清水五条「菊しん」 京都の日常にふれる、昔ながらの和食処で一献

清水五条「菊しん」 京都の日常にふれる、昔ながらの和食処で一献

観光開発が進む京都。飲食もトレンドにあったお店が次々と登場していますが、まだまだ、よく見てまわれば、大正・昭和の京都を感じられる和食処をみつけることができます。

今日ご紹介する清水の「菊しん」は、暮らす人々の息づかいを感じる庶民派の小料理屋です。ご夫婦で切り盛りされ、日中はうどんやお寿司を、夜はお酒をメインにしたお店で、古典的な京都の肴を楽しませてくれます。

 

清水道バス停下車(市営100系統・206系統など)。祇園からほど近く。清水寺へ向かう松原通り(清水道)に近く、日中は観光客で賑わい、修学旅行生の集団が行き交うようなエリアに接しています。ただ、東大路通りから1本入った小路にあることで、空気はがらっとかわります。

 

女将さんは包丁をにぎる花板のポジション。ご主人と阿吽の呼吸でつぎつぎ料理を揃えていきます。

座敷にあるテレビで夕方の情報番組が流れ、どこかのお寺さんの鐘の音が聞こえるような店内。カウンターは数名の常連さんの姿があります。お客さんは地域にお住まいの方がほとんど。なじみの酒飲み処として皆さん集まってきます。取材時の話では、近隣にゲストハウスが多いことから外国のお客さんもときどき訪ねてくるのだそう。

 

どうも、お世話になります。それでは、瓶ビール(キリンレギュラーラガー)で乾杯!

 

突き出しは枝豆。京都でビールのお供の大定番。ご存知、丹波の黒枝豆は、紫ずきんや夏ずきんの名で売られるブランド枝豆です。市中でも普段から食べられてるそうす。濃い味、甘味とコクのつよい枝豆でビールが進みます。

 

何をいただきましょう。甘鯛(ぐじ)塩焼きや貝類酢味噌など、魅力的な顔ぶれ。500円程度のリーズナブルなおつまみも多く、さっと手頃な価格で楽しむことも出来ます。

品書きには載っていない食材も多く、おまかせ料理(3,500円)でいろいろ出してもらうと満足度はより高いと思います。一人前から注文可能です。

 

京都は居酒屋でもお寿司を出すところは結構あるものです。こちらも箱寿司、棒寿司、そして江戸前にぎりとお寿司は充実した品揃え。

 

京都の一人飲み。あれこれ食べたいですから、3,500円のおまかせで。まずはお造り。

 

福井の甘海老を主役に、イカ、まぐろ、ホタテの盛り合わせ。とろみのある刺身醤油にちょんとつけて頬張れば、欲しくなるのは日本酒です。

 

お燗酒をひとつ。酒処でもある京都、土地の酒は土地の料理と好相性。

 

食べるペースにあわせて、ゆっくりと料理を用意してくれます。

ぶりの西京漬け焼き。濃厚な旨味が染み込んだ身から汁がしたたる美味しい一品。深い味わいにお酒が進みます。

 

日本海と瀬戸内海、ふたつの海の幸が集まる京都。夏を中心に、ハモは欠かせない存在です。さらっとしていて噛むほど旨味がにじみ出るハモ落とし。酢味噌か梅肉、皆さんはどちらが好みですか。

 

あわせるお酒は西条のお酒「賀茂鶴」。緑の瓶にはいった純米吟醸酒は、賀茂鶴を代表するお酒。芳醇な米の旨味が広がり香り豊かなお酒です。

 

ハモやエビをいれた贅沢な茶碗蒸し。上品な出汁の使い方なのに、しっかり旨味を感じスルスルと進み、そして日本酒が飲みたくなる味わい。

 

十分に楽しませてもらったつもりでいましたが、もうひとつ、メインがあります。イカ、エビにししとうの天ぷら。いやいや、大満足。

 

強肴として、京都らしい身欠きにしんとこうや豆腐の炊合せ。止め肴として、蟹身とタコの酢の物。これまたとても素敵な内容です。この価格ながら、日本料理の順に沿って様々な味を楽しませてくれました。

 

水菓子をいただき、大満足。ご夫婦や常連さんと話す、料理やお酒、京都の暮らしについてお話も楽しいお酒の肴です。

派手さはないかもしれません。ですが、京都の味をじっくりと、肩肘張ることなく楽しませてくれることが、なにより価値を感じます。京都を何度か飲み歩かれてきた方にぴったり。

京都市内北部から今の場所に移転してきて30余年。どっしりと構えたよいお店です。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

菊しん
075-561-6081
京都府京都市東山区大和大路通四条下る4丁目小松町11-27
12:00~15:00・18:00~23:00(月定休)
予算4,000円