高崎「ささき」 昭和が続くコの字カウンターで、街の歴史を肴に。

高崎「ささき」 昭和が続くコの字カウンターで、街の歴史を肴に。

高崎で半世紀、3代目が暖簾を守る老舗のやきとり「ささき」。そこには、まるで映画のセットのよう、いえ、そんなものじゃない、リアルな昭和が今も続いていました。

JR高崎駅西口は昔からの繁華街。一本裏に入れば大小様々な飲食店が立ち並びます。とくに通町には横丁風の小路が存在し、味わいある酒場が軒を連ねています。ささきもその一軒です。

 

「やきとり」とひらがなで書く場合は豚モツを使うことがほとんど。焼鳥とやきとりは、かつて明確な使い分けが存在していました。

 

清酒白瀧といえば、新潟県魚沼郡湯沢町の酒蔵です。いまは別の呼び方として、越後湯沢の地酒「上善如水」という方が伝わりますね。

 

お姉さんと大将が迎えてくれました。お店の方が二人はいるといっぱいになるコンパクトなコの字カウンター。お客さんが10人も入ればいっぱいです。

 

やきとりは一本100円、瓶ビール(大)は600円。消費税・酒税改定分の値上げはあるようですが、ほぼ昔から変わらない価格で続いています。

 

一度入ると帰りたくなくなる、溶けてしまいそうな空間。丸椅子に根をはやし、いただく一杯目はキリンクラシックラガーです。乾杯!

2000年8月まで高崎はにはキリンビール高崎工場が創業し、昭和の味・加熱処理のキリンラガーの製造工程の一部を担当していました。いまも老舗にはキリンが多く、店主さんやお客さんに支持されています。

 

やきとり(豚)をタンなど4本焼いてもらいました。丸々と太い葱が群馬らしさ。葱のとろみが豚の肉汁を吸って、その味はじっくりとビールを誘います。

 

焼き具合が絶妙で、中はジューシー、外はカリっとしているのがたまりません。

 

一度飲んだらクセになる、そんな誘い文句に呼ばれて頼む「栗焼酎」(400円)。たしかに、栗特有の野性味ある美味しさがあります。しつこくなく、余韻は軽め。豚の脂を流してくれます。

 

続いてレバーとヒモをタレで。さらっとした薄口のタレは、葱の甘みと味が調和します。1本100円でも大ぶり。お酒も安くお通しなし。二千円もあれば、今日も大満足でしょう。

 

昔懐かしい味付けの浅漬けが箸休めに最適です。こんなに山盛りで150円と、実に良心的です。

 

合わせるお酒は、もちろん白瀧で。1合300円。酒燗器ではなく、なんと寸胴にお湯を張り、そこへ酒タンポいれて燗をつけます。お姉さんが眼の前で豪快に注ぎ込んでくれました。

 

洒落た酒器で飲む吟醸酒も好きですが、大衆酒場のコの字はやはりこれでなくちゃ。お口から迎えに行って、水飲み鳥のごとく。

 

酒タンポはお酒だけが入ってるわけではありません。もう一つの名物、湯豆腐(200円)です。寒くなると、この湯豆腐が恋しくなります。

 

まるでラーメンのように逆手でもった湯切りザルに酒タンポを返すと、お豆腐がざっとでてきます。湯豆腐にすると出てくる汁ごと湯切りし、しっかり硬いお豆腐が準備完了です。

 

鰹節と葱をたっぷりかけて、大きめのとんすいに雑多に盛られてきました。少し崩れているくらいがいい。箸でもちあげても崩れない密度の高い木綿豆腐に舌鼓。あぁ、美味しい。

 

高崎の夜に、昭和が続くコの字で湯豆腐、もつ焼き、そしてラガーや白瀧はいかがでしょう。そこには街の奥行きを感じる素敵な時間が流れています。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

やきとり ささき
群馬県高崎市通町135
18:00~23:00(日祝定休)
予算1,500円