【移転】生麦「大番」 魚介商の街、元気な立ち飲みで最高の肴を

【移転】生麦「大番」 魚介商の街、元気な立ち飲みで最高の肴を

2017年5月7日
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2023年12月に移転しました。移転後の記事はこちら。

生麦『大衆酒場 大番』ビールの街の人気店が移転!マグロ中落ちを肴に麒麟で乾杯
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旧店舗時代の記事

江戸の頃から漁師町。旧東海道沿いにいまも多くの魚介商が立ち並ぶ生麦。朝の魚河岸通りは、海鮮卸の威勢のよい掛け声が飛び交っています。

キリンビール横浜工場をはじめ自動車工場や物流センターが立ち並ぶ沿岸部の玄関としての役割も担っていて、労働者の街といった一面もあります。魚河岸の街、労働者の街という要素が融合すれば、それはもちろん良い酒場が誕生するというもの。

 

普通列車しか停車しない生麦駅は、駅前にロータリーもなくとても庶民的なつくりです。頻繁に猛スピードで通過していく優等列車の合間に、ときどきやってくる4両編成の普通列車。京浜間の大動脈に取り残されたような雰囲気があり、それもまた味わいが感じられます。

キリンビール横浜工場は工場見学ができるため、その最寄駅である案内がかかれています。

 

どこか懐かしい駅前。2017年、長年工事を進めていた”きたせん”の愛称をもつ首都高神奈川7号線が開業し、高速の周辺だけは昭和の未来予想図のように輝いていますが、周辺の町並みは昭和でときが止まったまま。

 

地元のご隠居が立ち話をしていたり、のんびりした雰囲気の蕎麦屋からふんわりと出汁の香りが漂い、ランドセルを背負った小学生が友達と家路へと歩いている。衰退はしておらず、近代化もしていない、ここは昭和が原型のまま残っています。早い時間から暖簾を掲げる酒場も多く、古典的な店で飲むことが好きな人ならば、楽園のような街です。

 

新旧様々な居酒屋やバルがありますが、ほぼすべてがキリンビールを置いています。それはもちろん、キリンビール横浜工場の”門前町”だから。関東大震災で被災した横浜は山手の工場を引き継ぎ誕生した横浜工場は、山手時代から数えると日本最古のビール醸造場です。

現在も生麦にはキリンの研究開発の拠点が併設されるなど、同社にとって要の存在です。

 

そんな生麦で飲むならば、大衆酒場「大番」が関所です。

 

夕暮れが近づき、右も左も開店準備が整い店の人が扉を開け始める頃、大番にも明かりが灯る。そうして、待ってましたと言わんばかりに常連さんたちが流れ込み、まだ17時だというのにコの字は満員の賑わいになります。

 

労働者の癒やしの場所であり、魚河岸街の酒場でもある大番。店の特長は、そんな生麦の要素を濃縮したような品書きや客層です。150円からの料理の数々。決して品数は多くはないのですが、無駄のない”食べてみたい”がずらりと並びます。

いわし団子やホヤ、鮪ホホてりやきなど、眺めているだけでお酒が飲めそうでしょう。刺身類も季節感があり、非常に魅力的。いまの季節、アイナメは脂が乗っていてさぞかし美味しいことでしょう。

 

生樽も瓶ビールももちろんキリンです。生は一番搾りではなく、昔から変わらずラガーに拘っているそうです。常連さんもラガーファンが多い。瓶では、一番搾りのほか、キリンラガー(RL)とクラシックラガー(CL)も置いています。一つの店で、RLとCLを両方置くなんてびっくりですが、お客さんもそれぞれファンがついていて、「俺はクラシックラガーだな、この苦味がいい」といった具合。

大びん550円、生中500円、日本酒もリーズナブルで菊吹雪、沢の鶴、粋人が300円以下で飲ませてもらえます。

 

大番にきたら、鮪ナカオチを頼むべし。ナカオチが食べたくなったら大番に行くべし(笑)

350円とは思えないほどボリューム満点で、一人だとこれで大びんが1本も2本も余裕で空いてしまいます。まさに大盤振る舞い。

大番は鮪が看板料理で、刺身、ぶつ切り、ヌタにホホ焼きと部位も様々です。半分で注文することも出来ますが、初めての方はまずはこれから。

 

フライ系のインパクトもそれはすごい。安くて多くて美味しくて、素敵な三拍子。刺身にするような大きな鯵を開いたもで、普通なら三枚におろすようなものですが、一枚開きにかぶりつくのも楽しい。身が厚くホクホク、文句なしに美味しい。

ほかにも紹介したいところですが、季節によってメニューは大きく変わりますので、その日その日を楽しむのが一番です。

 

大番はもうすぐ創業50年を迎えますが、大番の誕生と時を同じくしてキリン・シーグラムという会社が誕生しました。そうしてキリン初のウィスキー<ロバート・ブラウン>が生まれます。このロバート・ブラウンは現在も大番で飲むことが出来ますので、ぜひお試しを。生麦の要素を凝縮した酒場らしく、キリンの歴史もここにはあります。

 

仕事終わりの一杯を大番で過ごすのが生きがいというお父さんや、定年退職後も奥様といっしょに通うご隠居さんなど、様々な人々の人生がここに詰まっています。朗らかで無駄のない動きがかっこいいご主人や、笑顔が素敵な女将さんなど、大番の魅力は料理だけでなく”ヒト”にあり。

たまには途中下車して生麦の味わいに浸ってみませんか。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

大番
045-521-6800
神奈川県横浜市鶴見区生麦3-6-5
17:00~22:00(日定休)
予算1,800円