全国でも珍しい活穴子の刺身を食べさせてくれる店『森ふじ』。先付から穴子の棒寿司がでてきます。仙台湾・石巻などから仕入れる魚介類は穴子に限らず絶品揃いと評判。職人気質の大将ですが丁寧な接客なので、カウンター割烹に慣れている方ならきっと満足できるはずです。
地元の常連さんが集まる「穴子専門店」
人口約30万人の福島市。中心街には約700軒の飲食店があり県庁所在地らしい華やかさがあります。老舗の居酒屋、ビアホール、評判の餃子屋やホルモン焼きの店、おでんの名店にオーセンティックバーと、”いい店”が多く、東北出張の際は素通りできない街です。
街を歩く人はお世辞にも多いとはいえませんが、店に入ると盛況というのが福島でよく見られる光景。じっくり腰を据えて飲む人が多いのでしょう。
福島駅前で魚料理ならば、『穴子料理 森ふじ』は外せません。店名の通り、穴子一筋の大将が30余年続けてきた店です。穴子刺まで食べさせてくれますが、これは、隣県宮城は石巻などでとれる活穴子を買い付けているから。産地の石巻や仙台市内でもなかなか食べられない、絶品の穴子料理が揃っています。
品書き
お酒
樽生ビール(サッポロ生ビール黒ラベル):550円、瓶ビール中瓶(黒ラベル):650円。
日本酒は、高清水2合:800円、高清水300ml冷酒:850円、八海山300ml冷酒:850円、神亀:850円、綿屋:850円、左馬:900円、奈良萬:850円、会津男山300ml:850円など。
※値段は取材時のものです。
料理
穴子刺:1,500円、穴子なめろう:1,500円、穴子白焼:1,500円、穴子タレ焼:1,500円、煮穴子とトマト:1,500円、穴子丼:1,500円、かつお刺:900円、ヤリイカ刺:900円、ホッキ貝塩焼:1,000円、ホヤ刺:600円、へしこ:700円など。
フグよりも甘く、ハモよりも余韻が長い穴子刺し
サッポロ生ビール黒ラベル(550円)
「いらっしゃい。はい、ビールね」と大将。ビールは大衆割烹に似合う銘柄「サッポロ生ビール黒ラベル」です。それでは乾杯!
先付
一口目から大将の腕とこだわりが感じられる先付(お通し)がでてきました。煮穴子の棒寿司に子持ち鮎の塩焼き、そしていちじく酢味噌です。ふわふわで口に入れると溶けるような煮穴子の寿司は素晴らしく、思わず頷いてしまいました。鮎やいちじくは季節もので、内容は日々変わります。常連さんによれば、穴子の仔魚「ノレソレ」などがでることもあるそう。
穴子刺(1,500円)
福島を訪ねた理由、それがこの「穴子刺」です。新幹線を途中下車してでも食べに行きたい、とっておきの絶品です。東京でも穴子専門店で刺身を食べさせてくれるところはありますが、産地に近いほうが旅情も加わり美味しく感じます。
いえ、「感じる」ではなく、本当に美味しいのです。
宮城の穴子は全国シェア1割ほどで、長崎、島根と並び全国トップクラスの水揚げを誇っています。
親潮と黒潮が重なる潮目にある仙台湾で育った穴子は、豊洲の市場でも高級品。飲食店では「北限の穴子」などとも呼ばれています。
穏やかな湾内で育った穴子は「ハモ胴漁法」と言われる昔ながらの筒の漁具を用いて釣り上げており、そのまま活きた状態で流通しています。
そうして「森ふじ」まで運ばれてきた活穴子を、穴子料理人の大将によって薄造りにされるのです。一口目は、鯛やヒラメよりも淡白に思えるかもしれません。ですが噛むと驚くほど甘く、旨味が開いてきます。同じような調理法は、クエやフグ、そして鱧の薄造りなどがありますが、どの魚にも優劣つけがたい絶品です。
何度か穴子刺身を食べる機会がありましたが、森ふじの穴子は別格。活きた穴子でないと刺身はつくれないそうです。1尾つかっているので食べごたえ十分。
高清水(800円)
奈良萬など地元のお酒もありますが、お燗であわせたいので「高清水」を。なんでも、高清水をつくる秋田酒類製造の方も森ふじの穴子をべた褒めしていたそうです。
なるほど、確かに。この組み合わせは最高です。
水なす
かつおやホヤ、地元野菜をつかった漬物などもあり、どれも味が良いです。「美味しいでしょう?喜んでもらえて嬉しいわ」と話しかけてくれたのは、お隣で穴子白焼きを食べているお姉さんのお二人。地元にお住まいだそうで、大将が現在の場所に店を移転する前からの常連さんだそう。行きつけのお店を自慢したくなる気持ち、よくわかります。だってここの穴子は特別ですから。
遠方から食べに来る人もいるため、ピーク時は満席になることも。森ふじが目的で福島へ訪ねるのでしたら、予約されることをオススメします。
ごちそうさま。
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(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 森ふじ |
住所 | 福島県福島市置賜町4-13 |
営業時間 | 営業時間 17:00~23:00 定休日 日曜 |
開業年 | 1990年頃 |