【閉業】三鷹「鳥しげ」 ちょっと足を延ばして、おしどり夫婦の名酒場へ

【閉業】三鷹「鳥しげ」 ちょっと足を延ばして、おしどり夫婦の名酒場へ

2018年11月19日

新宿から中央線で18分。三鷹駅を降り立つと、それまでの杉並各駅や吉祥寺駅周辺のような混沌と躍動の空間とかわって、落ち着いた町並みと懐かしいムードの商店街が広がり、「ただいま」と言いたくなります。

中央線は各駅ごとにカラーが違う街が広がっているので、はしご酒がとても楽しいです。

三鷹駅周辺には老舗の酒場やもつ焼き店、最近はクラフトビールの注目店など目白押しですが、今回は穏やかに飲める店「鳥しげ」を目指します。

緑が多い駅周辺。昔ながらの平屋の駅舎の前に、次々やってくる路線バス。家路を急ぐというよりは、のんびり武蔵野の時間を楽しんでいるという雰囲気があります。

目指すお店は駅から商店街を歩くこと12分。昔懐かしいレトロな街灯に照らされ、商店街を散策していればあっという間です。この界隈、素敵な酒場が多いので、いずれまたご紹介したいです。

1981年(昭和56年)創業、鳥しげ。住宅街の境目に位置し、ここもまたのんびりとした時間が流れています。

おしどり夫婦が営む酒場には、地元のご隠居さんや仕事帰りの常連さんが一組、また一組とやってきます。ご主人は元プロボクサーで、引退後に焼き鳥を初めて約40年です。ネタケースには自慢のフレッシュな焼鳥が順番を待っています。

こんなお店にはラガー瓶が似合います。嬉しいことに加熱処理ビール、昭和の味を受け継ぐキリンクラシックラガーの大びん(600円)を置いていらっしゃいます。一本もらって、トトトと注いで、では乾杯!

焼鳥を待ちつつ、冷やしトマト(350円)を。カウンターの向かいで丁寧に焼かれる焼鳥を目と鼻で楽しみつつつまむトマトは、家で食べるのとは別格の美味しさがあります。

二種類のタレを使い分け、部位に合わせて味を変えた自慢のタレ焼き。一本から注文でき、120円と値段も良心的です。ご主人は静かな表情で職人気質の方なのですが、話し出すとこれが楽しい話題が次々でてくる明るい方。お話も隠し味となり、串を持つ手は止まりません。

おすすめは手羽(170円)、ご主人の丁寧な仕事を感じる一本です。カワは醤油強めでパリっとした味、つくねは食感楽しく肉の旨味がたっぷりつまっています。

標準のタレは甘く濃厚。むらなく絶妙な焼き具合なので、身は柔らかく、タレとバランスの良さを感じます。日本酒・神鷹、灘の男酒をお燗にしてきゅっと合わせれば進むこと間違いありません。

日替わりの黒板メニューには地鶏のたたきや自家製コロッケなどもあり、定番メニューの小鉢とあわせてサイドメニューも豊富です。ササミしそカツ(250円)を注文。鶏カツには爽やかなチューハイを合わせましょうか。

氷屋さんの氷を使った酎ハイは、博水社のハイサワーです。甘さわずかに酸味しっかり、元気になれる酎ハイです。

ご主人は福岡のご出身。故郷の味を食べてもらいたいと〆には博多ラーメンや、コシなしでお馴染みの博多うどんを用意されています。私はもう少し飲み続けたいので、〆では瓶ビールでふりだしに戻ります。

武蔵野のリズムで、美味しい肴とお酒でちびりと一献。足を延ばす価値ありです。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

鳥しげ
0422-55-4419
東京都武蔵野市西久保2-11-9
17:00~翌1:00(日定休)
予算2,400円