五所川原「一休寿司」 創業55年。津軽半島の美味しい魚介に舌鼓。

五所川原「一休寿司」 創業55年。津軽半島の美味しい魚介に舌鼓。

今日は津軽半島の中央に位置する街、五所川原から、創業55年になる老舗寿司店「一休寿司」をご紹介します。

津軽半島は東に陸奥湾、北に津軽海峡、西に日本海と特徴のことなる3つの海に囲まれ、海産物に恵まれた地域です。また、津軽平野は米の生産が盛んで、津軽地方は日本酒づくりが盛んな地でもあります。

そんな肴と酒に恵まれた地があるまならば、飲みに行かないのはもったいない!ということで旅にでました。(取材時期:2019年秋)

 

東京から東北新幹線に乗り約3時間で新青森。そこからJR奥羽本線に乗車し、津軽地方の中心都市・弘前へ。さらに弘前駅からJR五能線に乗り換え林檎畑の中を揺られること40分。目的の五所川原駅に到着しました。

 

五所川原は津軽半島でも比較的大きな商業地で、交通の要衝にもなっています。五所川原駅からは、ストーブ列車で知られる本州最北の私鉄・津軽鉄道が伸び、十三湖方面を結んでいます。

 

かつては百貨店やアーケード街もあったという五所川原。駅前は広々としていて、往時の賑わいを知ることができます。五所川原は太宰治ゆかりの地であり、市内には関連施設もあります。また、五所川原市(旧・金木町)出身の演歌歌手、吉幾三氏のミュージアムも駅から徒歩数分の距離にあります。

 

観光情報はこれくらいにして、本来の目的、飲食店巡りへ。五所川原の飲食店街・歓楽街は人口に対してかなり大きく、割烹に中華に居酒屋に、そしてかなりの量のスナックが店を構えています。下北半島のむつ市田名部と同様に、青森の半島の町は歓楽街が非常に大きいです。

 

そんな飲み屋路地を抜けた先には岩木川。左に津軽富士の愛称で呼ばれる岩木山を眺める立派な河川敷があります。

あぁ、喉がかわいてきました。散策はこれくらいにして、目指す一休寿司へ向かいましょう。

 

寿司店も多い五所川原。ここ一休は貴重なお昼から夜まで通し営業をしているお店で、とくに旅行者は昼食時を逃しても利用できるのがありがたいです。

 

林業が盛んなこの地、地元木材をふんだんに使用した内装が心地よいです。

 

一枚板のカウンターで、まずは樽生ビール(サッポロヱビス・600円)でスタートです。それでは乾杯。

 

日本酒が充実していて、八戸の如空、弘前の豊盃、青森の田酒、弘前のじょっぱりなど。定番酒は小徳利で400円と手頃なので、今日はこちらで。

 

お寿司は1,000円から。地元の観光ガイドではばらちらしがオススメとあります。あまり聞き慣れない水物という料理がありますので、後ほど頼んでみましょうか。焼き物はほっきにほたて、その他いろいろ相談すれば出してくれるそうです。

 

まずは軽くおつまみで。津軽海峡の本まぐろ、鮮度抜群の陸奥湾のいわし、ひらめにホタテ貝柱。すべて地のもの揃いの嬉しい盛り合わせです。

 

大きくぷりっぷり、そしてねっとりとした旨味がじっくり感じられるホタテが絶品。

 

津軽の肴には、津軽のお酒を。定番酒は黒石にある造り酒屋、鳴海醸造店がつくる菊乃井。地元消費向けの上撰が味わえます。

 

東京の有名百貨店や地酒に力を入れる酒販店に並ぶ銘柄と違い、非常に素朴な味なのですが、だからこそ風土をより身近に感じられるような気がして、私は地元消費向け銘柄が好きです。菊乃井上撰(400円)をお燗にして。すっきりとした印象ながら、余韻がじんわり旨味を残します。

 

軽く日本酒のつまみにと、自家製の塩辛をいただきました。かなり濃厚な味で、さらに一味を気持ちふりかけています。旨味のかたまりのような小鉢、これだけで日本酒が進んでしまうというもの。

 

青森の名産品、ほっき焼き(800円)。握りこぶしより一回りは大きいような立派なほっき貝。軽く酒をふった以外は特別な味付けはなし。肉厚でもちもちの歯ごたえと磯の風味が心地よい一品です。

 

気になっていた水物を頼んでみました。赤貝(1,500円)。この地域では、昔からホヤや貝類を海水に近い塩水にひたして食べる「水物」という食べ方があるのだと大将。簡単に海藻などをあわせて盛り付ける非常にシンプルな料理です。素材そのもののよさがそのまま味になる食べ方は、この地ならではの食文化。旅の楽しさ、ここにあります。

 

まだ明るいというのに、すっかり本調子。黒石の中村亀吉酒造がつくる玉垂大吟醸。品書きにはなく、大将のお気に入りなのだとか。まろやかな米の甘さが優しく、口に含みじわじわと温度が上がるごとに感じられる深みのある味わい。決してしつこくなく、どちらかといえば辛口のお酒。これはなかなかよいものです。

 

ほっきと赤貝を満喫したところで、そろそろ握りを。「津軽の魚介類で」とだけお願いし、まずはイカから。

 

県産ぼたんえび。甘くコクのある味です。

 

一年を通じて底曳網などでとれる穴子。ほくほくに炙り、つめはごくわずかに。脂がのっています。

 

シメは大将のおすすめ、くじらの握り。とても柔らかく、赤身なのに口の温度でとけていくような感覚があります。

カウンターで大将と街のこと、魚のこと、お酒のことをのんびりと会話のやりとりをしながら、じっくり楽しむ寿司とお酒。心地よい時間のなかに、五所川原の魅力を街歩き以上に感じることができました。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

一休寿司
0173-35-4144
青森県五所川原市字本町50-8
11:00~22:00(木定休)
予算4,000円