カフェ&デリ伯爵邸は、個人店としては全国でも珍しい24時間営業の飲食店です。カフェ&デリとカタカナ言葉が入っているので、店名からだと「オシャレなお店?」と思うかもしれませんが、ここはどっしり構えた昭和レトロの老舗です。
喫茶店なのですが、定番の喫茶店メニューに加えエスニックに沖縄料理まであります。またお酒も種類豊富で、早朝から深夜まで、いつの時間帯もお酒目的の常連さんの姿があります。なんとカテゴライズするのが正解かわかりませんが、とにかく楽しい摩訶不思議なお店です。
一日25万人以上が乗車する全国でも有数のターミナル駅・大宮。新幹線が発着する西口側はマルイやそごうといった大型商業施設が立ち並ぶ都会的な風景なのに対し、東口は昔ながらの賑わいある商店街が広がっています。お昼から通しでやっている老舗酒場や、細い路地に個人経営の飲み屋が並ぶ通りもあって、毎度散策はワクワクします。
伯爵邸はそんな東口の商店街から一本入った小路で営業中です。24時間年中無休なので、まさしくいつでも”営業中”。
創業は1966年(昭和41年)。24時間営業をはじめたのは1973年(昭和48年)と、コンビニよりも先にスタートし、それ以来、現在までそのスタンスは変わっていません。
昔の喫茶店でみかける昭和レトロ的ゴージャス感。こういう雰囲気、大好きです。
曜日に関係なく、店内は日中から常に賑わっています。休日になると席待ちになることもある人気店です。”大宮の小路で24時間”と聞けば、少々不安に感じるかもしれませんが、店内は明るく清潔、お客さんも老若男女幅広く、パフェを食べている若い女性の横で、年配のお父さんがワインを飲んでいたりします。カオスといえばカオスなのですが、これがなかなかどうして、いい雰囲気なのです。
料理の種類は300以上あり、セットメニューも充実しています。名物のナポリタンと瓶ビールをあわせた「大宮ナポリタンセット」で、ビールランチなんて素敵でしょ。
喫茶店といえばアルコールは控えめ…という常識を完全に覆す、バーもびっくりなほどのアルコール類の品揃え。樽生はサッポロ黒ラベルとエーデルピルスの2種を用意。とくにエーデルピルスは「苦味が美味しいよね」と、ご主人のお気に入りだそう。
ボトルでハイネケンにコロナ、ヒューガルデン、シメイ、バドワイザー、ステラと世界から集められています。国産はオリオン、ヱビス、赤星、そしてキリンラガー。すべて650円均一。
ワインも20種類近くあり、マルティーニのボトルでオシャレな感じで乾杯もできてしまいます。
ウイスキーはデュワーズ、ホワイトホース、ジョニ黒、シーバス、ターキー、角など。カクテルも各種あるなか、恐ろしいのはロングアイランドアイスティーの存在です。喫茶店でアイスティーを飲んでいるつもりが、紅茶そっくりなウォッカなどのスピリッツベースのカクテルで、気づけば酔っぱらいになりかねません。
ご主人が沖縄出身なので、八重山など泡盛も充実しています。
Syupoでコーヒーメニューを紹介するのはもしかしたら初めてかもしれません。詳細は割愛しますが、コーヒーもリキュールも主力の伯爵邸ならではのカクテル「アイリッシュコーヒー」はぜひお試しあれ。
トーストからはじまり、スパゲティやオムライスというのは喫茶店なのでよくわかります。それに加えて、ハムカツにフィッシュ・アンド・チップスなどのおつまみ、突如ステーキがでてきたり、もう欲望のままに頼めるお酒のお供が充実。ここなら、沖縄の人々の定番の〆、ステーキを終電前に頬張れます。
外国生まれのイケメンなお兄さんがたくさんお手伝いをされていて、そんな皆さんが持ち込んだタイや中国、ネパールにスリランカなどのアジアンエスニックも豊富。何を頼もうか、迷い続けてしまいます。
取材は午後2時頃。アンニュイ気分を盛り上げるにはアフタヌーンティーセットもよいですが、やっぱりビールでしょう。黒ラベル、エーデルピルスを両方もらって、では乾杯!
品書きの表紙はドイツ・バイエルンのノイシュヴァンシュタイン城。ドイツの伝統的な製法でつくるエーデルピルスは、ホップこそチェコ・ザーツ産のものを使用しているものの、ドイツに由来がある銘柄なので、この並びはしっくりきますね。
そんな四方八方に向いたベクトルの中でも、人気の看板料理がありまして、それが大宮伯爵邸ナポリタン(850円)。さらに唐揚げ、フレンチトースト、スープとサラダ(サラダは日によって変わります。)を加えたお嬢様セット(1,150円)が最近なにかと話題になるすごいメニューです。
“お嬢様”の文字がゲシュタルト崩壊しそうなインパクト絶大、カロリーも絶大なセットです。
ナポリタンのボリュームもコンビニのそれの倍ほどあって、とにかく食べごたえ十分。そしてなにより、これが美味しいのです。
豚バラと玉ねぎ、ピーマンが入り、中太でやや柔らかいスパゲティ。喫茶店やバーで楽しむナポリタンの誘惑は、カロリーの心配も忘れさせてしまいそう。
極めつけの唐揚げとフレンチトースト。ここはあえて、ラムコークなど甘いカクテルとあわせて、ジャンキーな幸せに浸りたい。
大満足のあとは、マティーニで一呼吸。喫茶店に居酒屋、そして〆のバーまで、ここにいればすべてが完結しちゃいます。
アジア、ドイツ、沖縄に大宮。喫茶にバーにビールと様々な要素が飛び出してきて、記事にまとまりがないのですが、これこそ伯爵邸の魅力なのです。沖縄ご出身ならではのチャンプルーな楽しさをぜひ。
あぁ、書いていたらまた行きたくなりました。人情たっぷりの女将さんと、温和で笑顔いっぱいのご主人に迎えられたい!
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 伯爵邸 |
住所 | 埼玉県さいたま市大宮区宮町1-46 |
営業時間 | 営業時間 24時間営業 日曜営業 定休日 無年中休 |
開業時期 | 1975年 |