東北へやって来ました。ここは北海道への玄関口、本州最北端の都市、青森。はるか昔の歴史では、日本最古の土器がみつかり、縄文の時代から人々の暮らしがあった場所。江戸時代には蝦夷との船の往来に際し、青い森が目印になっていたことから、弘前藩によって「青森」と呼ばれるようになりました。
その後、北海道の開拓がはじまると本州最後の街として賑わい、鉄路の開通に伴い、函館との間を結んでいた船は、鉄道連絡船へと姿を変え、ますます北海道と本州をつなぐ重要拠点として発展していきました。青函トンネルの開通に伴い、下車する旅客は減ったものの本州最北の玄関口として栄え続けて今に至ります。
鉄路と航路の結束点、青森駅前で長年続いてきた老舗の食堂を紹介「おさない食堂」。駅から徒歩1分の場所にあり、アーケードの入り口にあるお店ですが、派手さはなく、いかにも昭和食堂といった佇まいです。
開店は朝7時。聞けば、交代勤務の鉄道関係者や、水揚げ後に飲みに来る漁師、そして函館へ向かって発着する特急列車のお客さんが早朝から食事に来ている場所なのだといいます。
朝8時。開店から少しした店内。先客はいらっしゃいませんが、店内にはそんな交通の要所の駅前食堂らしい堂々たる風格が感じられます。まずはビールから。旅先で朝から飲むビールは格別です。
それでは、きりっと苦く深い味わいのキリンクラシックラガーで乾杯です。
場所柄、食堂とはいえとにかく海鮮の充実度が高い。早朝からホヤや陸奥湾の刺身を食べられるのですが、価格が都心では考えられないほど安い。しかも、青森市の地酒の田酒ありますの誘いの文字がたまりません。
ラーメン、丼ぶり、とんかつまである昔ながらのありふれたメニューもあり、これがまた安い。さらに旅情を感じる定食も豊富で、飲み客だけでなく、誰にでも喜ばれる素敵な品揃えとなっています。
丼ぶりのしゃこちゃん丼というものがありますが、これは青函トンネル開通時のイメージキャラクターの「しゃこちゃん」からついた名前だそう。キャラはとっくになかったことになっていますが、老舗食堂では今も親しまれています。
夜までやっていますので、食事の合間にちょいと飲みに寄るならばこのメニュー。ホタテやいくらなど、どれも食べてみたくなります。どうですか、ホヤ塩辛できゅっと豊盃のぬる燗なんて。
お酒のメニューがこれ。ビールは樽生こそないものの、キリンクラシックラガーがあれば十分すぎるほど嬉しい。そして日本酒も青森の地酒のみ。
今回注文しましたのはこちら、「ほたて貝焼みそ」の定食。単品でもよいのですが、さすがに早朝からぐびぐび日本酒を飲むのも躊躇しまして、一応定食に。(のちに田酒を頼むんだのは言うまでもありません)
ホタテ味噌といえば、津軽海峡周辺の郷土料理で、ホタテの殻を器に味噌でつくるグラタンのような料理です。固めにつくりちびちびと味噌の舐めながら食べるものもありますが、「おさない」はつゆだくタイプ。味噌汁のようなつゆでホタテ、えのき、ウニなどを和えながら卵をふんわり広げたもの。ホタテのキモやウニが入り、とかした卵は濃厚な磯の風味。ホタテはとれたての活帆立で、大ぶりのものがざっくりサイコロ状に切られてごろごろと入っています。
日本酒とあわせて、ビールも合わせて、とにかくほっぺたが落ちる料理です。これを朝から食べられるだけで、「新幹線が開通してよかった」と思います。
一応定食なので、ごはん少なめでお味噌汁をつけて。けの汁という郷土の具だくさん汁もあり、しっかり飲むのであれば、それもぜひ試して欲しい。
ホタテのキモ、身、そしてウニ。これで日本酒が進まない、なんて人とは仲良くなれない気がします(笑)
海鮮丼や鰻などもあり、観光地的な食堂のように見えますが、私が飲んでいると”アケ番”の鉄道マンが飲みにやってきていましたし、その次に来たお客さんは地元のご隠居さんのよう。しっかりと土地に根付き、愛されている食堂ほどここちの良い空間はありません。
二階は居酒屋になっていて、夜からはここで飲むのも良いかもしれません。ですが、朝酒・昼酒を提唱する私は、やはり食堂の朝酒を推したい。
向かいには市場があり、地元陸奥湾や周辺でとれる海産物が山ほど並んでいます。有名観光地にいく旅もよいですが、飲食が大好きな皆さまでしたら、ぜひとも青森周辺で美味しい魚介類を堪能して欲しいです。
あいなめ、とげくり蟹、海峡サーモンにホヤ、ホタテ、サザエ。あげればきりがありません。海峡の街に飲みに行こうよ!
ごちそうさま。
この記事はあなたのお役に立てましたか?
この記事が少しでもあなたのお役に立てましたら、
ブログランキングへ応援ボタンからの投票を1日一回いただけると嬉しいです。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
お食事処おさない
017-722-6834
青森県青森市新町1-1-17
7:00~21:30(月定休)
予算2,000円