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こんなお店があったんだ。毎日飲み歩いていても日常の行動範囲内で、ものすごい飲み屋を発見することがあります。そのときの高揚感といったら、それはもう大変。
埼玉県、三郷。JR武蔵野線が通る首都圏有数のベッドタウンです。車窓からも大小様々なマンションや丘陵地を切り開いた住宅街がひたすらに続きます。どんな街だろうと、なんとなく降りてみました。ふらふらと歩いていると、町工場のような建物に、煌々と照らされた「大衆割烹居酒屋やっちゃば」の看板を発見。
周囲はとくに飲み屋街というわけでもなく、この建物だけ特異なオーラをだしてそこにあります。さあ、三郷で驚きの大衆割烹「やっちゃば」を覗いてみましょう。
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JR武蔵野線三郷駅。接続する路線はなく、駅はJR系コンビニ以外は目立った施設もなく、轟音をたててやってきた貨物列車が通過すると、虫の声がきこえるほど静寂に包まれます。
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そんな雰囲気なのですから、この不思議な居酒屋の雰囲気は想像もつきません。ただ、暖簾の向こうからはたくさんの笑い声が聞こえてきて、店内は熱気に満ちていることがうかがえます。いったいどんなお店なのでしょう。
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時間は21時頃にも関わらず、なんと満席。レジ横で少しの間待っていると席へと案内されました。それにしても駅の様子、街の雰囲気、立地から想像できないほどの熱量です。大箱の店が老若男女でいっぱい。
カウンター席がありますが、基本はファミリーレストランのようなボックス席を中心とした配置です。そこに家族連れや人生の大先輩グループ、主婦や学生の飲み会も混ざって、とにかく賑やか。
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壁一面に貼られた膨大な品書きは眺めているだけでもクラクラするほどの情報量。三郷のすべて酒場の光を集めてしまったような、そんな印象を感じます。
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樽生(550円)は、キリン一番搾り。盛業店らしく回転のいいフレッシュな一杯を味わえます。それでは乾杯!
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お通し(200円)は日替わり。この日は巨大なつぶ貝です。びっくりでしょう。お通しでつぶですよ。しかもかなり巨大。
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瓶ビールはキリンラガーの大瓶が550円。とっても良心的。日本酒は1合350円から。酎ハイ類はレモンハイ・ウーロンハイ・チューハイなど350円。お通しもおつまみとして十分に魅力的なので、飲み方次第で結構お財布に優しくなるはず。
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埼玉県に漁港があったっけ?と一瞬だとしても考えてしまう、それほど充実した日替わりの魚介類(500円前後)。サービス品という項目で普段500円ほどのお刺身が300円・350円とさらに値引きされているのに驚きます。売り切れ御免で取り消し線がはいっていきます。
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こちらは定番料理。とにかく種類が多く、今夜はなにを肴に飲もうか…という悩むことなくここに来て、あとは品書きから好きなのを選べばなんとかなるという安心感を感じます。
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350円のお値打ち価格になった北海たこ刺し。一人で摘むには十分すぎるほど。立ち飲みじゃありません。ちゃんと座れて飲めるお店でこの内容と価格は、人気になるわけです。
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小鉢にたっぷりはいったオクラ。これで明日も二日酔い知らず。
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おすすめの酎ハイ、飲み物に悩んだらぜひこれを。老舗の酒場でよくみかける「緑すぎるお茶」、業務用玉露茶をつかった玉露茶割り(400円)。
しっかりしたお茶の甘さが、強めの焼酎のアルコール感もオブラートに包むよう。魚介類にぴったり。
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地はま焼き(500円)。品書きも頼んででてくる料理も港町にある食堂に負けず劣らずです。
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手元のメニューでカバーは切れてないものもある短冊の品書きたち。ボックス席で膨大なメニューに悩む、ベッドタウンの特異点。飲食店をあちこちめぐっていても、まだまだ世界は広く、そしてまだ体験していない価値や楽しさで溢れていることに、改めて気付かされました。
カウンターで一人で飲むもよし、飲み友達数名と和気あいあい過ごすもよし。武蔵野線で飲む店を聞かれたら、まず候補にしたい一軒です。
ごちそうさま。
(取材・文・撮影/塩見 なゆ)
居酒屋やっちゃば
048-954-2501
埼玉県三郷市三郷1-1-5
17:00~23:30(年末年始以外無休)
予算2,000円