相馬中村藩6万石の城下町として栄えた相馬。中村城址や周囲に広がる歴史ある中心街。少し足を延ばせば日本百景のひとつに数えられる潟湖・松川浦があり、歴史と自然が調和する街です。
震災の影響で一部区間で運休していた常磐線が2020年に全線で運転を再開したことで、再び上野から特急列車1本で行くことができるようになりました。
相馬はとんかつなどの肉料理の店が大変多く、駅周辺だけで10軒以上もあります。今日ご紹介するお店「かつ吉」もそんな一軒。明治期に建てられた店舗で営業中です。
上野から約310km。相馬駅はリニューアルされ、城下町の玄関口にふさわしい堂々とした佇まいをしています。駅舎に掲げられたロゴは、JRマークではなく相馬中村藩の家紋「九曜」です。
駅から中村城址にかけてが街の中心街。規模はさほど大きくないものの、飲み屋街・スナック街があります。ただ、日中から飲めるお店は数えるほどしかなく、お昼から通しで暖簾がでている「かつ吉」は、ありがたい存在です。
ご兄弟と女将さんで切り盛りするお店。40年以上続く老舗です。建物自体はさらに古く、今以上に栄えていた時代の相馬中村藩の城下町の様子を今に伝えています。
樽生ビールはアサヒスーパードライ、瓶ビール(大ビン)はキリンラガー(600円)。ビールを頼むとサービスで枝豆とお漬物がいただけます。
いかにも温厚そうな女将さんに丁寧に迎えていただき、まずはビールでスタート。ビアタンを満たして、では乾杯。
しっかりボリュームがあっても、値段は千円前後からという良心価格が評判で、近くの行政関係、会社員や、仕事開始前の飲食店やスナックの方も集まる街の人気店です。
ビールだけでなく菊正宗、ウイスキー、酎ハイ類も揃っています。冷奴や枝豆(ともに200円)、唐揚げなどで早い時間から酔いを重ねるのも楽しそうです。
それでもとんかつ屋で飲むのはちょっと不安…、という方へ。こちらは千円でエビフライとヒレカツ、小鉢にビールなどが選べる「晩酌セット」という選択肢まで用意されています。ね、ここは飲むしかありません。
晩酌ですが、時間に指定は特にありません。
サクサクのヒレカツにお酒をあわせるというのは良いものですが、今日の気分はかつ綴じです。品書きにはありませんが「もちろん大丈夫です」というように受けてもらえます。
ご主人が丁寧に揚げたとんかつを、ささっと素早く綴じて出来上がり。まだ衣のぱりっとした食感が残っています。
キンキンに冷えた仙台工場製のキリンラガーで喉を冷やしたら、すかさずアツアツのかつ綴じを頬張ります。つゆの甘さとかつの脂の調和が、もちもちの豚の美味しさをより引き立てています。
かつ綴じには日本酒をあわせないともったいない!キクマサの常温(400円)を徳利おちょこではなくビアタンでもらって、きゅっとひとくち。
穏やかな相馬の午後。家族で営むほっとするとんかつ店で、心地よい酔いに浸りました。
街に根付いた定番のお店で飲むって、やっぱり最高です。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
とんかつ かつ吉
http://www.soma.or.jp/~shinpo/
0244-36-1696
福島県相馬市中村字田町30
11:00~20:00(木定休)
予算2,000円