二本松「みよし」 建具屋からはじまり4代目。半世紀続くおでんの酒場

二本松「みよし」 建具屋からはじまり4代目。半世紀続くおでんの酒場

今日は奥州街道沿い、陸奥国二本松藩の城下町「二本松」から半世紀続く老舗の酒場「みよし」をご紹介します。

現在の暖簾は「おでんとおにぎり」になっていますが、創業はそれ以前からで、以前は建具店だったそう。現在は4代目と女将さんが暖簾を受け継ぎ営業中です。

 

福島県二本松は郡山と福島のちょうど中間に位置します。奥州街道の重要な宿場町であり、日本百名城の1つに数えられる二本松城のお膝元という歴史がありますが、新幹線は停車しません。それ故に、古き良き街道街の佇まいが残されているようにも感じます。

安達太良山と阿武隈川が織りなす雄大な自然と、城下町の歴史文化が交差する美しい街です。

 

JR東北本線二本松駅は、かつての城下町の南に接しています。正面に奥州街道、小高い岡「観音丘陵」には二本松城跡があります。

 

緩やかな曲がり道、江戸の頃からの変わらないであろう道幅が宿場町らしさを感じます。みよしはここに店を構えています。

 

老舗の飲み屋であえて「おにぎりの店」と書いている場合、ほぼ間違いなく名店であるものです。そして「みよし」もそんな一軒。

 

女将さんが立つコの字のカウンターは、一年を通じておでんがたっぷりと準備されています。

 

奥は小上がりとなっており、いたる所に提灯が掲げられています。

 

二本松が一年で一番にぎやかになる夜、二本松提灯祭り。日本三大提灯に数えられる二本松神社の例大祭です。七町七台の太鼓台に約300個の提灯がさがるお祭り。その提灯が店内を照らしています。

※二本松提灯祭りは1600年代から続く伝統行事ですが、2020年は中止が決定しました。

 

提灯に街の歴史を感じ、女将さんの暖かいお出迎えを頂いたあとは、さあ、美味しいビールのお時間です。

まずは樽生(サッポロ黒ラベル・中650円)ビールで乾杯!

 

瓶ビールはアサヒスーパードライ(大ビン700円)。その他、ワインや酎ハイ類は600円など。地元酒蔵が造る本格焼酎もあります。

そしてなんといっても、二本松は福島が誇る酒処。常連さんが頼む飲み物は多くが日本酒です。地元の銘柄が1合350円からと抑えた値付けになっています。

 

三種類飲み比べ(600円)。女将さんのおすすめ、初めての方はまずは飲み比べから。気に入ったお酒をリピートしましょう。

 

おでんは1つ180円から。おにぎりの店ということで、もちろんご飯もあります。おにぎりというよりは握り飯、結構大きなサイズがでてくるようです。

 

東北地方のあったかい酒場の雰囲気。昭和の松竹映画のワンシーンにでてきそうな空間です。おつまみも地元の食材がありますが、カプレーゼやチーズ春巻きなど、意外な献立もあります。

 

東北らしい濃い色をした汁に浸り茶色に染まったおでんがお酒を誘います。しんなりした大根、飴色の玉子、しなったはんぺん、どれも素朴で良い味です。

 

ビールで喉を整えたなら、さてさて日本酒を。飲み比べは左から大七酒造の「大七生酛(きもと)」、奥の松酒造の「奥の松」、檜物屋酒造店の「千功成(せんこうなり)」。二本松の3銘酒揃い踏みです。

 

各蔵の定番に加え、酒蔵の直売所限定の「槽口酒」なども飲ませてくれるのは、さすが地元の酒場です。二本松のお酒は辛口とありながらも甘く感じることが多く、こちらもまた同様に。優しくすきとった美味しさ。香しい米の匂いがたまりません。

 

千功成はほぼ地元消費と言われているお酒。なかかな見かける機会は多くはありませんので、しっかり飲むお酒は「千功成」に。豊臣秀吉の旗印・千成瓢箪が由来とのこと。蔵元までは「みよし」から200mあまり。地産地消は、漂う空気までもがお酒を引き立てるように感じます。

 

こちらはお店の名物、鶏天(ハーフ550円)。大分のとり天のような揚げ方ではありません。衣は花揚げ、そして甘いみりんと醤油のようなタレに揚げたての瞬間から浸し、食感はサクサクなのにしっとりしたものに仕上がっています。

 

揚げ物には普通酒のお燗がよく似合います。奥の松の定番「金紋」のお燗は、しみじみ心を包む良いお酒です。

 

東京から仙台までの道のりは約350kmは、いまは90分で移動できる日帰り圏内ですが、途中の宿場町にはまだ知らない魅力がきっとたくさん詰まっています。

改めてそう感じさせてくれた酒場でした。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

みよし
https://onigiriodenmiyoshi.jimdo.com/
0243-22-1995
福島県二本松市本町2-193
18:00~23:30(日定休)
予算2,800円