本日は青森にやってきています。北海道新幹線の開業で函館との距離感は縮まりましたが、地元の商店街の人は、新幹線が新青森駅経由で素通りで北海道へ行くようになったから、本州最北端、北海道の玄関口としての賑わいが減って寂しいと話しています。そうは言っても、やっぱり交通の要所で歴史もあるわけですから、やはり駅前には立派な飲み屋街が広がっています。天然の養殖場ともいえる立派な陸奥湾をかかえる青森には、美味しい肴がないはずありません。北海道へ渡るのもいいけれど、青森の酒場を素通りするのはもったいなさ過ぎます。
そんな青森の酒場街の雰囲気と海の幸を味わうならば、例えばここ「鎌蔵」もおすすめです。店構えからして、どうしてこうなった!というようななぞめいた雰囲気ですが、それは店内も同じ。港まで数百メートルの距離にあり、港町の風情を感じる酒場です。
名物マスターが一人で切り盛りする鎌蔵は、ホタテやホヤ、青森の港で水揚げされる海産物を手軽な値段で食べられる酒場です。食べ物がおいしいことはもちろんなのですが、このマスターが個性的。声が大きくちゃきちゃき動き、そして方言が凄い。一生懸命、標準語で話そうとしていらっしゃるのですが、それでも半分聞き取れるかどうか。ずっと話しかけてくれるのですが、翻訳すると「よく来たね、美味しいもの食べていって、うちは量が多いからね。お通しにポテトサラダがでるよ、あとは食べたいのを言ってね。」
ビールは東北限定の黒ラベルをもらい、まずは乾杯。東北ホップの青々しいホップの香りがすーっと鼻を抜けていくのが心地いい。
そして、ポテトサラダです。ソースをだーっとかけて食べていたら、「東京もソースかけるんだね」とマスター。いやいや、逆に青森がポテサラにソース文化だとは知りませんでした。それにしてもボリュームがあります。手作りで美味しいから、残さずがんばろう。
ホタテ、ホヤ、イカなどあるよ?他所で食べてきたならサンマはどうだい?
ということで、サンマ刺しを。まだ夏だと思っていましたが、北の方ではもうサンマが水揚げされる季節なのですね。脂がのってまるまると太っています。ちびちびとお醤油を付けて食べるのではなく、こっちではだーっとポン酢で食べるんだよ、とのこと。うんうん、日本酒が欲しくなります。田酒を冷でお願いしましょう。
寿司屋のような冷蔵ケースにはなぜかホタテと並んで林檎が冷やされています。こっちでは飲んだ後に林檎を食べれば二日酔い知らずなんだよと。へぇー、そうですか。まさに青森という食べ合わせです。
レモンハイ飲む?唐突なふりに、もちろんハイと答えました。ほんと、不思議な方なのですが、にこにこした笑顔で言われるとこっちも嬉しくなります。
小上がりでは地元の20代女子二人がホタテをつまみにビールを飲んでいます。渋いなぁ。チェーンではなくこういう地元酒場で女子会をするという、なんともほっこりする感じがあります。あとからやってきた二人は、近所のお役所の方だそう。地元の話で盛り上がります。次、どこどこの店がいいよ、電話しておいてあげようか。なんていう感じで、マスターを中心にみんなで和気あいあい。旅行パンフレットにはない、本当の地元交流が酒場にはあります。旅情を満喫、楽しい時間でした。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
鎌蔵
017-723-4696
青森県青森市安方1-11-9
17:00~翌1:00(不定休)
予算2,000円