祇園『山口大亭』昭和40年から続く大衆価格の飲み処、めし処。名物は鉄火めし

祇園の小路にある『山口大亭』は京都のとっておき。日本有数の高級飲食店が立ち並ぶこの一画で、「昔も今も変わらぬ味と値段」を掲げる良心価格の大衆酒場です。知る人ぞ知る名店。京都の”奥行き”を体験しませんか。

祇園さんのお膝元。人がぎりぎりすれ違える小路の先に名店あり

「Syupoを運営して10年。日本全国の飲み屋街・歓楽街を歩き、1万軒近い飲食店を訪ね歩いてきました」

そう自己紹介すると「一番好きな街は？」と尋ねられます。そのときは、いつも「京都」と答えています。生まれ故郷の東京は別として、やはり遠くで飲むならば京都が一番ワクワクします。観光名所の影で、実はものすごく豊かな酒場文化が息づいているのを気づいたからです。

個性的な京都の食、歴史的背景、大規模な再開発がほとんどなく400年以上前の天正の地割から大きく変わらない街の骨格など、その理由を挙げればきりがありません。

そうした”京都飲み”の奥深さを知るには、有名な酒場を巡るだけでなく、細い路地にダイブすることをおすすめします。京都は道が細ければ細いほど、おもしろい店に出会えます。

それは、世界的に有名な観光地のすぐそばに静かに暖簾を掲げています。八坂神社の階段から数十メートル、四条通と富永町通に挟まれた幅わずか1メートルほどの小道に位置するのが『山口大亭』です。京都ではまだ”若手の店”かもしれませんが、1965年に創業しました。祇園で飲み慣れた大先輩たちが守り続けてきたお店です。

外観

場所は、祇園。気軽に飛び込むには相当の覚悟と予算が必要なこの街にあって、『山口大亭』は驚くほど良心的な酒場です。

「祇園で安心してお食事できる店。昔も今も、変わらぬ味と値段。旅先でのお食事や、ご家族連れ、学生さん、女性同士も得気軽にお食事できます」の看板。その内容に偽りなし。小さな酒場ですが、入ってみましょう。

品書き

お酒

• アサヒ生ビール：600円
• 瓶ビール アサヒスーパードライ大瓶：750円
• 瓶ビール アサヒ黒生小瓶：500円
• 日本酒 伏見地酒名誉冠：450円
• 生酒小瓶（冷酒）：850円
• 酎ハイ・角ハイボール：各480円

料理

• 鯖きずし：700円
• たこわさ 薄造り：700円
• かつお造り・はまち造り・いか造り：各900円
• げそ塩焼き・照り焼き・バター焼き：各600円
• にしんと茄子の煮物：700円
• 自家製コロッケ：600円
• あじフライ：650円
• トンカツ：850円
• ぬか漬け：500円
• 手羽先焼き・大串焼き鳥：650円
• 豚角煮：780円
• 肉豆腐鍋：750円

• かやくめし：450円
• 鉄火めし：680円
• とろろめし：580円
• とり肝山椒煮：550円
• ポテトサラダ：500円
• へしこ・いなり焼き・中華風きゅうりピリ辛漬け・鳥皮せんべい：各500円
• だし巻き・辛口たらこ・とろろ・たんざく：各530円
• 扇形ソーセージ：480円
• 楽じゃが煮込みカレー味：600円
• はもと水菜の炊いたん：750円

おでん

おでん各種：150円～

飲み屋としても、めし屋としても使える

アサヒ生ビール（600円）

昭和40年から変わらず営業してきたという『山口大亭』。店内も老舗酒場の風格あり。お店の皆さんは忙しくされており、カウンターに並ぶ会社帰り風の人たちや、飲み慣れた一人客、二階座敷の宴会に次々料理を提供しています。祇園の小路ながら30代風のお客さんもいて、幅広い層に親しまれているようです。QR決済対応やSNS X（旧Twitter）での発信など、しっかりアップデートされています。

軽く緊張した心をほぐすように、一杯目はアサヒの生ビールをいただきました。それでは乾杯！

おでん（150円～）

メニューは、いわゆる「おばんざい」が中心で、きずしや鱧料理、にしん料理などで京都らしさもあります。ここの特長は、文字通り「めし処」でもあることで、食事メインでさくっとかやくめしを食べていく人もいました。

私も〆にと立ち寄っていますが、軽くおでんをつまみに飲もうと思います。日本酒は、いまは製造元がかわった伏見の「名誉冠」というのも、素敵じゃないですか。

鉄火めし（680円）

板料理の「鉄火めし」は、漬けまぐろを白米に載せた丼ぶりのこと。飲んだ後でもぺろりと食べられる魔法の逸品です。

ねっとりとした食感の良質なマグロが使われ、甘めの醤油漬けタレが後味を引き立てます。これでまたお酒が進む。※適量の範囲内で

ごちそうさま

料理の多くは持ち帰りに対応しています。シンプルながらお揚げの美味しさ、出汁のコクを楽しむ「かやくめし」をおみやげに。

山口大亭はもう一軒「山口大亭西店」という大変レトロな店構えの系列店がありましたが、2023年に惜しまれつつも閉店してしまいました。「好きな酒場は行けるうちに行く」が大事ですね。

（取材・文・撮影／塩見 なゆ）