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一人あたりのマグロの消費量上位に山梨県があり、寿司の外食費用一位が栃木県(2016年家計調査)など、内陸県は意外なほど魚介料理が人気です。埼玉・熊谷にまるで網元の直営食堂のようなお店があることを以前紹介しましたが、今日もまた、内陸県から驚くほど品揃え豊富で鮮度にこだわる酒場をご紹介します。
ここは群馬県の県庁所在地・前橋市。県庁や市役所にも近い本町で長年店を構える老舗「みやたや」です。
大衆食堂であり、カウンター割烹であり、さらに地元のビジネスマンたちの会合や、家族連れの食事会と幅広いニーズを受け止める「町のいい店」です。もちろん家族経営なのは言うまでもありません。
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東京から上越新幹線で約1時間で高崎へ。高崎からJR両毛線で10分ほどで前橋駅に到着。高崎市、前橋市あわせ60万人以上が暮らす都市圏です。高崎市は駅前に繁華街が広がっていますが、前橋は中心街までやや距離があり、路線バスの利用が便利です。
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群馬のマスコットキャラクター「ぐんまちゃん」が描かれたバスに乗ること5分。本町バス停の到着。ここが昔からの中心地であり、地方銀行や地域の百貨店、そしてアーケードに飲み屋街と徒歩圏内に街の要素が詰まっています。
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みやたやは、バス停からわずかの距離。なんとなく喫茶店か洋食店を彷彿させるレンガとテントの店構えですが、店内は酒場好き、とくに大衆割烹好きを満足させてくれる空間ですのでご安心を。
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厨房を見渡せるカウンター席が特等席。見上げれば、これでもかと黄色の短冊が掲げられ、あれもこれも食べたくなってきます。ご家族総出、皆さん忙しそうに働く厨房は見ているだけでもお酒が進みます。
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一人・二人でやってくる常連さんはカウンター席に座り、あとは小上がり、座敷にあがっていきます。この日も宴会の予約が入っているようで、スーツ姿のお父さんたちが続々と二階の座敷へと通されていました。
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まずはビールから。樽生(中600円)はアサヒスーパードライ。それでは乾杯。瓶ヒールもありまして、こちらもアサヒスーパードライ(中ビン600円)。
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お通しの小鉢といっしょに、最初からアラ汁がでてくるのが「みやたや」のスタイル。タイなどのアラがいい味をだしています。これを飲めば酔い知らず(個人の感想です)。
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カウンターならばご主人との距離も近く、料理を決めるアドバイスをもらえますし、こんな小皿のサービスをいただきました。
今日は三陸で水揚げされた上物のカツオが入ったそうで、捌いたばかりのカブトから希少な部位のおすそ分け。
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さてさて、どう頼んでいきましょう。右も左も所狭しと魚介類の名前で埋め尽くされています。
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市場から買い付ける魚介類は、多品種でしかも季節ものばかり。冷凍の魚は一切使用しないのがこだわりとのこと。
その日の市場に並ぶ魚が反映されているので、毎日メニューが書き換わります。産地だけでなく、ご主人の意気込みが伝わる一言が添えられているのでますます悩んでしまいます。
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すごい熱量です。岩牡蠣も2種類、つぶ貝刺しも「極旨」ですか。うーん、どうしましょう。
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ご主人のおすすめもあって、盛り合わせをオーダー。一人飲みによいボリュームと手頃な価格でとお願いしましたが、でてきてびっくりの豪華さ。生めじまぐろ、かつお、赤貝、ホタテ貝柱、剣先いか、たこ、スズキ、さわらと、大サービスの盛り合わせです。(二人以上でオーダーするような標準のお刺身盛り合わせは、2700円)
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忙しいお店ですが盛り付けはキレイですし、このとおり、お刺身もぴんとしています。
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こうなると、ビールやチューハイ(樽ハイ倶楽部・450円)から、日本酒に切り替えたくなりませんか。地酒(500円)は2種類置いています。頂いたお酒は、前橋市駒形町にある町田酒造店の「清りょう」。利根川の伏流水で仕込む前橋の味です。最初はマイルドな優しい甘み、余韻はきりっと辛めのお酒です。もうひとつは、福島県南会津のお酒「花泉」。
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青森のもずく(400円)など小鉢を軽くつまんで、ただただお刺身の余韻にひたります。
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お酒の〆にアラ汁と行きたいところですが、ビールといっしょに最初に出てきました。ふんわり納豆を最後の一品にして、ふぅ、満喫しました。アジフライもおすすめと隣の常連さん情報。
魚好きのご主人のパワー感じるカウンターは、磯の音が聞こえてきそうです。前橋市は県庁所在地で最も海から離れている市ですが、みやたやの存在は前橋の特異点だと思います。
繁盛店なので、グループで利用される際は予約をおすすめします。ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ ※外出自粛要請以前に取材)
みやたや
027-221-3465
群馬県前橋市本町1-3-8
17:00~21:00(日祝定休)
予算3,500円
冒頭に記した熊谷のお店
熊谷「秀萬」 まるで夢の世界!ちぐはぐだけど、大満足の海鮮酒場