生まぐろの水揚げ量日本一を誇る塩竈。塩釜魚市場は三陸沖でとれたまぐろをはじめ、かつお、さんま、かれい、きちじ(キンキ)など、遠洋から近海まで様々な魚種で賑わいます。今日はそんな塩竈から、塩釜港・塩釜港旅客ターミナルにほど近い、潮の音が聞こえる港町で創業60余年の老舗食堂「いな長」をご紹介します。
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港町の海鮮食堂
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仙台駅からJR仙石線で約30分、本塩釜駅です。お昼ごはんがてら、街の老舗で一杯飲もうとやってきました。
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中心街は塩竃湾の突端付近に広がっていて、長年港町として栄えてきた歴史が感じられます。
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日本製塩起源の地であり、それが塩竈の地名の由来と言われています。
漁業とそれに関連した笹かまぼこなどを製造する水産加工会社だけでなく、宮城の海運の一大拠点として、多くの貨物船もやってくる塩釜港。また、ここから浦戸諸島を繋ぐ塩竈市営汽船や、松島湾の遊覧船が発着しています。
美味しい魚がある場所に、美味しいお酒あり。全国的に知られる清酒「浦霞」、「阿部勘」はこの地で作られています。
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駅から徒歩7分。「活魚料理・お食事処いな長」は、お昼から飲める貴重な老舗です。仕出しや宴会向けのお店ですが、1階は食堂になっていて、地元の水産業に関わる人達を中心に常連さんたちで賑わっています。
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簡素なつくりは、いかにも港の食堂という佇まい。
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ほっこりする接客のお姉さんに迎えてもらい、まずはビール(アサヒスーパードライ・中びん580円・以下税込)でスタートです。乾杯!
お昼から飲むのは最高よね、と食事に来ていた地元のミセスから声をかけられました。
カレーに天ぷらもあるけど、しっかり飲める(品書き)
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樽生はなく、ビールは瓶のみ。お酒は地酒の浦霞(450円)、ノンアルコールビールもあります。
60年続くカレーライスはルーから作るこだわりの味。常連さんにはカツ丼が人気だと聞きます。ポークライスに、きになるハムサラダライスなど洋食もある、「昭和の食堂」らしい品揃え。
もちろん、宴会・仕出しがメインで、飛び込みではいってもお刺身や天ぷらなどの和食を肴に飲むこともできます。
寒い季節は宮城県産の真牡蠣をつかったカキフライが登場します。
天ぷらと刺身でお酒が進む
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料理は天ぷらやお刺身など、定食を切り離して単品でオーダー可能。それを組み合わせて、スペシャル昼酒セットの完成です。
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天ぷらは海老に地ものの穴子、ししとう、しいたけなど。揚げ具合も、衣の開き具合も絶妙です。
絶品、塩釜の生マグロ
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お刺身は生まぐろをはじめ、ほたてなど、お昼飲みのひとり用おつまみに丁度いいボリュームで3点。ねっとりとして表面がじんわり脂をにじませた生まぐろのトロがたまりません。
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差し込む日差しに照らされて、黄金色に輝くビールと今日のおつまみ。潮の香りがほのかに包まれる店内で、ちびりちびりと摘んで、飲んで。
浦霞でお昼酒
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これはもう、ビールだけで終わるはずがありません。冷酒(350ml・700円)の浦霞 本醸造をもらって、さらに飲み進めます。ランチタイムを過ぎても通しで営業しているので、忙しない感じもなく、食堂飲みらしいゆるい時間が流れています。
3.11では甚大な津波被害を受けた同店。悲しみを乗り越えて、今日も地元の人々の日常の中にあります。
心地よいひとときをありがとうございました。ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 割烹いな長 |
住所 | 宮城県塩竈市港町1-5-7 |
営業時間 | 営業時間 11:00~19:00 日曜営業 定休日 不定休 |
開業年 | 1960年頃 |