京急電鉄の沿線は個性豊かで魅力的な酒場が数多くありますが、一際個性的で日本でもここだけにしかない雰囲気をもった角打ちがあります。
昭和27年創業の「ヒデヨシ商店」は、汐入駅から徒歩1分の酒販店。朝9時から通しで夜までやっています。ここは、別名「CHUHI STAND」。世界的にも有名なジャパニーズ カクウチです。
朝9時のオープンから閉店まで、途切れることなく集う人々。夜勤明け、日勤明けの人々が集うのですが、実は9割は日本人ではありません。
そう、ここはUS NAVY御用達の店。徒歩でわずかの場所に横須賀米軍基地があるからで、ある意味、ここも産業酒場なのです。
店先に溢れる外国人が酔って楽しそうに笑っている姿は、国籍・人種に関係なくハッピーな気分になります。
親子二代で切り盛りするヒデヨシ商店。厨房に向いたカウンターと対面で飲める長テーブルという配置。ベースの男に混ざって飲む地元育ちの常連さんは、彼こそ横須賀人。
詰めれば30人は入れる箱で、今宵も満員状態。飛び交う声はほとんど英語。それでも、店長さんはじめスタッフの皆さんは、基本は日本語で応対しています。慌ただしく、次々来る注文に、「チューハイ?スリーハンドレッド サーティ エン!」と、ちゃきちゃきと対応されていますが根は優しい。
壁一面の1ドル札は、ヒデヨシ商店の魅力にはまった米兵たちのサインが入っている。愛されていることがわかります。
ビールは大びんが400円ほどとリーズナブル。現在でも小売の酒販店としても営業していることもあり、ビール大手3社は一通り揃います。缶ビール、缶酎ハイ、カップ酒も豊富。
今宵はアサヒのハイリキ(レモン)で乾杯。1983年登場、歴史あるハイリキは角打ちの景色にしっくり収まります。
三浦大根をつかったおでんや湯豆腐がありますが、多くは30円から200円の乾き物がお供。まるで駄菓子屋感覚。
外国の皆さんに人気は、クリームメロンソーダやパイナップルジュースで割った謎酎ハイ。サンガリアの甘い清涼飲料水を、たっぷりのアサヒ製・甲類焼酎ダイヤに注ぎ出来上がり。
氷なしで1:1ほどの濃さ。クリームメロンソーダ割り、甘くてすいすい飲めるのですが、これが数時間後にも残る余韻を放つ。ホノルルのパブで金魚鉢で飲むような激甘アメリカンカクテルが好きな人にはオススメです。
テイクアウトがOKで、プラコップで渡されます。陽気な外国の皆さんも、これなら破損の心配もなく安心。
出番を持つ甘いそれ。かなりのペースで売れていきます。
US NAVYの皆さんは、国産大手のハイリキなどの缶酎ハイより、お店オリジナルのダイヤ&サンガリアがお気に入り。このオリジナリティある酎ハイと、390円でたっぷり飲めるお得感、唯一無二の角打ちの雰囲気も含めて「YOKOSUKA CHUHI STAND」と愛称で呼び、長年部下や後輩へ受け継がれてきていると聞きます。
革ジャンを着こなす将校風ないぶし銀のお父さんも、屈強で超絶強そうな筋肉もりもりの20代も、みんな笑顔で楽しそう。
働く人の日常の飲み屋あり。それは国境をこえても同じ。楽しいお酒で今宵も乾杯しましょう。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
ヒデヨシ商店
046-825-0550
神奈川県横須賀市汐入町2丁目45
9:00~22:00(日祝は20:00まで・第1/2/3日定休)
予算1,000円