老舗のもつ焼き屋のカウンターで、じっくり飲んで食べて過ごす時間は素晴らしい。そう改めて感じさせてくれたお店が、JR新小岩駅から徒歩7分にある「おばこ」です。1958年(昭和33年)創業の老舗です。
一軒家の木造店舗で、もとは民家だったそうで、昨今、都心で見かけることの少なくなった昭和中期の家屋の雰囲気がそのまま残されています。
そんな店内で、変わらぬ甘ダレのシロをおつまみに、特製の焼酎ハイボールをきゅっと飲んでいきましょう。
新小岩駅はもともと南側のみ改札口があったそうで、そんな南口出口正面から一直線に伸びる「ルミエール商店街」が新小岩のシンボル的存在です。
全長420m、100軒以上が軒を並べる元気な商店街です。商店街から一本脇にはいれば、そこには下町ムードのある細い道を赤ちょうちんが照らしています。この街は、はしご酒の向かう先はよりどりみどり。
新進気鋭の立ち飲みやバル、大衆割烹にチェーン居酒屋と様々な選択肢がありますが、老舗でもつ焼きといえば、何軒かある中でも「おばこ」は外せない存在です。店名の「おばこ」は、秋田弁の「おばこ娘」からで、2代目の女将さんは秋田のご出身です。
カウンター、テーブル、小上がりのつくり。さほど大きくはないのですが、天井が高くとゆったりとした雰囲気なのが心地よいです。古くとも手入れがされています。
燻され飴色に染まった空間。薫るもつ焼きの匂いに包まれて、思わず喉がなります。
分厚い一枚板のカウンターを愛でながら、ビアタンをキリンビールでトトトと満たします。では乾杯!
瓶ビールはキリンラガー(RL大瓶600円)、樽生は一番搾り(550円)、酎ハイ(350円)、ホッピー(430円)など。
お通しのないお店ですから、すぐ出るおつまみを2品ほど。おしんこの小(360円)と、煮込み(490円・写真は半分290円)を。
ここの煮込みは醤油味で甘さしっかり、肉じゃが風の味付けです。いいあんばいに煮込み汁を吸ったきつね色の豆腐といっしょに、モツを一口。うん、これです、これ。コクが強く主張のある味ですが、余韻が不思議とあとをひきます。
黒板メニューでは、オススメの燻し料理や、季節の野菜をつかった煮物やおひたしが並びます。新小岩は小松菜発祥の地、おひたしで頂きませんか。煮込みや小鉢料理は一人飲みに優しい盛り半分で頼めます。
蕎麦の丼よりも大きな巨大なお皿で出てきたのは、名物のひとつ・生野菜(写真は半分260円)。フルサイズだと、丼いっぱいにトマトやきゅうり、玉ねぎスライスでいっぱいになります。マヨネーズのほか、ドレッシングも選択可能。野菜不足のノンベエさんに嬉しい一品です。
カシラ、タン、ハツと赤身系を3種類。他になんこつ、しろ、がつ、こぶくろ、ればー、あぶら、ねぎ、しいたけ、ししとうと定番は計12種。あぶらはカシラの部位ではなくて、豚の小腸周辺。豚モツの鮮度の良さを感じるぷるぷるとした食感で人気です。串(130円均一)は1本から注文できます。
焼きの具合が絶妙で、肉汁が滲んでいます。赤身のモツはすべてねぎまになっていて、ここでも野菜摂取。飲んでつまんで野菜も食べられて、これで明日も健康です。
飲み物はぜひ酎ハイを。「おばこ」では、氷なし、色付きエキスなし。よく冷えていて、キリッとした口当たりです。
そのまま飲んでも美味しいですが、常連さんは追加でレモンをオーダーします。
甲類特有のわずかに甘く感じる味覚と、レモンエキスの香味が混ざり、これがスイスイと進んでしまうのです。自宅で似たようなものを飲むことでは感じられない美味しさ。空間全体が味を特別にしてくれます。
モツはどれも大ぶりですが、シロはとくに食べごたえを感じる部位です。濃厚で甘さ強めのタレにどっふり浸しています。厚いのにほどほどよ柔らかく、噛むほどに旨味が口に広がります。
カウンターの常連さんも、テーブル席で飲む地元の会社員グループも、皆さん各々にとても楽しそう。もちろん、伺った私も満喫しています。
今宵は、こんなカウンターで一献いかがですか。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
やきとり おばこ
03-3653-0852
東京都江戸川区松島4-33-6
17:00~22:00(木第3水定休)
予算2,000円