汐入『一福』70年以上続く食堂で昼飲みを。原点は米軍施設の組合食堂

汐入『一福』70年以上続く食堂で昼飲みを。原点は米軍施設の組合食堂

2022年12月6日

お昼から通しでやっている食堂兼居酒屋の汐入『一福(いちふく)』は、有名店ながらなかなか濃い雰囲気です。創業から70年以上が経過しており、地域密着のレトロ酒場が好きな人にはたまらない空間がそこにはあります。品書きが豊富で、刺身や天ぷら、洋食から蕎麦・うどん・ラーメンまであります。

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軍港の駅前食堂。米軍基地向けの店が原点

品川から京急電鉄で約50分。軍港の街、横須賀にやってきました。横須賀は個性的な酒場や角打ちが豊富で、横浜や川崎など、他の街にはない独特なムードで満ちています。長く続いてきた店が多く、老舗の店を好む人にはたまらないエリアです。

繁華街のある京急線・横須賀中央駅周辺に留まらず、一駅隣りの汐入駅前にもこの街らしい店がいくつもあります。

お昼から飲むならば『お食事処一福』はぜひ訪ねておきたい一軒です。場所は汐入駅から3分ほど。横須賀芸術劇場からどぶ板通りへ向かう途中にあります。ギリギリまで山が迫っている地形の中にあり、駅、港、学校、神社、商店街が箱庭模型のように凝縮されています。こんなロケーションは滅多にありません。

外観

店の歴史は長く、創業は1947年(昭和24年)で、当初は米軍基地向けの組合食堂として開業したそうです。70年以上になる暖簾を三代目ご夫婦が守っています。

内観

営業時間は11時30分から22時まで、中休みなく営業しています。夜勤・早朝勤務が多いことが関係しているのか、横須賀は昼飲み向けにやっている店がいくつも存在しますが、『一福』はその中でもとくに規模が大きいです。

入ってすぐにテーブル、小上がり、カウンターが配されており、一軒の店として完結していますが、その先にホールが広がっていて、あわせると50席はある大箱です。

一部は使用していないようで書類やら荷物が積まれています。また、現在でも喫煙が可能で灰皿がおかれています。雑多な雰囲気で、まるで昭和で時間がとまっているような雰囲気です。

品書き

料理の数はなんと250品。食べたいものが決まっていなくてもとりあえず『一福』に行けばなんとかなるのです。すべて眺めて理解するまで時間はかかりますが、それも楽しみの一つ。

お酒

樽生ビールはキリンラガー樽で、小:490円、中:590円、大:990円。瓶ビールは、アサヒスーパードライ、キリン3銘柄、サッポロ黒ラベルサッポロラガーなどが選べて、大瓶:650円。ヱビスは680円です。

お酒は福徳長酒類(オエノン)富久娘:320円、灘の銘酒・剣菱:510円など。

酎ハイ類は、ホッピー(氷なし、ジョッキ・焼酎・ホッピーをすべて冷やしたもの):500円、お茶割り:390円、ピッチサワー:390円など。

本日のおすすめ

まぐろブツ:450円、きびなご:400円、天然ぶり:600円、穴子天:500円、ハムカツハム焼:450円、ハムチーズオムレツ:480円、あじの開き:480円、牛すじ煮込み:530円など。

たぬき奴:310円、ブリテリ:500円、ブリ塩焼き:500円、サバ竜田揚げ:450円、ニラレバ:550円、豚バラ肉豆腐:480円など。

定番メニュー

一品料理は、あじ刺身:480円、とんかつ:520円、餃子:400円、麻婆豆腐:480円、とんてき:520円、寄せ鍋:620円など。

今どき、そばやラーメンが500円前後はとてもリーズナブル。定食も豊富で、お昼ごはんがてら定食にビールを付けて飲んでいくという常連さんも多いようです。

やきそば(固焼きそば):570円、炒めそば(ソース味):530円、天丼(並):630円、チャーハン:510円、オムライス:570円、焼肉定食:730円、カキフライ定食:730円、とんてき定食:730円、ホルモン定食:750円など。

ドラマの再放送や相撲をBGMに、のんびり過ごす夕暮れの食堂飲み

キリンクラッシックラガー大瓶(650円)

早い時間なのでお客さんはわずかしかおらず、のんびりとした時間が流れています。女将さんは犬の散歩に出掛ける様子。店内には2つのテレビがついており、刑事ドラマの再放送が誰も観ていないまま流れています。相撲の時間になって常連さんがチャンネルを切り替えました。

ゆっくりとした時間が流れる空間にいると、自然とビールが飲みたくなってきます。手持ち無沙汰だから飲むのではなく、喉が乾いているから飲むのでもありません。食堂飲みとはそんな曖昧な気分を楽しむもだと思っています。

主要なビールが揃っていますが、今回はキリンのクラシックラガーを選びました。横須賀はキリンのイメージが強め。

ビアタンを満たして、それでは乾杯!

カレイ縁側(580円)

なにせ品数の多い『一福』は、何を頼もうか悩みだしたらきりがありません。基地の組合食堂として創業した経緯から、外国人にも選んでもらえる料理を作ろうとメニューを増やし続けてきたそうで、それがいまも続いています。人気は有名ミュージシャンが食べたという牛すじ煮込みのようですが、ここは港町ということで刺身を選びました。

ホワイトボードから、カレイの縁側刺身をチョイス。三崎の名物であるマグロや近海の鯵もあり、魚料理に地域性が感じられます。

穴子天(500円)

もう1品もホワイトボードから選んで、穴子天にしました。食堂らしいいい意味で無骨なものが運ばれてきました。穴子1尾をまるまる使っていて500円はかなり良心的です。ナスなどの野菜天のおまけも嬉しいところ。甘めのタレにひたして、しっかり衣をおもくしてから頬張ります。

ピッチサワー(390円)

横須賀はホッピーが昔から人気です。地元の酒販店で熱心なホッピーファンだった方の影響が大きいと、ホッピー関連の取材で聞いたことがあります。焼酎が濃いのも横須賀流で、それは酎ハイ・サワーも同じです。

今回はピッチサワーにしました。やはり焼酎はしっかり入っています。このピッチサワー(正式にはピッチレモンサワー)は神奈川ローカルな割材でご当地感を感じるサワーです。川崎飲料株式会社という川崎の割材・ラムネメーカーがつくっています。

小一時間過ごして、犬のお散歩も終わって女将さんが帰ってきました。時刻は16時過ぎ。そろそろ混みだす時間でしょうか。

ごちそうさま。

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(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名一福(いちふく)
住所神奈川県横須賀市本町3丁目12
営業時間営業時間
11:30~22:00
定休日
日曜日
開業年1947年