京都「橋本酒店」 一杯270円から、硬派角打ちの真髄を楽しむ銘店

京都「橋本酒店」 一杯270円から、硬派角打ちの真髄を楽しむ銘店

dsc07293

京都には実は結構角打ちが残っています。駅前や繁華街に近いお店がなにかと話題に上がりますが、今回はとびきり硬派なお店「橋本酒店」を紹介します。

京都鉄道博物館の開業で話題になった梅小路公園をこえて更に七条通りを西に進んだところ、御前通の交差点の角に位置する酒屋です。京都中央郵便局の裏にも角打ちが一軒ありますので、京都角打ちツアー(ニーズが有るかは別として)をするならばぜひセットで覗いてみて欲しいところ。

徒歩では少しありますが、京都市営バスのメインルートにあたり、数分間隔で205系統・208系統(定番コースをまわる循環路線)が走っているため、なかなかの好アクセスです。

バス停から交差点をみれば、ご覧の通り月桂冠とキリンの文字がかすかに残る渋さ溢れる姿がわかります。

 

dsc07304

大変長い間続くお酒屋。古き良き酒場の佇まいは、なによりのお酒の摘みになります。店先では梅干しや玉子と並んでお惣菜も売られており、これをそのままの価格で店内でつまみとしていただくことが可能。

 

dsc07296

店先は普通の酒屋ですが、奥の方から笑い声が聞こえてきます。朝9時台が一番お客さんが多く、夕方過ぎればみんな出来上がっていると噂の常連さんたち。程よくメートルがあがって皆さん楽しそう。

初めてだと躊躇してしまう雰囲気ではありますが、皆さんとても良い人でご主人も優しく、ちょっとの勇気さえあればあっという間に、自分自身も角打ちの風景のひとつとして染まれるに違いない。

350円からの日本酒の200ml売りは、いわゆる「もぎり」という飲み方。その他、缶ビールや酎ハイも店内で購入しそのまま飲んでいけます。

味わいのある店先のファサードには京都伏見の定番・月桂冠の文字がありますが、店内では扱っていない。

 

dsc07295

さらに言えば、キリンビールと書かれていますが生ビール(360円)はアサヒスーパードライ。冬でもそこそこ売れるという生ビール。角打ちで生を扱うお店は、東京ではめったにありませんが、実は京都ではあたりまえ。

せっかくなので、まずは生ビールで乾杯を。8人ほどでいっぱいになるカウンターは、取材時の平日15時なのに満員。「お姉さん、ここどうぞ」と店主が常連さんをうまく動かして入れてくれます。

 

dsc07300

ビールをぐっと飲み干したら、次はぜひとも日本酒にしましょう。

京都の酒販店ではだいたい灘や伏見の顔ぶれになりますが、こちらは店主の好みから辛口の新潟が充実。真野鶴、朝日山、久保田。そのなかでパッと目立つ「花洛」の文字。これは唯一というわけではないですが、京都のお酒で伏見の招徳酒造がつくる地酒です。大塚真帆さんという女性杜氏の一本。

あわせるおつまみは、店先からパックをもってきて、じっくり進めましょう。一合ではなく200mlというのが飲兵衛にはたまらない。

 

dsc07301

定番のお酒は、焼酎はみんな大好き宝の25。日本酒はソニー創業者・盛田さんの実家「盛田酒造」のねのひです。愛知県常滑市のお酒がまさか京都の角打ちで定番扱いになっているとは、不思議。

 

dsc07303

ねのひは酒燗器に刺さっており、お燗酒として飲まれています。200ml270円、底冷えする京都の冬に、さささっと駆け付けてこれをぎゅっと飲んだら、観光地・京都とは違った風情が楽しめそうです。

 

dsc07298

間口は狭く、奥に長い。京都らしいつくりでお店で裏の倉庫が果てしなく伸びています。酒屋はもともと街の盟主が営む商売でしたが、そんな歴史背景が伝わってくるお店です。安く飲むだけが角打ちの魅力じゃない、街の酒文化のひとつとして、空間そのものがつまみになるお店がこれからもずっと続いて欲しいものです。

お昼から通しでやっていますし、土日も営業。ぜひ京都の昼酒に覗いてみてください。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

橋本酒店
075-313-3836
京都府京都市下京区西七条南中野町48(御前七条)
9:30~18:30(毎月2のつく日が定休)
予算1,300円