熊谷「秀萬」 まるで夢の世界!ちぐはぐだけど、大満足の海鮮酒場

熊谷「秀萬」 まるで夢の世界!ちぐはぐだけど、大満足の海鮮酒場

2019年2月27日

夢の中でも飲み屋さんの暖簾をくぐっている筆者。目を覚ましてよく考えてみると、ちぐはぐなことが多くて「なーんだ、夢か~。おもしろいお店だったのに。」と思うものです。

そんな不思議な夢のような飲み屋が熊谷に実在しています。

海までおよそ80キロ離れた、あの「暑すぎる街」で知られる熊谷。その駅前にありながら、雰囲気は完全に漁師町の飲み屋という「秀萬」です。

カニやホタテ、ウニなどの魚介類を驚くほどリーズナブルな価格で提供してくれると昔から人気のお店です。今回は、そんなパラレルワールドの酒場をご紹介します。

 

JR熊谷駅。上野から高崎線でおよそ1時間。中山道六十九次で江戸から数えて8番目の宿場町です。

 

駅北口が街の中心です。駅前には中山道が通り、かつての本陣もこのあたり。「銀座」や「本町」という地名がついています。埼玉県の飲み屋街といえば、浦和と大宮がずば抜けて大きいですが、熊谷も町の歴史を訪ねつつ梯子酒を楽しめるおすすめの場所です。

 

ここが秀萬。飲み屋というよりは、仕出しや宴会を専門にしている飲食店にみえます。飾り気のない店前は、トロ箱やビールケースが無造作に積まれています。暖簾や提灯もないので、初めてだと営業中かどうか悩むかもしれません。

 

勝手口のような入り口をはいると、いきなり厨房にでます。元気な大将が、「いらっしゃい!お二階どうぞ」と迎えてくれるのでそれに従いましょう。巨大な鉄板ではボールいっぱいの蛤が豪快に酒蒸しされていました。

 

一階の客間。ちょっと大きな民宿の宴会場風。消防団や町会の二次会が似合いそうでしょ。

 

二階は一人から4人程度の少人数で利用できる客間。釣宿みたい。夕飯会場はここですか?(笑)

 

いらっしゃい!と白衣姿の元気なお兄さんが登場。給仕の皆さんの接客がとても行き届いているのが「秀萬」の人気の秘訣その1です。

 

ビールの銘柄は、樽生、瓶ともにアサヒスーパードライ。連続冷却性能が高い大きな瞬冷ディスペンサーから豪快に注がれた生。たっぷり入る昔からの飾りのないジョッキが素敵です。では乾杯!

 

秀萬人気の秘訣その2、海鮮が激安!

海がないのに、まるで漁港の酒場のような品書き。品書きははこのB5サイズ1枚だけというシンプルさ。酒場の定番はなく、ホタテ、とり、えび、いか焼きなど、とってもシンプル。この値段で、一般的なお店の3倍ほどでてきます。

 

注目はこのズワイガニ。2,800円で1匹でてきます。入荷によっては、毛ガニがズワイガニと同じような価格で食べられることもあります。コスパという言葉がまさにぴったりの一軒。

 

等級でいえば、大きさから上級ではないかもしれませんが、身のつまり具合は文句なし。

 

カニ酢はビアタンに入っています。この豪快さ、やっぱり夢の世界のよう。まるで漁港で知り合いの漁師さんからごちそうになっているような、そんな錯覚になります。

 

今回は取材ということで一人で飲みに来ましたが、2~4人でシェアしてちょうどいい量。一人あたりの値段を考えると、笑いが止まらなさそうです。

 

飲んでいると、まるで香港の飲茶屋のように、トレーいっぱいにおつまみを載せたお姉さんが回ってきます。100円からの小鉢を売り歩いていて、箸休めにちょうどいい肴が並んでいます。

 

生しらす(250円)。小鉢とはいえ、小鉢一杯に入っているので食べごたえは十分。品書きに載っていてない「今日の限定品」といったところ。

 

秀萬人気の秘訣その3、ここの日本酒は剣菱の樽酒です。注文がはいると、樽からそのまま片口で受け、お客さんのもとへ運ばれます。樽酒はそのままだと樽の味がつきすぎるからと一升瓶に移し替えるお店も多いです。そんな中、樽に入れたまま直接売られているのは回転の良い証。

剣菱の樽は、いまも職人がてづくりしています。素材は杉の中でも「甲付」と「赤味」を使い、樽香のつき具合を調整していると聞きます。

 

黒松剣菱も美味しいお酒ですが、この樽酒はまた格別です。

 

社紋のはいった升。角に軽く粗塩をのせて、きゅっと一口。

 

あぁ、たまりません。樽香がちょうどよく、灘の男酒と言いつつも甘味を感じるのが樽酒剣菱の特長でしょう。大好きな味です。

 

剣菱をじっくり味わった後は、ブラックニッカのハイボールと、わかめ酢(100円)で、秀萬の余韻を楽しむひととき。ここのハイボールはとっても濃いので飲み過ぎご用心。

気づけばほぼ満卓。子供連れから近くの会社員グループ、ベテランお姉さん3人組などお客さんの層は様々。皆さんとっても楽しそうです。

 

畳の上でのほほんと美味しい樽酒に海鮮三昧。気がつけばだいぶ時計の針が進んでいました。この界隈で数軒伺ってみたかったけれど、今日はもう大満足です。

あ、ここは熊谷だった!帰りの電車を調べるときに、現実に戻りました。うんうん、こんなお店はめったにありません。ちょっと歩けば漁港があるのでは?なんて気分になりつつ、ほろ酔いで、ごちそうさま。

お土産に果物やカップ麺をくれるのがお決まりです。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

秀萬
048-523-3443
埼玉県熊谷市筑波3-171
17:00~22:00(不定休)
予算3,000円