京都(京阪七条)「吉野」 路地裏のソースに誘われて、お昼からバクダンで酔う。

京都(京阪七条)「吉野」 路地裏のソースに誘われて、お昼からバクダンで酔う。

京都のグルメといえばおばんざいや京懐石などが一般的なイメージですが、いやいや、大衆的な料理も個性豊かで魅力的なものばかり。お好み焼きも、京都の日常食で欠かすことのできない土地の味です。

三十三間堂近く、裏路地で半世紀以上続く「吉野」は、京都のこってりお好み焼きで飲みたいときにオススメの一軒です。営業時間は11時から20時30分までと、お昼から通しで営業。メディアで紹介されることも多く、昼食時は噂を聞きつけた遠方からの人で賑わっていますが、ピークを過ぎた時間は地元の皆さんの憩いの酒飲み場となっています。

 

京都駅から塩小路通をまっすぐ東へ。三十三間堂のある蓮華王院南大門の手前を南へ。駅から徒歩10分ほど。

 

場所は非常にわかりにくく、本当に飲食店があるのか不安になるかもしれませんが、ここは地図とソースの香りをかぎ分ける鼻を頼って向かいましょう。

 

大きな調理用の鉄板とそれに向いたカウンター席。それと鉄板が埋め込まれた4人テーブルが数卓というコンパクトなお店。家族経営で、常連のお客さんも家族連れの姿があって、とても家庭的な雰囲気です。

ビールは、瓶、樽生ともにキリンビール(600円)。まずは樽生のキリンラガーで乾杯!

 

ホソ(小腸)やスジといったホルモンが具材になっているのは、関東ではあまりみないスタイル。古今東西、お好み焼きは地域色があっておもしろいですね。

 

お好み焼きを食べる前に、まずはホソ焼き(1,000円)でお昼酒をちびりと進めます。醤油味ながらウスターソースのようでもあるオリジナルブレンドで味付けされたホソに、玉ねぎ、もやし、最後にキャベツをあわせて炒めたもの。甘い特製タレが別にでてきて、これにつけて頬張ります。

 

ふんわりしていて、モチモチと噛んでいるといつまでも肉汁が溢れてきます。鉄板に置いておくとどんどんチリチリになっていくのですが、萎んだホソも旨味が強烈でいいものです。

 

さて、京都でお好み焼きとあわせるならば、やはり「バクダン」でしょう。吉野では酎ハイ赤(450円)と呼ばれています。「甘いの?甘くないの?」と聞かれますが、ノンベエは甘くないほうがよいかも。

バクダンとは、サントリーの赤玉ワインと焼酎をあわせ炭酸水かサイダーで割った飲み物で、京都ではメジャーな存在。割材にサイダーを使えば甘くなり、炭酸水ならば甘くなくなるというもの。といっても、赤玉ワインが甘さをもっていますので、軽く甘味を感じます。

吉野で使用している甲類焼酎は、京都の酒造会社・宝酒造がつくる甲類焼酎「純」の35度。なかなかのストロングなので、飲み過ぎにご用心を。

 

お好み焼き・スジ玉そば入り(大1,100円)の完成。女将さんが手際よく調理するお好み焼きは、まずはクレープ状の生地をつくり、そこに別で炒めた具材をあわせていきます。ベタ焼きと呼ばれる京都の作り方。

 

一部がパリっとしたそば(やや縮れた中太中華麺)が食感に個性を加えます。天かす、紅生姜、噛みごたえあるコリコリのスジ、千切りキャベツ、玉子が混ざりあいます。

テーブル据え置きでカレーのような粘度のどろっとしたソースが二種類あり、甘口と辛口の二種類。出来上がったお好み焼きに自分で好みの味に仕上げます。ソースはともに一般的なこげ茶色なのですが、辛口ソースはそんな見た目から想像ができないほど激辛。マヨネーズはありません。

青のり、そして最後に別注で九条ネギを載せてもらって完成です。

 

具材やソースのバランスが総じてよく、噛むほどに旨味がでるスジもお酒を進ませます。お好み焼きは炭水化物で主食ではありますが、同時にすばらしきお酒の肴でもあります。飲み過ぎ注意…と思いつつ、酎ハイ赤の相性が抜群によくて、結局何杯も飲んでしまうことになります。

 

鉄板の前にたつ女将さんや飲み物担当のお兄さんも、皆さんとても和やかな雰囲気。常連さんも楽しそうに飲んで食べているこの空間は、とても居心地が良いです。

観光客で賑わう京都の繁華街で飲むのも楽しいですが、こんな一面も知っておくと、京都はさらに魅力的です。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

お好み焼吉野
075-551-2026
京都府京都市東山区大和大路通り塩小路下ル上池田町546
11:00~21:00(日定休)
予算2,000円