藤沢「晟久」 名酒場、板長そのままに再始動。名物のおから肴に千代菊を

藤沢「晟久」 名酒場、板長そのままに再始動。名物のおから肴に千代菊を

2018年2月14日

【2019.03再訪による追記】本稿と雰囲気が幾分変わっております。

藤沢駅前で1971年(昭和46年)創業の久昇という飲み屋は、あまたの酒場通を唸らせてきた名店です。それが女将さんの高齢化などの事情もあり、惜しまれつつも2017年秋に46年の歴史に幕を閉じました。

その久昇が店名を「晟久」(せいきゅう)に変え、当時の板長を中心に経営を変えて再始動。建物も名物料理もそのままに、今日も藤沢のノンベエを楽しませています。

 

藤沢へは東京から東海道線で50分ほど。昔は別荘地だったこともあり、どこか東京・横浜のベッドタウンの中でも穏やかな雰囲気です。また、江ノ島の玄関口としても知られています。

そして、住む、観光に加え、この街は飲み屋街が広く内容も充実していて、目指して飲みに行く価値はあります。

 

駅から飲み屋街を2分ほど。店先は「晟久」と店名が変わった以外はほとんど変化はありません。口開けと同時に地元のご隠居が続々と集い、18時を過ぎると酒場好きな夫婦や会社員グループがやってきます。老舗の延長とは言え、客層は老若男女広く、地元密着がうかがい知れます。

 

板長を中心に、昔からのお姉さんに加えて学生アルバイトで切り盛りしています。板長の前は言うまでもなく特等席です。ピカピカに磨き上げた厨房の中で次々と食材を酒の肴へ変えていく様子は、見ているだけでお酒が進みます。

 

お通しは日替わりで葉物が多い。今日はモロヘイヤとしめじの和えもの。生ビールは昔と変わらず、パーフェクトな状態が嬉しいサッポロ黒ラベルです。

乾杯!

 

刺身は日替わり。今日は車エビ、鯛が追加。海鮮は相模湾から水揚げされる地のものが中心です。たらの芽天、若筍煮など、飲み屋の黒板から季節を感じます。

 

定番の献立。割烹寄りのお店で、料理の顔ぶれも和食の料理人らしいものばかり。刺身は〆鯖、ホタテ、まぐろ、やりいか、カンパチ、そして相模湾のサザエと定番でも十分揃っています。

 

ビールは中ジョッキで550円、大びんは600円と決して高級ではありません。日本酒は定番の岐阜の千代菊が美味しく、大徳利でも600円です。

 

そして、なんといってもおから(400円)は昔からの名物で欠かせない肴です。これを目的に飲みに来た、と言うと腕を振るう板長に他も食べていってよ、と言われそうですが、それほどの逸品です。

 

具だくさんで桜えびやしいたけが味にコクと旨味を加えていて、いつも惣菜とは別もの。味は濃い目でビールも日本酒にもよく合います。

 

おからに夢中の間に焼いてもらったサザエ。つぼ焼きは塩の焦げた香りだけで、お猪口を乾かしてしまう魅惑の肴。

 

予め食べやすく包丁が入っているので、飲み屋のカウンターで浜小屋のごとく格闘しなくて大丈夫。汁をちゅっと口に含み、燗酒の千代菊をそっと口へ。

 

タラの芽の天ぷら。揚げるのはベテランのお姉さんの担当です。

 

古い飲み屋のカウンターで独り占めする天ぷらの美味しさ。

 

卵焼きは常連さんのお墨付き。隣の常連さんはもうこのカウンターに座って20年だそうで、魚もよいけれど、通うとこういった定番の料理が改めて食べたくなると話します。

 

職人タイプで強面の板長ですが、話せばとっても温和な方です。一人で飲みに行っても、この雰囲気の中ならばきっと最後までいい気分。大人数も楽しめますが、二人で徳利を注ぎ合うのがぴったりな飲み屋です。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

晟久
0466-23-5003
神奈川県藤沢市鵠沼橘1-17-2
16:00~22:00(日定休・時間/曜日は要確認)
予算3,000円