人形町「京家」 割烹のカウンターが好きになる。街の歴史もおつまみです

人形町「京家」 割烹のカウンターが好きになる。街の歴史もおつまみです

2020年3月26日

宴席料理を手軽に楽しめる大衆割烹は括りとしては居酒屋になりますが、一般的な居酒屋よりもピシッとした雰囲気があります。板前さんを前にして料理の腕を楽しむカウンターは特等席。一人で割烹のカウンターを楽しめるようになれば飲み歩きはもっと楽しくなります。

今日ご紹介するお店は人形町で半世紀近く続く老舗「大衆割烹 京家」です。人形町周辺は料理屋や割烹が多く、歴史ある飲食店の密集地域。芳町花街として栄えた歴史を今に伝えています。

 

年代物の店構えながら隅々まで手入れがされていて、非常に気持ちが良いものです。暖簾は冬は藍色、夏は白にかけ替え季節を楽しむ昔ながらの習慣が残っています。

 

店内は正面の調理場に向いてカウンター席が配置され、周囲に4人テーブルが数卓。二階は座敷になっています。

 

生簀で泳ぐ鯵や、下ごしらえをされて出番を待つサク状の魚がずらりと並ぶショーケース。豊洲で日々仕入れてくるという鮮魚に目移りします。

 

ぴしっとした職人さんと丁寧な接客のスタッフの方に迎えられ、まずは樽生ビール(サッポロ黒ラベル 中580円)で乾杯!

 

瓶ビール(中580円)はアサヒスーパードライ、日本酒は定番が宝酒造の業務用限定銘柄「松竹梅豪快」(2合580円)、酎ハイ類は400円。

 

京家で頼むならば、やはり日本酒でしょう。久保田、八海山、〆張鶴、上善如水、朝日山と新潟のお酒から始まり、昔から地酒が好きな層にぴしゃりとはまるラインナップです。

 

さてさて、何を頼みましょう。

鮮魚を看板に掲げる飲食店は中央区内に山程ありますが、ここ京家も有名店に引けを取らない品揃えです。活マアジから始まり、寒ブリ、つぶ貝、真だこにイカ、しめ鯖、まぐろ中落ち、カレイ、いわし、そしてくじら。

 

お店で仕込むさつま揚げやがんも、ジャンボしゅうまい(いずれも650円)も魅力的です。

 

定番料理も楽しい内容です。人形町という立地にある大衆割烹というと敷居の高さを感じてしまうものですが、料理は居酒屋と同じような料理も多く、価格も手頃。店構えだけで遠慮してしまうのは実にもったいないです。

 

京家に来たら、サービス品のまぐろ中落ちはイチオシ。550円と手頃な値段ながら、立派な本マグロのきれいな中落ちがたっぷり盛られてきます。

 

ねっとりコクのあるまぐろに、マイルドな口当たりのお酒を。〆張鶴の「月」(650円)。目の前で一升瓶から注いでもらうと、ふんわりと優しいお米の風味が漂います。

 

簡単なおつまみをもう一品。旨味たっぷり、弾力もある煮こごり(350円)。

 

しばらくすると焼き上がりました。カレイの塩焼き(600円)。飾り塩を施し、紅で染めたれんこんを添えた盛り付けは、さすが割烹の仕事です。絶妙な火加減でふっくらと仕上がった身、縁側の皮と身の間から滴る脂、それらを一緒に口へ運べば、今日もしあわせです。余韻にすかさず日本酒を。

 

にぎやかな居酒屋もよいけれど、今日は飲み慣れたベテランさんが集まるお店でじっくり飲みたいな、なんてときもありますよね。大衆割烹京家はぴったりです。

居酒屋と同程度の予算でのんびりと過ごす心地よいひととき。4人くらいで昔ながらの飲み友達と会食するときにも良さそうです。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

大衆割烹 京家
03-3668-5752
東京都中央区日本橋人形町2-8-7
17:00~23:00(土祝定休)
予算2,800円