小岩「木村家」 再開発に合わせ移転オープン。80余年の暖簾をご夫婦で守る。

小岩「木村家」 再開発に合わせ移転オープン。80余年の暖簾をご夫婦で守る。

小岩は老舗の大衆酒場が元気な街。個性豊かな個人店が地元の方を集め、街を活気づけています。

今日ご紹介するお店は、木村家。戦前は浅草で店を構え、戦後の翌年、1946年(昭和21年)に再開、小岩で再スタート。以来、手頃な価格で飲める王道な大衆酒場として、半世紀以上地域の人々に愛されてきました。

小岩駅周辺は現在再開発が進行中。木村家も移転することが決定し、2020年5月、小岩駅近くのJR総武本線の高架下に暖簾を移しました。トレードマークの黄色い看板類はそのままなのが嬉しいです。

移転で駅からの距離は遠くなりましたが、手頃な価格と3代目ご夫婦が切り盛りするアットホームな雰囲気を求め、変わらず常連さんたちが早い時間から飲みに集っています。

 

DSC08065.jpg

(旧店舗時代 2013年筆者撮影)

 

現在、席数や営業時間で規模を縮小して営業中。新しい建物で換気も良好です。

 

木村家は移転以前から、ずっとサッポロビール推し。新しいカウンターに写っても、「木村家」で飲む赤い北極星ビールはよいものです。それでは乾杯!

 

樽生ビールはサッポロ黒ラベル(480円)。サッポロの営業さんもオススメする生ビールが美味しい一軒です。瓶ビールではサッポロラガーの他、キリン一番搾りも取り扱い。甲類は三楽、ウイスキーはホワイトホースなので、キリン派もぜひ。話がややそれましたが、ここの瓶ビール、大ビン580円は今どき良心的でしょう。

良心価格といえば、酎ハイ、レモンハイが280円というのも大変お値打ちです。

 

店先の電照看板や店内の短冊など、一部は旧店舗時代のものをそのまま使用。新しい店舗にも店の年輪が刻まれていきます。献立もほとんど昔のまま。

 

人気の一品、「もつきゅうりあえ」(330円)。ちょっぴりピリ辛の濃いめの味付けのモツときゅうりの相性は非常によく、その余韻でビールが進むこと間違いなし。

 

きゅうりもつや、もつのオイル焼き、ぐだくんの鍋ででてくる肉豆腐など個性的なモツ料理が評判です。もちろん、定番のもつ焼きもあります。

 

しっかり甘めに煮しめたタレは独特です。この甘さと豚モツの脂のコクとが相性ぴったり。5本盛りで450円、1本100円を切る価格設定は驚きです。

 

軽快なトークでお客さんを気遣いながら、つぎつぎと料理やお酒をつくっていくご夫婦。お二人の感じがとてもよく、ついついお酒が進んでしまいます。これは酎ハイ(280円)。

 

定番酒は、新潟県小千谷市の酒蔵・高の井酒造がつくる「高の井」。辛口のなかにもお米の甘さを感じるお酒です。1合300円。大徳利もあり、ひやとお燗が選べます。このほか、ホワイトボードにて売り切りで地酒が加わります。

 

日本酒を用意した理由はこちら、喫茶店のホットサンドに見えなくもない、レトロでおしゃれな「あげだし」(550円)。

 

醤油で和えたネギと鰹節を挟んだ一品。ボリュームがありますが、ほっとする味で気がつけばぺろりと食べてしまいます。

再開発が続く間、約5年の契約で現在の場所で続けられると3代目ご主人。元気な酒場に今日も粛々と地域の方が集い、静かに飲んでいきます。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

木村家
東京都江戸川区南小岩6-17-3
16:00~22:00
予算2,000円(日定休)