1924年(大正13年)創業。浅草や合羽橋からもほど近い、東京メトロ銀座線田原町駅のすぐ近くに、100周年を迎えた老舗蕎麦店『甲州屋』があります。家族経営の温かい雰囲気の中、昼は活気ある食事処、夜は”蕎麦屋飲み”の場として親しまれてきました。名物の「カツ煮」をはじめ、居酒屋顔負けの料理が揃う名店です。
100周年を迎えた、下町の温かい家族経営の店

東京メトロ銀座線田原町駅の2番出口を出てすぐ。国際通りと浅草通りが交差する寿四丁目交差点の一角に、小さく暖簾を掲げる町のお蕎麦屋さん『甲州屋』。

創業は1924年(大正13年)。関東大震災の翌年からという、まさに地域の復興と発展と共に歩んできたお店です。現在の三代目店主をはじめ、ご家族で切り盛りされており、そのアットホームな雰囲気がなんとも心地よい空間を生み出しています。

お昼時は、近隣の会社員の方たちで常に満席。蕎麦や丼ものを手早く楽しむ活気ある食堂の風景が広がります。ですが、夜になるとその雰囲気は一変。ほぼすべてのお客さんがお酒を楽しむ「蕎麦屋飲み」の店になります。さらに土曜日と祝日は通し営業。お昼からお酒好きのご隠居さんたちが集います。
蕎麦屋のカツ煮・カツ綴じは特別です

まずは、サッポロ生ビール黒ラベルで乾杯。サーバーのメンテナンスが徹底されているのでしょう、きめ細かな泡と雑味のないクリアな飲みごたえ。勝手にパーフェクト黒ラベル認定したいくらい!

肴(さかな)のイチオシは、なんといっても柳川鍋で提供される「カツ煮」(880円)です。
注文すると、厨房から小気味よい音が聞こえ、やがてグツグツと音を立てながら運ばれてきます。立ち上る湯気と出汁の甘い香りだけで、ビールが飲めてしまいそう。 分厚いカツに、トロトロの絶妙な火加減の半熟玉子。そして、お蕎麦屋さんならではの鰹節の風味が効いた、コクと甘みのある出汁がたっぷりと染み込んでいます。

熱々のカツを頬張り、すかさず冷たい黒ラベルをぐっとあわせる。幸せです。

おつまみの品揃えは大変豊富。何枚にも別れて書かれた膨大な黒板メニューを眺めているだけで楽しくなります。

「いぶし鴨」(800円)は、しっとりと柔らかく、噛むほどに燻製の香ばしい香りが鼻に抜けます。お酒を誘う深い味わいです。

「蕎麦屋のたぬき冷奴」(580円)も、ただの冷奴と侮れません。蕎麦屋らしい粗めの揚げ玉の食感とコク、そして紅生姜がお豆腐の味を引き立て、シンプルながらお酒の進む一品です。
季節の天ぷら(取材時は稚鮎天でした)なども揃い、蕎麦屋の「一手間」が光る料理の数々は、まさに居酒屋顔負けのラインナップです。
東京の地酒「金婚」と、〆の「むじなせいろ」

ビールを楽しんだ後は、日本酒へ。台東区の老舗蕎麦店でよく見かける、東京の地酒「金婚」の純米酒(1合瓶)を選びました。キレの良いすっきりとした飲み口が、出汁の効いた料理の味を邪魔せず、むしろ引き立ててくれます。

〆のお蕎麦ももちろん絶品。細めに打たれた蕎麦は、しっかりとしたコシと豊かな香りを感じさせます。「きのこそば」(900円)のような温かいお蕎麦も魅力的ですが、お酒の〆なら「むじなせいろ」(680円)もおすすめです。

「むじな」とは、揚げ玉(たぬき)と油揚げ(きつね)の両方が入ったもの。

甘辛い味がしっかり染みた油揚げと、汁を吸った揚げ玉が浮かぶつけ汁は、これだけで立派なお酒の肴になります。

このつけ汁で日本酒をちびりと楽しみ、最後に蕎麦を手繰る。蕎麦屋酒の醍醐味を存分に味わえる、最高の〆です。
下町の繁盛店のかっこよさ

100周年を迎えた『甲州屋』。店内には100周年を記念して描かれたご家族の似顔絵が飾られており、これが皆さんそっくりで本当に素敵なんです。家族経営の温かさと、愚直に味を守り続ける誇りが伝わってきます。
お昼は地域の胃袋を満たす食堂として、夜は人々の心を解きほぐす酒場として、地域の人々に愛され続ける下町の繁盛店。そのぶれない格好良さに惚れ惚れする一軒です。
店舗詳細



店名 | 甲州屋 |
住所 | 東京都台東区寿4丁目16−5 |
営業時間 | 平日 10時00分~15時00分 17時00分~22時00分 土・祝 11時00分~22時00分※通し営業 日定休 |
創業 | 1924年 |