昭和40年創業の「餃子菜苑」は、母娘で営む秩父の名物中華。餃子の注文を受けると女将さんは生地を広げるところから始めます。これが独特なモチモチ食感を生み出す技。駅にも近く、秩父観光の帰りに餃子で一杯いかがでしょうか。
餃子菜苑は、西武秩父駅と御花畑駅をつなぐ抜け道から見える場所にあります。また、秩父市役所から徒歩1分もかからない場所のため、日中は市役所関係者や駅周辺の事業所に勤める人で賑わいます。
また、夜は半分飲み屋のような雰囲気で、噂を聞きつけた旅行者も地元のお父さんたちも混ざって、皆さん餃子とビールで暮れゆく山里のひとときを楽しんでいます。
酒どころ秩父へいこう!
(池袋と秩父を結ぶ特急ラビュー。ソファのような西武イエローの椅子がキュート)
池袋から西武線の特急ラビューで約1時間20分。箱根、高尾山、日光のように都心から私鉄がつなぐ観光地、秩父。長瀞(ながとろ)や奥秩父への玄関口であり、秩父の街そのものも西武秩父線の開通以来、日帰り観光地として栄えてきました。
2017年には西武秩父駅の駅舎に隣接して「西武秩父駅前温泉 祭の湯」がオープン。多数の内湯と露天風呂を備えた本格的な施設です。
名峰武甲山をはじめとして周囲をぐるりと山に囲まれた秩父盆地では、水はけのよさから蕎麦づくりが盛んに行われてきました。また、武甲山の伏流水をつかった酒造りも昔から続いてきました。1753年創業の「武甲正宗」は街の中心部にあり、内部を見学することがてきます。(掲載時現在は休止中)
街の中心に鎮座する、秩父地方の総社、秩父神社。
秩父夜祭で知られる秩父神社ですが、境内をつかって他にも様々なイベントが開催されています。そのひとつが今年で8回目を迎えた「秩父ウイスキー祭」(2021年は開催終了)。国内外のウイスキーが集まるイベントとして、多くのウイスキーファンが秩父の地に集まりました。
(秩父蒸留所)
なぜ秩父の地でウイスキーかというと、2011年に「イチローズ・モルト」で知られるベンチャーウイスキー秩父蒸留所のリリースがきっかけ。あまり知られていませんが、秩父は武甲正宗などの日本酒のほか、焼酎、ビール、ワイン、ウイスキーと、埼玉では唯一5種類のお酒を生産しています。
35年前の品書きをそのままに
街を歩いたあとは、その地で長年続く老舗暖簾に一層誘われます。おまたせしました。餃子菜苑に入りましょう。
80歳を過ぎたベテランの女将さんと娘さんで切り盛りするお店。女将さんは創業者のご主人のあとを継ぎ、いまも50年間変わらない手法で料理を続けています。
ビールはアサヒスーパードライとキリンラガーが用意されています。樽生はありません。
歩いたあとのビールは最高です。それでは乾杯!
品書き
約35年前に亡きご主人が用意したという品書き。この品書きを残すために、料理を値上げすることなく変わらぬメニューを提供し続けているとのこと。
ギョウザ300円、水餃子00円、肉玉子キクラゲ炒メ(700円)、チャーハン(600円)など。
飲み物はビールのほかに酎ハイと日本酒(秩父錦・300円)があります。
どの席からもギョウザを仕込む様子が見える、珍しい割烹型の店内
餃子は注文すると女将さんが生地をこねて円状に広げるところから始まります。とはいえ提供に時間がかかるわけではなく、ベテラン技であっという間に焼き上がりました。年季の入ったまな板で包み、これまた漆黒に育った鍋でじゅーっと焼いていく――。
ギョウザ(6個300円)
一口で食べられる大きさです。皮は弾力があります。続けてもち豚のミンチからでる肉汁と、ニンニクとラードの旨味が口いっぱいに広がります。
水餃子(400円)
ラーメンも400円と安いですが、水餃子もラーメンの丼ぶりにたっぷりはいって同じ値段。
もちもちの皮がより際立つ水餃子の餃子。目の前で寿司職人のように餃子を包んだものが使われるので、その光景もまたビールのよきお供です。
ひんやりとした秩父で、ベテラン女将の温かいスープが心までほっこりとさせてれます。
近年、テレビ番組のロケ地になって話題になったようですが、Syupoの取材は放送以前でした。そのときから地元の人々で賑わっていましたから、世の中が落ち着いたらもっとにぎやかになりそうです。
そうそう、店の構造が独特で、椅子席はカウンターの一部(5席)で、大半はカウンターに向いた畳の小上がりに座布団が並ぶというつくりです。この小上がりが、山小屋というか民宿みたいでとても落ち着けます。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
店名 | 餃子菜苑 |
住所 | 埼玉県秩父市東町24-5 |
営業時間 | 営業時間 17:00~20:00頃 日曜営業 定休日 火曜日・年末年始 |
開業年 | 1965年 |