御徒町駅からほど近く、雑踏を抜けてアメ横の路地を歩けば、明るく清潔感のある「寿司幸」の暖簾が見えてきます。お昼から通し営業、しかも寿司は普通の店より二まわりは安い。けれども、その味は価格以上。今回は、そんな御徒町『寿司幸』をご紹介します。
3代目が守る老舗の大衆町寿司

「寿司幸」があるのは、御徒町駅北口から徒歩数分、アメ横の喧騒を背に細い裏路地を進んだ先。周囲には飲食店や老舗の惣菜店が立ち並び、昭和の香りを色濃く残しています。
創業は1964年(昭和39年)。以来、地元客や買い物帰りの奥様方、会社帰りのスーツ姿、週末には毎週顔を出すご隠居さんなど、世代を超えて愛されています。明るく開放的な店内は、いつも笑顔と活気にあふれ、職人さんの丁寧な接客もまた、通いたくなる理由のひとつです。

席はカウンター主体で、目の前で寿司を握る所作を間近に感じられる特等席。ランチタイムから夜まで通し営業のため、遅い昼下がりや早めの夕食に立ち寄る常連客も多いようです。
価格設定は「これで本当に大丈夫?」と心配になるほど良心的で、一貫165円から。とはいえネタの仕入れや下ごしらえには妥協なく、どれを頼んでも期待以上。
現在は三代目が店を切り盛りし、時代とともに進化しつつも、老舗個人店らしい温かみを守り続けています。
丁寧な仕事を感じる安くて美味しい寿司
カウンター席だからこそ、寿司種ケースからつまみを選びたい

まずは樽生のアサヒスーパードライで乾杯。よく冷えたビールが寿司屋の高揚感をぐっと引き上げてくれます。

職人さんが立つ前に座ったら、やっぱりすぐ握ってもらわず、軽くつまみを出してもらいたい。すぐに注文した赤貝がむきたてで登場。艶やかでシャキッとした身はそのままでも絶品です。
あわせてコハダももらいました。小ぶりで繊細。職人の手仕事が冴える締め加減で、口に含むと酢の加減と魚の旨味が絶妙なバランス。

寿司屋は、握りだけでなく「つまみ」が美味しいと、自然と気分も上がります。そこで、もう一品。ふっくらと仕上げられた穴子は、ホクホク感と上品な脂、そして東京らしい濃い目のツメ(煮詰め)が見事に調和し、思わず唸る味わいです。

ビールの次は寿司屋らしいお茶割りを。お茶の風味と焼酎のまろやかさが爽やかで、蒸し暑い日の喉に心地よく染み入ります。寿司幸はお茶自体が美味しいので、お茶割りのクオリティもひときわ高いのが嬉しいところ。
だれでも安心して案内できる質の良さ

さて、いよいよ握りを注文。
まずは鮪。筋のない天身のような部位が使われており、ほどよく脂が乗っていて赤身らしい旨さを楽しめます。
タイラガイは、職人から「塩でどうぞ」とすすめられる一貫。キリッと引き締まった身、強い甘み、塩のアクセントで素材の味が際立ちます。
青柳は下ごしらえが丁寧で、歯ごたえも爽やか。新鮮な磯の香りが広がり、ただひたすらに美味しい。

気分が盛り上がってきたところで、蝦蛄(シャコ)を追加。近年小さな蝦蛄ばかりになってきましたが、こちらは嬉しい大きさ。しっかりした身は水っぽさがなく、噛むほどに凝縮した旨味が感じられます。

さらに、ブリや牡丹海老も。牡丹海老は一貫380円。都心とは思えない“手の届く贅沢”です。

どれも仕入れの良さが際立ち、価格帯の寿司店とは思えないクオリティ。さすが、50年以上、水産仲卸売と付き合いのある店ならではの質のよさ。

最後は特製の干瓢巻きで締め。しっとり柔らかく煮上げた干瓢とシャリの一体感が心地よく、ほっとする余韻が残ります。
また、名物のネギトロも人気で、注文が入ると目の前で叩いて作られるため、香りや食感も格別。
昨今、こういう寿司店は貴重な存在

御徒町「寿司幸」は、日常に根ざした大衆寿司の中に、確かな職人仕事と老舗の風格が息づく一軒。価格・味・雰囲気の三拍子が揃い、誰もが気軽に立ち寄れる“奇跡”の寿司屋です。
週末は行列ができますので、ぜひ混雑を避けて、平日の夕方にふらりと訪ねてみてはいかがでしょう。肩肘張らず、それでいて心に残る、そんな一貫が待っています。
店舗詳細

- アサヒスーパードライ生ビール:693円
- 瓶ビール中瓶 アサヒスーパードライ・サッポロ黒ラベル:803円
- 清鷹1合:660円
- 白鶴生貯蔵 300ml:1,100円
- 玉子・かじき・とび子・ゲソ:165円
- たこ・海老・蝦蛄・サーモン:220円
- 小肌・いわし・さば・甘エビ・かんぱち・まぐろ・あじ・青柳・ほたて・とり貝・いか・かに・ひらめ・たい:220円
- ぼたん海老・つぶ貝・ミル貝:380円
- 中トロ・いくら:440円
店名 | 寿司幸 |
住所 | 東京都台東区上野4-2-11 |
営業時間 | 11:30~22:00 日祝は20時まで。正月・お盆・その他豊洲市場連休日に休みあり |
創業 | 1964年 |