青森『井戸端』はもつ焼きが自慢。駅前で働く人たちに愛される酒場

JR青森駅前にある、50年以上続く老舗もつ焼き店『井戸端』は、今も昔も駅利用者で賑わう酒場です。海産物を名物にする店が多い中、同店は豚モツが看板料理です。お客さんはほとんどがスーツ姿の働く人で、その雰囲気は新橋のもつ焼き店と大きな違いはありません。

地元の人が仕事帰りに”ひっかける”店

青函連絡船が24時間休みなく運行されていた頃の青森はさぞかし賑やかだったことでしょう。対北海道の旅客需要が飛行機に流れ、鉄道も青函トンネルに移った現在の青森駅は、往時の名残をメモリアルシップなどに残すのみとなりました。

むしろ駅前にこそ最盛期の名残りを感じる場所があります。それは飲食店。朝から営業する食堂や、駅前の老舗酒場に青森駅が賑やかだった時代の残り香が感じられます。

JR青森駅前、市営バスやJRバスが発着する駅前ロータリーに面した場所に灯る赤ちょうちんの店もそのひとつ。もつ焼き酒場『井戸端』です。創業は東京オリンピックと同じ1964年。

海が近く冬季は吹雪く青森ですから、扉は重厚なものに付け替えられています。

扉をあけると、カウンターとテーブル席が広がり、スーツ姿の人たちがワイワイとお酒を楽しんでいました。働いた帰り道、帰宅前にもつ焼きとビールで乾杯というのは東京・新橋の皆さんと同じですね！ただし、列車の本数がさほど多くないので、「列車待ちを兼ねて…」というお客さんも多そうです。

賑やかな店内ですが、わずかな空席に滑り込みました。まずはチューハイで乾杯！

お新香はたくわんとキムチ。パリパリと摘んでいるともつ焼きが焼き上がったようです。

北半分を海に囲まれた青森県の料理は魚介類中心のイメージが強いですが、津軽ホルモンに代表されるように意外にも豚モツを食べる文化は根強いです。ここ『井戸端』の賑わいぶりをみてもそう感じられます。

とろみのある甘いタレをまとったもつ焼きはあと引く美味しさ。常連さんたちは卓上に置かれた味噌を皿にとり、そこへぐりっと串を当て、各々好みの味噌味にして頬張っています。

青森駅周辺で『井戸端』はかなりリーズナブルな一軒。近年の物価高で値上がりしたとはいえ、二千円程度でしっかり楽しめます。列車やバスの発車時刻まで時間がある際は覗いてみてはいかがでしょう。

（取材・文・撮影／塩見なゆ）