台東区浅草。浅草寺の北側は観音裏と呼ばれています。日本を代表する観光地、雷門周辺とは表裏の関係。花街でもあるこちら側は、落ち着いた大人の遊び場です。
歴史ある街には名酒場あり。千束通りに店を構える「お酒とお食事処ナカジマ」も、大正時代にのれんを掲げた由緒ある飲み屋です。
ホームページによると、初代は新潟から上京し、浅草の今半で奉公しているときに独立して開いたそうです。現在のれんを守るのは三代目。上モノ・鮮度自慢の海鮮をメインに、酒場や食堂メニューでもてなしてくれます。
木造の酒場らしい飴色の空間に、小上がり、テーブルとも満卓の賑わいです。カウンターはないものの、お一人様はテーブル相席で一期一会を楽しみます。
ビールは生が地元吾妻橋のアサヒスーパードライ。瓶では、ナカジマの創業当時は吾妻橋にあったビール会社、日本麦酒の札幌と恵比寿です。
待っていましたと言わんばかりに、ビヤタンの底に赤星を打ち注ぎ、そのまま机に置くことなく、まずはぎゅっと一口。あ、乾杯です!
地元町会の集まりでしょうか。祭り談義に花を咲かせる江戸っ子たちが盛り上がる中、ビールとお酒がすばやく女将さんによって運ばれてきました。さすが歴史ある大衆酒場、提供が早い!
上まぐろ中おち。小鉢にたっぷり盛られています。程よい脂が旨味となって、お酒を誘います。
黒板メニューに10種類以上の海鮮の文字が踊ります。刺身でこれだけ揃えられるということは、それだけ注文もあるということ。
鱈ちり、牡蠣なべ、あんこうなどの鍋物から、白子酒蒸しややりいか里芋煮など気の利いた肴まで豊富。そしてやっぱり落ち着くのは酒場料理でしょう。オムレツは手頃で人気の一品です。
ポテトサラダ380円、アジフライ500円と、普段から通いたくなる値段も惹きつけられます。
アサヒのたっぷりはいる中ジョッキに注がれたレモンハイ(430円)。お客さんの笑い声と笑顔で応対されるお店の皆さんの声をBGMにして、今宵も心地よく酔いが進みます。
煮魚は500円から、カレイに鯛、そして金目(890円~)と揃います。東京風の醤油と砂糖で濃い味に仕上げた甘辛煮付けが好物でして、ナカジマの煮魚はまさにそれ。
中はホクホクでうっすらきつね色。旨味の余韻に誘われて、日本酒は定番酒の白雪(1合400円)を注文。さて、じっくり椅子に根を張って、のんびりと酒場の時間を楽しみます。
ほっこりあたたまる酒場に癒やされました。
お店をでたころにはすっかり静かになった千束通り。帰りは小路を歩いて花街を散策しましょうか。そよ風に乗って三味線や鼓の音が聞こえてきそうです。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
ナカジマ
03-3872-7833
東京都台東区浅草5-37-6
17:30~23:30(木定休)
予算2,500円