京都は100年を超えてご商売をされているお店が一千軒以上あります。そこには、時代をこえて愛されてきた伝統の食事や芸術品があり、悠久の文化にふれることができます。
一世紀をこえて愛される寿司の店「いづ重」もそんな一軒です。江戸の握り寿司ではなく、鯖寿司や箱寿司、鱧寿司、蒸し寿司といった独特な「京寿司」を楽しむことができるお店です。
祇園さんの名で親しまれている八坂神社。全国に3千ある祇園神社の総本社で、1,300年以上むかしからこの地に鎮座しています。
いづ重はそんな祇園さんに面した交差点の角に建つお店。明治期に寿司の「いづう」から独立し、1948年からは現在の場所に暖簾を掲げています。
最寄り駅は京阪電車の祇園四条駅。または、JR京都駅から祇園・平安神宮方面を結ぶ京都市営バスの利用が便利。お店の向かいにバスが着きます。
鯖姿寿司などの持ち帰りの売り場の奥が客席です。趣のあるつくりは、これから食べるお寿司への期待を高めてくれます。
その前に、まずはビールから。樽生のサッポロ黒ラベル(生ビール中648円)と瓶ビールで黒ラベル(大ビン702円)とヱビスビールを置いています。日本酒は白鹿(598円)です。
それでは乾杯!
いづ重は京寿司が勢揃い。人気の鯖姿寿司(2,538円)やぐぢ姿寿司(4,644円)。巻寿司(972円)、いなり寿司(750円)、上箱寿司(1,836円)など。
そして、ひな祭りの頃まで食べられる、冬の京都のごちそう「蒸し寿司」(約2,000円)がいづ重の逸品です。
蓋をあけると湯気とともに、ふわっとお米の美味しい香りが広がります。輪島塗りの重箱の中には、ホオノキをつかったせいろが仕込まれていて、錦糸卵の黄色と海老の朱色のコントラストがとても華やかです。
焼き穴子、焼きはも、いか煮、椎茸などが具材で、酢飯といっしょに蒸気で一気に蒸し上げて完成。きくらげ、青豆のアクセントも心地よいです。
少しずつ、箸の先でつまみつつ、ビール、そして日本酒をすっと口に含む時間。京都のお昼酒はこの感じがたまらないのです。
白鹿のお燗酒。湯煎でつけた燗酒は冷めにくく、少しずつおちょこに入れて、きゅっとひとくち。
小浜・敦賀・福井の海の幸に仕事ほ施し、お座敷を引き立てるものにする。京寿司はとても美しいです。
代表格といえば、やはり鯖寿司。いづ重では、お酒のおつまみ感覚で鯖とぐぢを少しずつつまめる盛り合わせがあります。(約3,000円)
甘鯛のことを、京都や若狭湾周辺では「ぐぢ(ぐじ)」と呼んでいます。上品な甘さがとろろ昆布でより引き立ちます。
鯖も日本海から。鯖街道ができるくらい、昔から京都で親しまれてきた食材。鯖のしっとりとした脂が口の中に入れた瞬間溶け出して、ご飯を包み込んでいきます。その余韻には、お燗酒をあわせずにはいられません。
京都のお昼は、京寿司とお酒を楽しみませんか。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
いづ重
075-561-0019
京都府京都市東山区祇園町北側292-1
10:30~19:00(水定休)
予算3,000円