。昨今のトレンドとは違い、一口目はやや物足りない味ですが、飲めば飲めほど美味しく感じるお酒です。
おまかせ握り盛り合わせ
南蛮えび(ホッコクアカエビ)、ヤリイカからはじまった、おまかせ盛り合わせ。豊洲市場では高価で取引されるような高級食材を含む、地魚握りは軽く食べて1.5千~3千円ほどです。
ふなべた、ヤナギカレイ、いくら、バイ貝、ブリ、ズワイガニなど。品揃えは季節や水揚げ次第でかわります。
ごちそうさま
二代目は東京の有名寿司店で修行の後、実家の寿司店を継ぐために戻ってきたそうです。確かな腕と、地物の寿司種の組み合わせは実に贅沢です。旅先だからこそ味わえるごちそうがそこにはありました。
お昼から夜まで休みなく営業しているため、早めにチェックインして温泉を楽しんだ後、昼間から気軽に一杯!というのも良さそうですね!
なお、周辺に飲食店は多くはないため、事前に問い合わせてから行くことをおすすめします。
村上駅前の居酒屋はこちら
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 寿し銭(すしせん) |
住所 | 新潟県村上市瀬波温泉2-3-19 |
営業時間 | 11:00~23:30 不定休 |
創業 | 1962年 |