枕崎「まんぼう」 枕崎港の前。カツオに代表される地魚で盃を進める

枕崎「まんぼう」 枕崎港の前。カツオに代表される地魚で盃を進める

日本有数のカツオ水揚げを誇る枕崎。それだけでなく陸揚げ量全国第3位を誇るアジ類や、イワシやサバなどの近海もの、グレにタイといった磯の魚、はたまたナミクダヒゲエビなどの珍しい魚介類も豊富で、魚喰い(くい)ならば一度は訪れたいあこがれの場所です。

そんな枕崎には漁師町らしい魚で飲ませてくれる居酒屋が多数あります。枕崎港に隣接する「酒処まんぼう」は最も海に近い飲み屋さん。道を挟んだ向かい側は港の護岸という場所にあります。

 

枕崎は日本最南端のJR線終着駅がある町。鹿児島からJR指宿枕崎線が薩摩半島の東側をなぞるように伸び、ここ枕崎で線路は途切れます。列車の本数は多くはありませんが、鹿児島駅前から枕崎行の長距離路線バスも結んでいて、両方あわせれば十分に公共交通で到達可能です。

ちょっとしたロータリーもある立派な駅前に到着です。

 

駅から10分ほど、ただひたすら高低差の低いほうへ歩けば枕崎漁港につきます。港のそばには古い商店街や市場もあり、かつての繁栄を感じる地方の町ながら、歩くのは楽しくあっという間。港にはカツオのモニュメントや、鯉のぼりならぬ鰹のぼりが迎えてくれます。

 

「鰹と太陽の町」がキャッチフレーズの枕崎。漁港に沈む夕日は遅く、そして幻想的に美しいです。

 

海岸沿いには鰹節をつくる工場があり、町はほんのりと良い香りに包まれています。磯の素敵な眺めに癒やされつつ、そろそろ目指す「まんぼう」が開く時間です。

 

こちらが「まんぼう」。あまり飾りけのない佇まいながら、町内の常連さんだけでなく、鹿児島市内からわざわざ飲みに来る人もいるほどの一軒。

 

お店の向かい側は、そのまま漁港の眺め。漁協や市場が入る建物も目の前で、かもめの鳴き声と波音が静かに聞こえる素敵な雰囲気です。

 

カウンターを正面に、奥に小上がり、座敷があるつくり。地元にお住まいの皆さんが親しみある接客で迎えてくれます。

 

ビールはキリン(一番搾り530円)。キリンビール福岡工場醸造の一番搾りがやってきます。九州最南端の飲み屋街でいただくいつものビールは、同じように思えて格別の美味しさを感じます。それでは乾杯!

お通しはバテイラ(シッタカ)。九州ではおなじみの巻き貝です。爪楊枝でくるくると巻取りだしてちびりといただきます。焼酎があうと思っていましたが、ナショナルビールもいいじゃない。

 

酎ハイ類は400円から。ハイボールなど一通りありますが、この地ならやっぱり芋焼酎を飲みたいですね。

 

日本酒、焼酎のラインナップはこんなに充実しています。とくに焼酎はさすが。定番の徳利いりだけでにく、前割りした焼酎に熱を加えて温めるぢょかも用意されています。

 

さぁ、ぢょかを楽しむとして、何をおつまみにしましょう。日替わりの品書きはどれも土地の味。アワビのお造りに金目鯛など、「来て良かったー」と口に出したくなります。値段も手頃です。

 

定番メニューも地のもの揃い。タカエビ刺し(490円)や地ダコ刺し(500円)が魅力的。

 

〆の食事には嬉しいことに船人飯もあります。

 

なにはともあれ、まずはやはりカツオ!

極上カツオ4点盛り(一人なので量を調整してもらっています。カツオ刺しは600円から)で贅沢に食べ比べ。定番のタタキに、背の部分、腹の部分、そして腹皮の炙り刺し。水揚げされたばかり新鮮なもので、脂が光を反射し虹色にじんわり輝いています。

 

九州の甘い醤油で食べるカツオは、高知とはまた違った郷土の美味しさがあります。ぎゅっと引き締まり弾力がある身を口いっぱいに頬張り、ねっとりとした旨味と爽やかな酸味を楽しみます。

 

トロの部分はわさびをのせて。カツオの脂が醤油の表面にふわっと浮き広がります。

 

2合分入った黒ぢょか。銘柄は黒麹の芋焼酎「桜島」です。JR枕崎駅から3駅離れた薩摩塩屋駅近くにある知覧蒸溜所でつくる焼酎です。この界隈は日本一の黄金千貫で、枕崎の基幹産業になっています。土地の焼酎を、その地で水揚げた魚で飲む。同じ水系で育ったお酒と魚が合わないはずがありません。

 

焼酎を飲むならば、腹皮焼き(310円)も欠かせない肴です。じんわり遠火で焼いたカツオの腹の部分。刺身でも濃厚な味ですが、焼くことでさらに濃縮。ほどよい塩気が心地よく、焼酎の芋の旨味を引き立て、逆に焼酎の甘さがまたカツオの味を誘います。

 

500円前後の料理が揃います。定番のつけ揚げ(さつま揚げ)やカツオの酒盗だけでなく、手作りカニクリームコロッケなども美味しそう。

年間通じてカツオが食べられている南薩地域ですが、とくに美味しいと言われているのは春。南九州を訪れた際は、少し足を伸ばして日本最南端の終着駅がある町、枕崎でカツオ三昧を楽しまれてみてはいかがでしょう。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

魚処 まんぼう
0993-72-0114
鹿児島県枕崎市恵比須町198-3
17:30~22:00(火定休)
予算3,000円