川内「やまぐち」 つばめに乗って抜群に美味しい鯖を食べに行こう!

川内「やまぐち」 つばめに乗って抜群に美味しい鯖を食べに行こう!

海あり、山あり、銘酒あり。美酒美食の国、九州。本州とは異なる文化が息づき、何度訪ねても新たな発見が続く地です。今回は、九州新幹線「つばめ」に乗って鹿児島県は川内にやってきました。

ここは六代目百合や甑州といった芋焼酎で知られる甑島を含む薩摩川内市。人口約9万人、鹿児島県第四の街です。鹿児島中央駅からは九州新幹線で1駅。博多駅からも70分ほどでアクセスできます。

この川内で、とびきり美味しい鯖の刺身に出会いました。それはJR川内駅の駅前広場に面した居酒屋「やまぐち」にあります。

 

2011年の九州新幹線全線開業で九州西側ルートは本当に便利になりました。お昼に九州へ着き博多で飲んで、夕飯を八代や川内で食べて、宿は鹿児島なんていう旅程も思うがまま。

 

沿線には焼酎蔵がたくさんありますし、酒場街もまだまだ元気です。ということで、今回は川内で一泊のスケジュール。

 

川内駅の構内(改札外)にある物産店は、さつま揚げや芋料理、おつまみに並んで、駅ナカとは思えないほど立派な焼酎売り場があります。実は川内駅の駅長も焼酎に目がない人で、このあと一緒に飲み歩くこととなります。

 

川内駅長も御用達。駅からすぐの「やまぐち」へ。ご夫婦で営む駅前の老舗酒場です。

 

店内にはなんと大きな円形の生け簀があり、そこには鯖をはじめ鯛やヒラメなどが元気よく泳いでいます。

 

鯖は鮮度が命。西日本では高級品として扱われている首折れサバがまさにこれ。血を抜いて鮮度を保つために首を折っていたのがその由来と言われ、こうして活魚であっても首折れ鯖と呼ばれています。

 

板場に向いたカウンター席。正面には活魚以外でも旬の魚や山菜がずらりと並び、いかにも美味しいものを食べさせてくれそうな雰囲気です。テーブル席が数卓のつくりでコンパクト。地元にお住まいのファンの方が多く、満席になることもしばしば。

 

まずはピカピカのディスペンサーから注いでもらった、樽生のスーパードライ(550円)で乾杯!

 

「やまぐち」はなんといっても活魚。とくに鯖はぜひ食べるべき!とのオススメから、悩むことなく一尾をお刺身にしてもらうことに。鯖をある程度の期間生け簀で泳がせ、食べごろにすくい上げる。そのために回遊魚の鯖にあわせて丸い生け簀にしたとご主人。

 

そんなこだわりを聞いてしまえば、もう期待値は川内川を遡上するアユのごとし。

 

さて、鯖を刺身にしてもらっている間に品書きをみていきましょう。川内と水俣の間にある港町・阿久根で水揚げされた魚介類など、刺身各種が揃っています。品書きは定番のもののみが書かれていますので、選ぶ際はご主人とご相談を。

 

お昼時のランチ営業だけでなく、夜も定食(お昼と内容はことなります)があります。例えば列車の都合で腰を据えて飲めないときにでも、地元の焼酎1杯つけて夕飯なんていうことも可能です。

しっかり食べて飲んで楽しむ場合は、予算を3,000円から4,000円を考えておけばよいかと思います。

 

鯖刺しが完成しました。さぁ、美味しいですよ!と自慢げに笑みをこぼすご主人。お客さんに楽しんでもらうのがなにより嬉しいのだそう。

 

白銀に輝くぷりっぷりの肌、白と朱のコントラストが美しい身。きめ細かく、弾力があります。さっきまで生け簀で飛沫をたてていただけあって、眼は黒く透き通り、ヒレはピンとたっています。

 

鯖の刺身は久しぶり。高知でも鯖を刺身で食べますが、鹿児島・屋久島などでも古くから食べられている土地の味です。マサバと比べ脂が少ないものの、それを補完するように甘い九州醤油がぴしゃりと合います。

 

一尾まるまる使うので、量が多すぎるように最初は心配していました。ですが、脂控えめで爽やかな風味で、かつコシが強いため、お酒のつまみとしてひたすら箸が進み、これが焼酎を呼び込むのです。

 

そんな焼酎は、数ある地元の銘柄から、同じ薩摩川内市で大正元年に創業した山元酒造の「蔵の神」。お湯割りでちびちび、そしてだらだら。マイペースでのんびり飲むのが九州の飲み方と周囲の常連さんからも教わりました。

 

養殖に適した海岸線が多いこのあたりはブリの養殖も盛んです。天然の活魚で鯛や鯵に加え、ご主人の手札には近隣の美味しい魚が山ほどあるようです。味見にと頂いたブリ。ねっとりとした脂が、歯ごたえがあるのに次第に溶けていきます。

 

あぁ、もっとここに居たい、魚に惚れて定住する人の気持ちがわかった気がします。

 

ご主人はもとも会社づとめだったそうですが、魚の美味しさを広めたいとこの店をオープン。以来、川内駅前になくてはならない魚の美味しい店として、地元の魚喰いが集います。

九州新幹線の速達列車「みずほ」で川内を通過してはもったいない、停車する「つばめ」に乗って途中下車してでも尋ねるべき。やまぐちはそう感じさせる名店でした。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

やまぐち
0996-27-0910
鹿児島県薩摩川内市鳥追町7-1
17:00~23:00(日定休)
予算3,500円