全国にはまだまだ古き良き横丁が残っています。とくに八戸市の横丁は規模が大きく、居酒屋の数も約200軒と、県庁所在地ではない地方都市の中でずば抜けて多いのが特長です。
昨今は官民一体となって、八戸は横丁で町おこしをおこなっています。その成果もあり、中心市街の活性化が進み、飲食店にも多くの人々が集まっています。Uターンで店をはじめた若きオーナーも居て、店のバリエーションは増加傾向。ビストロ、ワインバル、立ち飲みなんでもござれ。もちろん、いぶし銀の酒場も期待できます。
八戸の横丁でおすすめの一軒「山き」をご紹介しつつ、八戸の横丁の魅力をお伝えしたいと思います。
八戸は、内陸のJR八戸駅周辺ではなく、バスで15分ほど沿岸よりに進んだ大字六日町・大字三日町・大字長横町の界隈が中心地。市役所やさくら野百貨店に隣接して、巨大な飲み屋街がまるで迷路のように広がっています。
イメージキャラクターの「よっぱらいほやじ」は、すでにだいぶ酔っ払っているご様子。横丁周辺に多数設置されています。
昭和20年代の飲み屋路地をはじめ、細長い長屋風のビル内飲食街など、7つの横丁がありました。
そこに、さらに新幹線開通時に整備された「八戸屋台村 みろく横丁」がオープン。屋台村の優等生として知られ、その後、全国に屋台村横丁ができるキッカケとなりました。これで、現在、八戸には8つの横丁があります。
「酔っぱらいに愛を」をキャッチコピーにした、八戸の横丁文化を発信する皆さん(写真)。
かつては八戸藩第一家老の屋敷だった場所。昭和20年代には飲み屋横丁となり「れんさ街」と呼ばれています。昭和の残り香が漂う路地に、目指す「山き」はあります。
もともと寿司屋だった「山き」は、ご主人がお亡くなりになったあと、2005年より女将さんが暖簾を引き継ぎ、居酒屋となりました。
カウンター8席ほどの空間に、今日も地元ののんべえさんをはじめ、全国から「山き」のファンが集まります。
女将の圭子さんがお一人で切り盛り。カウンターにはてづくりの郷土料理が並びます。かすべ(えい)の煮付けなどが並ぶことも。
ビールは仙台でつくられたサッポロ生ビール黒ラベル。老舗のカウンターに脚付きグラスというのも素敵ですね。それでは乾杯!
大皿に並ぶ料理(500円~1,000円ほど)からいくつか選んで、あとはちびりとお酒を楽しみます。女将さんのほどよい距離感の接客と地元言葉の会話が心地よく、酔いもあって、まるで物語のワンシーンにいるような気分になります。
地元の方同士の八戸言葉は、もはや民謡です。
日本酒の品揃えがなかなかで、地元だから揃う如空(八戸酒類)や八仙(八戸酒造)の限定銘柄が豊富。定番の八鶴や純米 菊駒(五戸町 菊駒酒造)も手頃な値段で用意されています。
旅の醍醐味はひとそれぞれ。私はこの瞬間がなにより、旅に来てよかったと思えるときです。
魚種豊富な八戸港ですが、定番のマイワシは絶品。脂ののりがよくまるまると肥えています。
郷土料理の「生姜味噌おでん」。寒さの厳しい北東北ならではの、より温まる生姜入りの津軽味噌をかけています。素朴な美味しさがじんわりと心を解してくれます。
状況が許すならば、「旅にでたい、そして旅先で土地の味を楽しみたい」。そんなとき、八戸の横丁は優しく迎えてくれると思います。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
山き
0178-44-0711
青森県八戸市長横町18
18:30~23:00(日祝月定休)
予算2,500円